出口王仁三郎 文献検索

リンク用URL http://uro.sblog.jp/kensaku/kihshow.php?KAN=05&HEN=2&SYOU=16&T1=&T2=&T3=&T4=&T5=&T6=&T7=&T8=&CD=

原著名出版年月表題作者その他
物語05-2-161922/01霊主体従辰 霊夢王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
ウラル山
あらすじ
 大自在天の部下大鷹別は間者松彦より盤古大神、八王大神の身辺の備えが十分でないことを知り、大自在天を奉じて天下の覇権を握ろうとする。
 一方盤古大神は、現在自分の下にいる塩治姫、玉春姫は白狐の偽者で、本物は常世城に捕われていることを神示により知る。白狐は「盤古大神達の暴悪を懲らすために、アーメニヤの奇怪事を起こし、棟木の伐採に三年かかるように仕向けた」と告げ、中空に消えた。
 ここに盤古系統と大自在天系統の同士討ちが始まった。また、竜宮城の三重の金殿は天空に延長して天の浮橋となり東西南北に回転しはじめた。
名称
白狐旭 牛熊別 鬼雲別 大鷹別 蟹雲別 塩治姫 白狐高倉 玉春姫 盤古大神 松彦 八王大神
悪神 瑞月 大自在天 常世彦 白狐
アーメニヤ 天の浮橋 ウラル山 エルサレム 高熊山 天眼通 常世城 鷹鷲山 竜宮城 霊夢
 
本文    文字数=4329

第一六章 霊夢〔二一六〕

 八王大神の命により、常世城を預かりて守護せる大鷹別は、盤古大神が美はしき宮殿を建てむとし、その用材のために苦しみ、神人らは挙つて鷹鷲山にいたり、昼夜の区別なく、その木の伐採に全力をつくしつつありて、盤古大神の身辺も、八王大神夫妻の身辺もその備への甚だ薄弱なることを間者松彦をして探知せしめ、その詳細を知るとともに、大鷹別の野心は勃然として湧いてきた。
 今この際常世城を占領し、大自在天を奉じて、あらたに神政を樹立し、天下の覇権を握るといへども、盤古大神および八王大神の目下の立場として、常世城を討伐する余力さらになく、気息奄々としてほとんど孤城落日の悲境にあれば、叛旗を挙ぐるはこの時なりと、部下の蟹雲別、牛熊別、鬼雲別らと語らひ、さかんにその画策に熱中してゐた。
 このとき、旭、高倉の妙術に乗せられ、何時とはなく常世城に捕虜となりし塩治姫、玉春姫は、何れもわが父に叛旗を掲ぐるものたることを感知し、いかにもして常世城を脱出し、ウラル山の両親にこの旨を密告せむと、日夜焦慮しつつあつた。
 されど、用心ぶかき大鷹別は二女の身辺の警護をことさら厳にし、かつその室の周囲をあまたの神人をして囲み守らしめ、遁れ出でむとするにも、蟻の這ひ出づる隙間もなき有様であつた。
 話は元へもどつて、ウラル山の仮殿にある盤古大神は、ある夜の夢に、わが娘塩治姫は玉春姫とともに常世城にさらはれ、人質の境遇に苦しみつつある霊夢に感じた。しかして今ウラル山にある塩治姫、玉春姫は真のわが子に非ず、白狐の変化なりといふ霊夢を引きつづいて見た。
 明くれば、盤古大神は仮殿に仕へてゐる塩治姫、玉春姫を傍近く招き、
『汝はわが天眼通にて審査するに、全く白狐の変化なり。今すみやかにその正体をわが前に現はせ。万一違背におよばば、汝ら二人は余が手練の刀の錆となさむ、覚悟せよ』
と炬火のごとき眼を怒らし、カツと睨みつけた。二女性は少しも騒がず、満面に笑をたたへ、
『貴神の天眼力にて見らるる通り、吾は聖地ヱルサレムの神使として長く仕へたてまつりし白狐の高倉、旭なり。なんぢ悪神一味の暴悪を懲さむため、アーメニヤの野における奇怪といひ、また鷹鷲山における棟木の三年を経るも伐り採り得ざるは、まつたく吾ら二神の所為なり。あゝ心地よや、あゝ面白や』
とカラカラと長き舌を出して笑ひこけた。
 盤古大神は烈火のごとく憤り、腰に佩ける刀を抜くより早く、二人を目がけて発止と斬りつけた。如何なしけむ、二神の姿は煙と消えて、ただ中空に女神の愉快げに笑ひさざめく声がするのみであつた。
 これより、いよいよ大自在天は常世城を占領し、天下の神政を統一せむと計り、今まで聖地ヱルサレムを滅ぼさむとして協力したる盤古大神一派にむかつて、無名の戦端を開くこととなつた。
 空には聖地竜宮城の三重の金殿は、自然に延長して天空に高く現はれ出た。丁字形の天の浮橋は金色燦然として大空を東西南北に廻転しはじめた。
 その橋の尖端よりは、得も言はれぬ美はしき金色の火光を、花火のごとく地上にむかつて放射しつつあつた。実に荘厳無比にして、かつ美しきこと譬ふるに物なく、その閃光に見とれて空を見上ぐるとたんに、瑞月の身は頭部に劇痛を感じた。驚いて肉体にかへりみれば、寒風吹きすさむ高熊山の岩窟に端坐し、仰向くとたんに、岸壁の凸部に後頭部を打つてゐた。

(大正一一・一・七 旧大正一〇・一二・一〇 桜井重雄録)



オニドでるび付原文を読む    オニド霊界物語Web