出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語05-1-31922/01霊主体従辰 臭黄の鼻王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
エデンの楽園
あらすじ
 橄欖山の神殿に盤古大神の神爾を奉祭した。この神殿の神霊は八頭八尾の悪竜で日毎に音を発するようになった。常世彦はやや改心して、国祖の神霊を隠れて鎮祭していた。これで天変地異は少しは治まった。
 常世彦の娘玉春姫と盤古大神の息子塩光彦はあやしい仲になり、エデンの園に隠れて暮らしていた。二人は耳なしの木の実を食べたために、目は見えず、耳も聞こえなくなってしまったが、親に連れ戻され、菊の花を使って病気を治された。
名称
塩長姫 塩光彦 玉春姫 盤古大神 八王大神常世彦
悪霊 大神 国祖大神 神霊 副守護神 本守護神 八頭八尾の悪竜
エデンの園 エデンの大河 エルサレム 橄欖山 菊の花 神爾 梨の実 日毎轟きの宮
 
本文    文字数=4783

第三章 臭黄の鼻〔二〇三〕

 いよいよ橄欖山の神殿には、エデンの園より捧持し参りたる神璽を恭しく鎮祭された。この神殿は隔日に鳴動するのが例となつた。これを日毎轟きの宮と云ふ。この神霊は誠の神の御霊ではなくして、八頭八尾の悪竜の霊であつた。
 これより聖地ヱルサレム宮殿は、日夜に怪事のみ続発し暗雲につつまれた。八王大神常世彦はやや良心に省みるところあつて、窃に国祖大神の神霊を他知れず鎮祭し、昼夜その罪を謝しつつあつた。大神の怒りやや解けたりけむ、久振りにて東天に太陽のおぼろげなる御影を見ることを得た。随つて月の影が昇りそめた。八王大神は夜ひそかに庭園に出で、月神に向つて感謝の涙にくれた。されどその本守護神は悪霊の憑依せる副守護神のために根底より改心することは出来なかつた。
 玉春姫は塩光彦と手を携へ、父母両親の目をくぐりて、エデンの大河をわたり、エデンの楽園にいたり、園の東北隅の枝葉繁茂せる大樹の下にひそかに暮してゐた。盤古大神は塩光彦の影を失ひしに驚き、昼夜禊身をなし、断食をおこなひ、天地の神明を祈つた時しも、園の東北に当つて紫の雲たち昇り、雲中に塩光彦ほか一柱の女神の姿を見た。盤古大神はただちに従者に命じ、その方面を隈なく捜さしめた。塩光彦、玉春姫は、神々らの近づく足音に驚き、もつとも茂れる木の枝高く登つて姿を隠した。この木は麗しき木の実あまた実つて、いつまで上つてゐても食物には充分であつた。神々らは園内隈なく捜索した。されど二人の姿は何日経つても見当らなかつた。盤古大神はこれを聞いて大いに悲しんだ。しかして自ら園内を捜し廻つた。
 枝葉の茂つた果樹の片隅より一々仰ぎ見つつあつた。樹上の塩光彦は父の樹下に来ることを夢にも知らず、平気になつて大地にむかつて、木の葉の薄き所より臀引きまくりて、穢き物を落した。盤古大神は怪しき物音と仰向くとたんに、臭き物は鼻と口の上に落ちてきた。驚いて声を立て侍者を呼んだ。されど一柱も近くには侍者の影は見えなかつた。やむを得ず細き渓水に下りて洗ひ落し、ふたたび上を眺むれば、豈計らむや、天人にも見まがふばかりの美女を擁し、樹上にわが子塩光彦がとまつてゐた。盤古大神は大に怒り、はやくこの木を下れと叫んだ。二人は相擁し父の声はすこしも耳に入らない様子であつた。盤古大神は声を嗄して呼んだ。されど樹上の二人の耳には、どうしても入らない。如何とならば、この木の果物を食ふときは、眼は疎く、耳遠くなるからである。ゆゑにこの木を耳無しの木と云ふ。その実は目無しの実といふ。今の世に「ありのみ」といひ、梨の実といふのはこれより転訛したものである。
 盤古大神は宮殿に馳せ帰り、神々を集めこの木に駆け上らしめ、無理に二人を引摺りおろし、殿内に連れ帰つた。見れば二柱とも目うすく耳はすつかり聾者となつてゐたのである。ここに塩長姫は二人のこの姿を見て大に憐れみかつ嘆き、庭先に咲き乱れたる匂ひ麗しき草花を折りきたりて、二人の髪の毛に挿した。これより二人の耳は聞えるやうになつた。ゆゑにこの花を菊の花と名づけた。これが後世頭に花簪を挿す濫觴である。
 一方聖地ヱルサレムにおいては、玉春姫の何時となく踪跡を晦したるに驚き、両親は部下の神人らをして、山の尾、河の瀬、海の果まで残る隈なく捜さしめた。されど何の便りもなかつた。常世彦はひそかに国祖の神霊に祈り、夢になりとも愛児の行方を知させたまへと祈願しつつあつた。ある夜の夢に何処ともなく『エデンの園』といふ声が聞えた。八王大神は直にエデンの宮殿に致り、盤古大神に願ひ、エデンの園を隈なく捜索せむことを使者をして乞はしめた。盤古大神は信書を認め、使者をして持ち帰らしめた。常世彦は恭しく押しいただきこれを披見して、かつ喜びかつ驚きぬ。

(大正一一・一・四 旧大正一〇・一二・七 吉見清子録)



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