出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語06-2-101922/01霊主体従巳 四鳥の別れ王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
常世国 紅の港
あらすじ
 春日姫が船の上から陸地を見ると、鷹住別が宣伝歌を謡いながら船を見送っている。春日姫も別れの歌を謡う。二人は悲しい別れをする。
名称
春日姫 鷹住別
月照彦 渚の姫 渚彦
春日丸 天教山 常世の国 被面布 モスコー
 
本文    文字数=5148

第一〇章 四鳥の別れ〔二六〇〕

 春日姫は急がしげに船に近づきぬ。船の名は偶然にも春日丸と云へるなりける。
 船は間もなく纜を解き、東を指して進み始めつつあり。
 春日姫は船の舳先に立ち上り、常世の国の見納めと、振り向く刹那に顔と顔、思ひきや鷹住別の宣伝使、船を眺めて思案に暮るるもののごとくなり。
 春日姫は、ハツと驚きながらよくよく視れば装こそ変れ、色こそ日に焼けたれ、擬ふ方なき吾夫なりける。
 船は真帆に春風を孕み、二者の切なき思ひも白波の、沖をめがけて進み行く。鷹住別は立ち上り、

『淵瀬と変る現世は  昨日の曇り今日の晴れ
 定めなき世と云ひながら  同じ道をば歩み来る
 天教山の宣伝使  浮世の風に煽られて
 聳立つ波も鷹住別の  わけて久しき相生の
 松に甲斐なき今日の春  山は霞を帯にして
 花は笑へど諸鳥の  声は長閑に歌へども
 淵瀬と変るうたかたの  消え行く浪の生別れ
 吾は常世へつき潮の  汝は東の浪の上
 逢はぬ昔の吾心  今は思ひも弥増して
 別れを惜む村肝の  心も泡と消え失せよ
 生者必滅会者定離  折角逢ひは逢ひながら
 浪を隔つる海の面  心も沈む船の上
 浮いて浮世を渡会の  神の恵みに恙なく
 渡れよ渡れ春日姫  かすかになりゆく浪の上
 声も幽になりにけり  浪押し渡る春日丸
 浪押し渡る春日姫  豊栄昇る朝日影
 波は照る照る汐風かをる  あひの涙の雨は降る』

と情の籠りし悲哀な歌を謡ひて、春日姫を見送りにける。
 船は次第に沖へ沖へと進み行く。嗚呼この二人の心の中は、いかに悲嘆の涙にくれたりにけむ。
 春日姫は陸上に立てる夫の姿の消ゆるまで、被面布を振りながら、ここに東西に別るるの止むなきに到つた。
 春日姫は四方の海面を眺めながら、忍び忍びに惜別の歌を謡つた。その歌、

『浮世の浪に隔てられ  思ひは深き海の上
 西と東へ立つ波の  今日の別れも何時の世か
 また相生の松の世に  逢うて嬉しき高砂の
 松も深雪の共白髪  世が世であらばモスコーの
 華と謳はれその誉  雲井に高き鷹住別の
 神の司や春日姫  正しき夢を三笠山
 重ぬる齢千代八千代  寿祝ふ玉椿
 庭の泉に影写す  現の世をば諸共に
 歓ぎ楽しむ天の下  四方の国人救はむと
 常磐の松の真心を  月照彦に伴はれ
 都を出でてはや三歳  雲の彼方に照る月は
 心も清き月照の  神の司と嬉しみて
 露野を渉り山河を  越えて久しき紅の
 浜辺に着くや望月の  虧ぐる事なき兄の君の
 雄々しき姿眼のあたり  逢うて嬉しき一言の
 言葉を交す暇もなく  何ンの情も荒浪の
 あらぬ思ひに沈みつつ  妾は東へ帰り行く
 鷹住別の吾夫よ  荒振神の荒ぶなる
 常世の国は常闇よ  浜辺にならぶ蠣殻に
 足を踏ますな心して  通はせ給へ渚彦
 渚の姫の御守りに  身も健やかに常世国
 前や後や右左  心を配り出でませよ
 たとへ海山隔つとも  春日の姫の魂は
 汝が命の傍近く  添ひて守らむ常久に
 常世の闇の晴るるまで  常世の春の来るまで
 晴るる暇なき妾思ひ  心の空の日月も
 汝が身を思ふ度ごとに  霞む思ひの春日姫
 幽かに御影を伏し拝む  かすかに御影を伏し拝む
 心も清き波の上  君は常世へ出でまして
 朝の露や夕霜に  悩ませ給ふ事もなく
 身もスクスクと進みませ  身もスクスクと進みませ
 嬉し悲しのこの別れ  何時の世にかは白梅の
 香りゆかしき二人連れ  水も洩らさぬ楠船の
 仲を隔つる荒浪も  神の恵みに相生の
 松の翠のにぎはひて  延び行く春の春日姫
 延びゆく春の春日姫  まつぞ嬉しき今日の空
 まつぞ嬉しき波の上  なみなみならぬ宣伝の
 旅の疲れも打ち忘れ  互に顔をみろくの世
 松の御代こそ尊けれ  みろくの神ぞ尊けれ』

と謡ひつつ、飽かぬ名残を惜しみける。

(大正一一・一・一七 旧大正一〇・一二・二〇 井上留五郎録)
(第九章~第一〇章 昭和一〇・一・三一 於筑紫別院 王仁校正)



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