出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語06-1-61922/01霊主体従巳 暗雲消散王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
鬼城山
あらすじ
 四人は酔いつぶれた館の悪人共を縄でしばり、美山彦、鬼熊彦も宣伝歌で改心させた。
名称
鬼熊彦 春日姫 足真彦 月照彦神 春姫 美山彦
大神 蚊取別! 邪神
天津祝詞 鬼城山 三千世界 天教山 五六七神政
 
本文    文字数=4844

第六章 暗雲消散〔二五六〕

 ここに月照彦、足真彦、春日姫、春姫は、悠々と温泉に入りて心身を清め、いづれも携へ来れる包みより立派なる衣服を取出し、心も身をも新しく着換へながら、天地に向つて恭しく天津祝詞を奏上し、かつ感謝し終つて美山彦の居間に立現はれ、細紐を以て手足を縛り、長柄の杓に水を汲みて、その顔面および全身に注ぎ酔を醒させけるに、美山彦は驚いて俄に酒の酔を醒し見れば、四人の男女は枕頭に儼然として控へゐる。夢か、現か、幻か、美山彦は辺をきよろきよろ見廻すをりから、春日姫は声をはげまし、
『汝悪党の張本美山彦、妾が宣伝歌を耳を澄して聴けよ』
といふより早く、

『三千世界一度に開く梅の花  
  開いて散りて実を結ぶ  
 時鳥声は聞けども姿は見せぬ』  

と謡ひ始めけるに、美山彦は頭上を鉄槌にて打ち叩かるるごとく、胸を引裂かるるごとき心地して、苦しみ悶えだしたり。春日姫は声もさわやかに、またもや流暢なる声調にて頻りに謡ふ。美山彦は七転八倒目をむき、泡を吹き、洟を垂らし、冷汗を滝のごとく流して苦しみもだえける。春日姫は言葉を重ねて、
『妾かつて汝を帰順せしめむとして、この山河を過ぐる折しも、汝の部下の鬼熊彦らの悪人現はれ来り、妾は女の身の遂に衆寡敵せず、侍女春姫と共にこの館に捕虜はれ、日夜の侮辱をうけ、悲しみの月日をおくり、大切なる宣伝を妨げられたるは、千載の恨事なり。されど至仁至愛の大神は、決して悪を悪とし、敵を敵としてきため給ふことなく、飽くまで慈愛の乳房を哺せ、改心を迫らせ給ふなり。妾は今汝を殺さむとせば、あたかも嚢中の鼠のごとし。されど五六七神政の宣伝使たる妾らは、汝らごとき小人を苦しむるに及ばず、慈愛を以て汝が生命を救はむ。汝今より翻然として前非を悔い、真心に立帰らば、汝が縛めの縄を解き、自由の身となさむ』
と宣示すれば、美山彦は無念の歯噛みをなし、
『殺さば殺せ。か弱き女性の分際として、われに向つてさも横柄なるその言葉つき、目に物見せむ』
と縛めの縄を引切らむとして藻掻きはじめたり。されど縄は強くして切れず、眼をいからし、恨めし気に春日姫を睨めつけ居たる。このとき月照彦、足真彦は、
『アヽ美山彦、汝は吾が顔に見覚えあるか』
と被面布をめくれば、美山彦は大に驚き、歯をガチガチ震はせながら、たちまち色蒼白め、唇は紫色に変化したりける。
 折しも大広間に当つて叫喚の声聞え来たる。即ちこの場は春姫に監視せしめ、三人は大広間に現はれ見れば、いづれの奴原も、足真彦、春日姫の二人に手足を縛られたることを覚り、おのおの声を放つて泣き叫ぶなりける。三人はまたもや宣伝歌を高唱したるに、いづれも激しき頭痛胸痛を感じ、縛られたるまま前後左右にコロコロと回転し始めたり。尚も三人は宣伝歌を頻に唱へ続くる。酔ひつぶれたる奴原は、一時に酔を醒し、
『救けて、救けて』
と口々に叫ぶ。春日姫は禿頭の鬼熊彦に向ひ、
『汝は常世城において腕を折りし蚊取別ならずや』
と尋ぬれば蚊取別は手足を縛られながら、
『カ ト リ ワ ケ』
とわづかに答へける。
 ここに三人は、いよいよ天地の大道を説き宣伝歌を謡ひ、遂に彼らに憑依せる邪神を退去せしめ、各自の縛を解きやりければ、一斉に両手を合はせて跪き、その神恩に感謝し声を揃へて天津祝詞を、足真彦の導師の言葉につれて、恭しく奏上したり。
 その勇ましき声は九天に轟きわたり、今まで暗澹たりし黒雲の空は、その衣を脱ぎて処々に青雲の破れを現はし、遂には全くの蒼空と化し去りにける。
 美山彦は、遂に我を折り帰順の意を表したるにぞ、ここに四人は、美山彦以下に天教山の教示を諭し、向後を戒め、悠々として鬼城山を下り、ナイヤガラの瀑布に一同身を浄め、ふたたび宣伝使として諸方を遍歴したりける。

(大正一一・一・一六 旧大正一〇・一二・一九 外山豊二録)



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