出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語05-3-221922/01霊主体従辰 神示の方舟王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
顕恩郷
あらすじ
 大江神(鬼武彦)は方舟を作ることを命ずる。鬼武彦の神像は天の逆鉾となって、大洪水、大地震の予言をする。その後、大洪水が世界を襲ったが、顕恩郷の神々は方舟に乗ってヒマラヤ山へ難を逃れて生き残った。彼らは二度目の人間の祖となった。
名称
大江神 蟹若 橙園王

天の逆鉾 神諭 聖書 体主霊従 天国 祝詞 方舟 ヒマラヤ山
 
本文    文字数=5212

第二二章 神示の方舟〔二二二〕

 大江神は、小天国の神王として神人らより畏敬尊信され、その命令は遺憾なく実行された。
 ここに蟹若を擢んでて左守となし、橙園王を抜擢し、右守に任じ、この一小区劃は実に天国楽土の出現したるがごとくであつた。
 大江神は橙園山に登り、部下の神人を使役して真金を掘り出し、鋸、斧その他の金道具を製作した。そして橙園郷の果実の実らざる杉、檜、樟等の大木を伐採し、数多の方舟を造ることを教へた。
 神人らは何の意たるかを知らず、ただ命のまにまに汗水を垂らして方舟の製作や金道具の製作に嬉々として従事した。神人の中には方舟の何用に充つべきかを左守に向つて尋ねた。されど左守は、
『果して何の用をなすものか、吾は神王に一言半句も伺ひたることなし。ただ吾々は神王の命に服従すればかなり。吾らの安全を計りたまうて天上より降りきたれる神王なれば、無益のことを命じたまふべき謂れなし。汝らもただ命のまにまに服従して一意専心に方舟の製作に従事せばかなり』
といひ渡した。
 凡て神のなす業は人間の窺知し得べき所にあらず。
『神は今の今までは何事も申さぬぞよ、人民はただ神の申すやうにいたせば、ちつとも落度はないぞよ』
と神諭に示されたるごとく、ただ吾々は下らぬ屁理屈をやめて、ただただ神命のまにまに活動すべきものである。
 しかるに人々の中には、根から葉まで、蕪から菜種まで詮索しなくては、神は信ぜられないとか、御用は出来ないとかいつて、利巧ぶるものが沢山にある。いかに才能ありとて、学力ありとて、洪大無辺の神の意思経綸の判るべきものではない。また神よりこれを詳しく人間に伝へむとしたまふとも、貪瞋痴の三毒に中てられたる体主霊従の人間の、到底首肯し得べきものでない。ただただ神の言葉を信じて身魂を研き、命ぜらるるままに神業に従事せばよい。
 顕恩郷の神人らは衣食住の憂ひなく、心魂ともに質朴にして少しの猜疑心もなく、天真爛漫にして現代人のごとく小賢しき智慧も持つてゐなかつた。そのために従順に神の命に服従することを得たのである。聖書にも、
『神は強き者、賢き者に現はさずして、弱き者、愚なる者に誠を現はし給ふを感謝す』
とあるごとく、小なる人間の不徹底なる知識才学ほど禍なるはない。
 かくして神人らの昼夜の丹精によつて、三百三十三艘の立派なる方舟は造りあがつた。さうしてこの舟には残らず果物を積み、または家畜や草木の種を満載された。
 今まで平穏なりし顕恩郷の東北隅の山間に立てる棒岩は、俄に唸りを立てて前後左右に廻転し初めた。さうして鬼武彦の石像は、漸次天に向つて延長しだした。これを天の逆鉾と称へる。
 猿のごとき容貌を具へたる種族と、蟹面の種族は互に手を携へて相親しみ、この逆鉾の下にいたつて果物の酒を供へ、祝詞を奏し、かつ顕恩郷の永遠無窮に安全ならむことを祈願した。このとき天の逆鉾に声あり云ふ。

『月に叢雲花には嵐  天には風雨雷霆の変あり
 地には地震洪水火災の難あり  神人にはまた病魔の変あり
 朝の紅顔夕の白骨  有為転変は世の習ひ
 淵瀬と変る世の中の  神人心を弛めなよ
 常磐堅磐に逆鉾の  堅き心を立て徹し
 天地の艱みきたるとも  神にまかして驚くな
 昨日にかはる今日の空  定めなき世と覚悟して
 月日と土と神の恩  夢にも忘るることなかれ
 惟神霊幸倍坐世  惟神霊幸倍坐世』

と鳴りわたつたまま、逆鉾は遂に沈黙してしまつた。
 神人らは異口同音に覚束なき言葉にて、
『かんたま、かんたま』
と唱へた。
 天地は震動して、ここに地上の世界は大洪水となりし時、この郷の神人らは一柱も残らず、この舟に搭乗してヒマラヤ山に難を避け、二度目の人間の祖となつた。ゆゑにある人種はこの郷の神人の血統を受け、その容貌を今に髣髴として存してをる人種がある。
 現代の生物学者や人類学者が、人間は猿の進化したものなりと称ふるも無理なき次第である。また蟹面の神人の子孫もいまに世界の各所に残存し、頭部短く面部平たきいはゆる土蜘蛛人種にその血統を留めてゐる。

(大正一一・一・九 旧大正一〇・一二・一二 井上留五郎録)



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