出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語05-5-341922/01霊主体従辰 水魚の情交王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
地中海の船上
あらすじ
 神人たちは船を修理して神島を離れた。祝部神と船上で一緒だったのは小郷の酋長たちで、「最近あらわれた十六個の星の真相を確かめにゆく」と言う。祝部神は野立彦命、野立姫命の神示について説教をする。
名称
船上の神人 祝部神
悪霊 大国治立尊 大蛇 餓鬼 金狐 国治立尊 国祖 酋長 修羅 邪鬼 畜生 地上神人 天主 天地の神 野立彦命 野立姫命 八王
宇宙 体主霊従 大宇宙 地獄 天変地妖 根底の国 一つ島 三重の橋
 
本文    文字数=5785

第三四章 水魚の情交〔二三四〕

 天にも地にもただ一つ、風光明媚の一つ島、類稀なる瑞祥の、光を照らす神々の、心の空も晴れ渡り、和気靄々として心天清朗一点の隔てもなく、各自に得物を携へて、諸神人は手を揃へ足曳の、山の尾上の山口の、神に願ひを掛けまくも、畏き神の御許しを、忝なみて千仭の、谷間に下り檣に、匹敵したる杉の大木を伐り倒し、檣に代へ艫を新に造り、乗り来し船に艤装して、いよいよ音に名高き一つ島、一つの松に名残を惜しみ、真帆を上げつつ悠々と、油を流せし波の上、船の動揺に円き波紋を描きながら、心も身をも打解けし、救の船の一蓮托生、修羅も地獄も波の上、水に流してをちこちの、話にふける面白さ、実にも目出度き高砂の、尉と姥とが現はれて、心の空の雲霧を、伊吹の狭霧に吹き払ひ、心の底の塵埃、雁爪や箒に掻き払ひたる、年の始めの春心地、和気靄々として西南指して欸乃面白く出帆したりける。
 空には鴎の幾千羽、前後左右に飛び交ひて、一行の船を祝し見送るかと思はるるばかりの心地よき光景なりき。祝部神は真先に口の扉を捻ぢ上げた。そして船中の神人らに向ひ、
『見渡すところ、貴下らはいづれも由緒ありげの神人らしく思はる。何の目的あつてこの海を渡り給ふや』
と問ひかけたるに、神人の中に最も秀でて骨格たくましき男は、膝を立直し、
『実は吾々は小郷の酋長でありますが、先つ頃よりの天変地妖に対し、吾郷の神人たちの不安は一方ならず、東北の天に当つて烟火のごとき火光天に冲するかと見れば、大空には金銀銅色の三重の橋東西に架り、南北に廻転し、暴風吹き荒み、強雨頻に臻り、五風十雨の順を破り、雷鳴地震非時鳴動し、火山は爆発し、地上の神人色を失ひ、未来を憂慮すること言辞の尽す限りではありませぬ。加ふるに東北の天に当つて、この頃またもや十六個の光星現はれ、日を逐うてその星は金線のごとく地上に向つて延長し、そのうへ西南の天に当り銀色の十六個の星同じく現はれて、地上に日々接近しつつ、吾々神人に向つて何事か天地の神の暗示さるるごとき心地がしてならないのであります。それ故吾々はその星の地上に垂下するに先だち、西南に向つてその真相を確め、郷の神人をして覚悟する所あらしめむと欲し、酋長の役目として、はるばる西南に向つて進むのであります』
と首を傾けながら、物憂しげに語り始めた。酋長の言葉終るや否や、次席にひかへたる一柱の神人は、直にその後をつけて、
『なほも吾々として訝しきは、宵の明星何時の間にか東天に現はれて非常の異光を放ち、その星の周囲には種々の斑紋現はれ、地上の吾々は何事かの変兆ならむと心も心ならず、郷の神人に選ばれて吾もまた西南指して進むのであります。果して何の象徴でありませうか』
と云つて祝部神の顔をちよつと覗いた。
 祝部神は膝立直し、諄々として説き始めた。
『この天地は決して地上神人の力によつて造られたものでは無い。大宇宙にただ一柱まします無限絶対無始無終の霊力体の三徳を完全に具有し給ふ天主、大国治立尊と云ふ絶対無限力の神様が、この広大無辺の大宇宙を創造されたのである。そしてこの宇宙にはその身魂を別けて国治立尊と命名け、わが大地及び大空を守護せしめ給うたのである。しかるに世は追々と妖邪の気充ち、地上の神人は神恩を忘却し、体主霊従の悪風は上下に吹き荒び、かつ私利私欲に耽り、至善至美の地上を汚し、そのうへ大蛇と金狐と邪鬼の悪霊に左右されて、上位に立つ神人らは、遂に大慈大悲の国祖国治立尊を根底の国に神退ひに退ひ、暴虐無道の限りを尽した。それ故この宇宙には真の統率神なく、神人日夜に悪化して、修羅、餓鬼、地獄、畜生の世界と堕してしまつた。それがために地は震ひ天は乱れ、天変地妖頻に臻る。世の災はこれにて足らず、一大災害の今将に来らむとする象徴あり。それ故、吾々は慈愛深き野立彦命、野立姫命の神勅を奉じ、地上の神人を悔い改めしめ、この災害を救ひ、大難をして小難に見直し、聞直し、宣直さむと、八王の聖位を捨て、かくも見すぼらしき凡夫の姿と変じ、山野河海を跋渉して、救の道の宣伝をなすのである。諺に云ふ、袖振り合ふも他生の縁、躓く石も縁のはしとやら、今や同じ一つの船に身を托し、天来の福音を伝ふる吾も、これを聴く汝ら神人らも決して偶然にあらず、必ず深き大神の恵の綱に共に結ばれたるものなれば、吾一言を夢々聴き落す勿れ』
と云つて手を伸べて海水を掬ひ、唇を潤しながら座を頽した。
 並ゐる神人らはいづれも緊張し切つた面色にて、首を傾げながら一言も聴き洩らすまじと耳を澄まして聞き入りにける。

(大正一一・一・一一 旧大正一〇・一二・一四 井上留五郎録)



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