出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語05-3-191922/01霊主体従辰 旭日出暗王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
アーメニヤ ウラル山
あらすじ
 ウラル彦、ウラル姫は大蛇と悪狐の霊に憑依され、言触神の警告も耳に入らなかった。彼らは無神論を唱え、「呑めよ騒げよ一寸先は闇よ 闇の後には月が出る 時鳥声は聞けども姿は見えぬ 見えぬ姿は魔か鬼か」という歌を作り、正神の「三千世界・・・」の歌に対抗した。
 天の浮橋が回転して強烈な光を放射した。浮橋の先端から金色の星がウラル山に落ちた。盤古神王はそれを拾って奉祭し悔い改めた。そして日の出神を宮の神司とした。ウラル彦、ウラル姫は全く改心が出来ず、盤古神王との間の溝は深まった。
名称
ウラル彦 ウラル姫 天男 天女 盤古神王 日の出神
悪霊 大蛇 金狐 言触神 邪霊 大地の神 月の神 野立彦命 日の神
天の浮橋 ウラル山 三千世界 神政 体主霊従 無神説
 
本文    文字数=5623

第一九章 旭日出暗〔二一九〕

 ウラル彦は賢明叡知にして、天地の神意に出でたるこの警告を心底より諒得したる盤古神王の心を解せず、大蛇の悪霊と金狐の邪霊に憑依され、驕慢ますます甚だしく、神王の宣示を空ふく風と聞きながし、かつ神人らを四方に派して言触神を探し求めしめ、つひにこれをウラル山の牢獄に投じてしまつた。さうして、神人らの迷ひを解くためにとて歌を作り、盛んにこれを四方に宣伝せしめた。その歌は、

『呑めよ騒げよ一寸先や暗よ
 暗の後には月が出る
 時鳥声は聞けども姿は見えぬ
 見えぬ姿は魔か鬼か』

 折角の日の出神の「三千世界……梅の花」の宣伝も、この歌のためにほとんど抹殺されてしまつた。
 盤古神王は殿外の騒がしき声を聞き、何事ならむと殿中より表門口に立出づれば、ウラル彦を中央に、あまたの神人らは酒に酔ひつぶれ、
『呑めよ騒げよ』
の歌を謡つて踊り狂ふ落花狼藉に驚き、宴席の中央に現はれ、
『三千世界云々』
の童謡を声張りあげて謡ひはじめた。
 この声を聞くとともに過半数の神人は、にはかに酒の酔も醒めはて、顔色蒼白めてぶるぶる慄ひだす者さへ現はれた。盤古神王はなほも引続きこの歌を唱へた。神人の過半数は、ますます畏縮して大地に仆れ、踏ん伸びる者さへ現はれてきた。
 ウラル彦は、ここぞとまたもや、
『呑めよ騒げよ一寸先や暗よ、暗の後には月が出る』
と高声に謡ひかけた。神人はその声に応じてまたもや立上り、元気回復して踊り狂うた。盤古神王はまたもや、
『三千世界の……梅の花』
を謡ひはじめた。せつかく元気回復したる神人らは、ふたたび大地にバツタリ仆れた。
 ウラル彦夫妻は、場の両方より声をかぎりに、手を拍ち踊り舞ひながら、
『呑めよ騒げよ一寸先や暗よ』
の歌をうたひ始めた。またもや神人らは頭をもたげて踊り狂ふ。このとき場の一方より何ともいへぬ美しきかつ荘厳なる声が聞えた。その声に神人らは、またもや胸を刺さるるごとく苦悶して、大地に仆れた。盤古神王はその声を頼りに進んで行つた。その声は不思議にも、牢獄の中から聞えてをる。
『不審』
と神王は、四五の従者を伴ひながら牢獄の前に進んだ。
『三千世界一度に開く梅の花』
とまたもや聞えだした。盤古神王は頭を鉄槌にて打ち砕かるるごとく、胸を焼鉄にて刺さるるごとき苦しさを感じ、思はずその場に平伏した。四五の従者も一時にバタバタと将棋倒しにたふれた。
 神人らはやうやく頭をもたげて眺むれば、それは彼の言触神であつた。驚いてただちに戸を開き救ひだし、奥殿にともなひ帰り、鄭重に接待し、礼をつくして教を乞うた。日の出神は、慇懃に野立彦命の真意を伝へ、かつ改心帰順を迫り、天地日月の殊恩を説示した。神王はあたかも生ける神のごとく、この宣伝者を尊敬し、敬神の態度を怠らなかつた。ただちに宣伝者の命により、ウラルの山上に改めて立派なる宮殿を造り、日の神、月の神、大地の神を、さも荘厳に鎮祭し、敬拝怠らなかつた。
 それに引換へ、体主霊従の大蛇と金狐に魅せられたるウラル彦、ウラル姫は、この神王の行為にたいし不快を感じ、さかんに神人らに対して自暴自棄となり、日夜酒宴を張り、豊熟なる果実を飽食せしめ、無神説を唱へ、
『呑めよ騒げよ一寸先や暗よ、暗の後には月が出る。よいとさ、よいやさつさ、よいやさつさ』
と意地づくになつて踊りくるひ、連日連夜の遊楽にのみ耽つて、神政を忘却するに致つた。
 このとき轟然たる音響天に聞ゆると見るまに、さも強烈なる光は地上を放射した。神人らは一せいに期せずして空を仰いだ。眼も眩むばかりの強烈なる光である。その光はまたもや、天の浮橋の東西南北に悠々として探海燈を照したごとく、中空を東西南北に転回してゐる。さうしてこの強き光のために盲目となる者も現はれた。浮橋の尖端よりは金色の星幾十となく放出して、ウラル山上の盤古神王の宮殿に落下した。
 盤古神王は大神の恵みと深く感謝し、一々その玉を拾ひあつめて神殿に恭しく安置し、日夜供物を献じ祭祀を荘厳におこなひ、敬神の至誠をつくしてゐた。それよりウラル山上は、紫雲たなびき、天男天女はときどき降りきて中空に舞ひ、微妙の音楽を奏し、風暖かく花は香しく、木々の果実は味はひ美はしく豊熟するにいたつた。
 神王は、日の出神を宮司として、これに奉仕せしめた。これよりウラル山上の盤古神王とウラル彦夫妻との間には、もつとも深き溝渠が穿たれた。

(大正一一・一・九 旧大正一〇・一二・一二 外山豊二録)



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