出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語05-6-381922/01霊主体従辰 回春の歓王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
エジプト
あらすじ
 祝部神の歌う面白い魚ずくしの歌を聞き、鷹住別は心の岩戸が開け、病気が治り、足が立つようになった。

***笑いの効用***
 天地の間はすべて言霊によって左右さるるものである以上は、仮にも万物の霊長として生まれ出たる人間は、この世を呪いあるいは悲しみ、あるいは怒り憂いなやみの禍津の心を取り直し、いかなる大難に遇うも迫害に会するも、決して悔やみ悲しむべきものではない。
名称
春日姫 杉高彦 鷹住別 祝彦 祝部神
霊魂
言霊
 
本文    文字数=5097

第三八章 回春の歓〔二三八〕

 祝部神は車上鷹住別がさめざめと男泣きに泣き出づる姿を見て、眉をしかめ、
『吾々は男子の癖に吠面かわく奴は、大大大の大嫌ひでござる』
と事もなげに云つて退け、かつ心中には鷹住別の今日の窮状に満腔の同情を寄せながら、態と潔く彼が心を引き立てむとして、またもや面白き歌をつくり、杉高彦、祝彦と共に手を取り合うて巴のごとく渦をつくりて、くるくると左旋し始めた。その歌、

『鮒や諸鱗は止めても止まる  止めて止まらぬ鯉の道
 どつこいしよ、どつこいしよ  
 鯉に上下の隔てはなかろ  隔てがあれば鯉ならず
 誰も好くのは色の鱶鮫  腰は鮒々女の刺身で
 鱏鮒とようがり嬉しがり  れこの赤貝に夜昼蛤
 この世のせと貝は鰆々  さらさらかますで
 穴子にうちこみ  他神に意見を鰯ておいて
 鯔ともいかなごとも薩張  飯蛸やなまくら海鼠に
 ちやらくら口さいら  口に任して鰤々怒るな
 目白もむかずに  つばすを呑み込み
 鯉のためならいかなごの  辛抱も寿留女がやくだよ
 赤鱏年でもない身で居ながら  かざみに理屈は鼈の
 間には鮎ない屁理屈よ  鰐が悪けりや
 尼鯛鱒から蟹して下さい  黄頴しいらねば泥溝貝なとしたがよい
 お前に油女頭の数の子  探そとままだよ
 一度死んだら二度とは死なない  一層茅渟鯛
 小鮒浮世に生蝦したとて  針魚がないから命は鰆に
 惜しみはせないよ  黄螺、黄螺
 白魚もやして海豚より鱒だが  塩魚ぐしには戸が立てられない
 乾海鼠隣の手前も耻かし  ぷんぷん香うた腐つた魚の
 腐つた鯉に鼻ぴこつかせて  春日の狐、油揚さらへた鷹住別の
 窶れた姿のかます面  鯉に上下の隔てはないと
 エラソにエラソに小塩鯛いふ故に  鰶ものは六ケ敷と神々にいやがられ
 こちからより付かぬが鰆ぬ神に  祟りなしと逃腰さごしに
 平家蟹見たよな鱚ごい顔付  烏賊にさごしが鯖けて居たとて
 鱓の仕打ちが鰶ないゆゑ  鯉ことばも言はねばならない
 さすれば栄螺に散子太刀魚  春日は刺身よ鷹住は好き身よ
 祝部神が今かます  鼬の最後屁喰つて見よ
 臭い臭いと夕月夜  月夜を呪ふ恋仲の
 臭い仲ではなかつたか  嗚呼邪魔くさい邪魔くさい
 四十九才の尻の穴』  

と滑稽諧謔止め途もなく、歌を謠つて踊り狂うた。車上の鷹住別はこの面白き歌に霊魂を抜かれて、奇怪なる身振足振りに感染してか、足萎の身も打ち忘れ、車上に忽ち立ち上り、共に手を拍ち足踏み轟かせ踊り狂ふ。
 春日姫はこの光景を見て嬉し泣きに泣き伏した。鷹住別は始めて吾が足の立ちしに気がつき、またもや声を放つて嬉し泣きに泣き出した。祝部神はまたもや、
『泣く奴は大大大の大嫌ひ』
と謡ひかけた。
『一寸待つて』
と春日姫は慌てて口を押へた。祝部神は鼻の上に拳を載せ、またその上に左の手の拳を重ね、漸次代るがはる抜いては重ね、抜いては重ね、鼻高神の真似をしながら、
『躄が立つた、足立つた 立つた、立つたはたつた今
 さあさあこの場を逸早く 聖地を指して立つて行かう』
と元気さうにまたもや踊り狂ひ、傍の細溝に足踏み外し、
『アイタタツタ、アイタアイタノタツタ』
とまたもや気楽さうに溝の中に落ちたまま踊り狂ふと、五柱の神司は一時にどつと笑ひ転た。
 彌ここに心の岩戸は開け初めて、さしも難病の躄の足の立つたのも、笑ひと勇みの効果である。神諭にも、
『勇んで笑うて暮せ』
と示されてある。笑ふ門には福来る。泣いて鬱いで悔んで暮すも一生なら、笑うて勇んで神を崇めてこの世を楽しみ暮すも一生である。天地の間は凡て言霊によつて左右さるるものである以上は、仮にも万物の霊長として生れ出でたる人間は、この世を呪ひ或は悲しみ、或は怒り憂ひ艱みの禍津の心を取り直し、如何なる大難に遇ふも迫害に会するも決して悔み悲しむべきものでない。勇めば勇むだけの神徳が備はるべき人間と生れさせられて居るのである。

(大正一一・一・一二 旧大正一〇・一二・一五 加藤明子録)



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