出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語05-1-21922/01霊主体従辰 松竹梅王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
エデンの宮殿
あらすじ
 常世彦は盤古大神を敬遠し、エデンの宮殿に移した。盤古大神は、見ざる、聞かざる、言わざるの三猿主義を取った。橄欖山の神殿に奉祭する神爾を盤古大神にもらうために、玉春姫がエデンの宮殿へ行くと、鬼武彦、春日姫、八島姫が国祖のたたりとして怪異をなした。盤古大神はこれに対抗したが、これが正月につけ松竹梅の飾りの元になった。
 玉春姫はなんとか神爾を貰って帰った。
名称
鬼武彦 春日姫 塩光彦 玉春姫 常治彦 常世姫 盤古大神 八島姫 八王大神常世彦
悪鬼 悪魔 艮の金神 妖怪 大神 大蛇 国治立命 国祖 邪神 八頭八尾の大蛇 怨霊
エデンの園 エデンの大河 エルサレム 橄欖山 神爾 神政 神務 大江山(たいこう)
 
本文    文字数=5891

第二章 松竹梅〔二〇二〕

 八王大神常世彦は表面盤古大神を奉戴し、神政総攬の権を握つてゐた。されど温厚篤実にして威風備はり、かつ至誠至実の盤古大神の奥殿に坐しますは、なんとなく気がねであつた。
 そこで八王大神は盤古大神にたいし敬遠主義を取ることになり、エデンの園に宮殿を造り、これに転居を乞ひ、神務神政のことに関しては表面指揮を仰ぐことにした。されど八王大神としては、もはや盤古大神夫婦は眼中になかりしのみならず、却つて迷惑に感じたくらゐである。盤古大神は常世彦の心中を洞察し、何事も見ざる、言はざる、聞かざるの三猿主義を取つてゐた。
 橄欖山の頂きに新に建てられたる神殿に奉斎すべき大神の神璽を、盤古大神に下附されむことを奉願するため、八王大神は常治彦を遣はして、エデンの宮殿に到ることを命じた。常治彦は額の角を耻ぢて、この使者を峻拒した。八王大神はやむを得ず涙を流して常治彦の心情を察知し、あまり厳しく追求せなかつた。ここに常世姫とはかり、妹神玉春姫を使神とし、春日姫、八島姫を従へエデンの城にいたり、盤古大神に神璽の下附を奉願せしめたのである。このエデンの園は種々の麗しき花咲き乱れ、四季ともに果実みのり、東北西に青垣山を繞らし、寒風に曝さるることなく、南方の陽気をうけ、実に四時相応の地とも称すべき安楽郷である。南には広きエデンの大河東南より流れきたり、西北に洋々として流れ去る、いかなる悪鬼邪神もこの楽園のみは侵すことが出来ない安全地帯であつた。盤古大神部下の神々は、この楽郷に昼夜の区別なく天地の殊恩を楽しみつつあつた。
 あるとき盤古大神の宮殿の奥の間の床下より、床をおしあげ突き抜き、ふとき筍が二本生えだした。見るみるうちに諸所に筍は床を持ちあげ、瞬くうちに棟を突きぬき、屋内屋上に枝葉を生じほとんど竹籔と化してしまつた。盤古大神はこの光景をみて国祖国治立命の怨霊の祟りならむとし、大に怒り、長刀を引抜き、大竹を片つ端より切りすて門戸に立てた。これが今の世に至るまで正月の門に削ぎ竹を飾る濫觴となつた。
 玉春姫は八王大神の命により、神璽の下附を乞はむと侍神に伴はれ奥殿に進むをりしも、盤古大神が奥殿に簇生したる諸竹を切り放ちゐたる際なれば、進みかねて、この光景を見入つた。この竹は大江山の鬼武彦の仕業であつた。八頭八尾の大蛇も、この時のみは鬼武彦の権威に辟易して、何の妨害も復讎もすることが出来なかつた。八島姫は忽然として姿が消ゆると見るや、奥殿には十抱へもあらむかと思ふばかりの常磐の松が俄に生えた。これがため盤古大神の居室はすつかり塞がつた。盤古大神は大に怒り、これかならず妖怪変化の仕業ならむと、云ふより大鋸を取りだし、侍神に命じ枝を伐り幹を伐り、しばらくにしてこれを取り除けた。しかしてこの切り放した根無し松を門戸に飾り、妖怪退治の記念として立てておいた。ゆゑに太古は正月松の内は一本松を立てて、艮の金神以下の悪魔退治の記念として門松を立てたのである。それが中古にいたり二本立てることになつた。このとき春日姫は幾抱へとも知れぬ梅の木となり、エデンの城一ぱいに枝を瞬くうちに張り、傘のごとき花を咲かせた。園内は一株の梅にて塞がるるばかりであつた。盤古大神はまたもや鉞、鋸等の道具を以つて、神々に命じ枝葉を切らしめ、終に幹までも切り捨てさせた。盤古大神は、大地の艮に引退せられし国祖の怨霊の祟りとなし、調伏のためにまたもや梅の枝を立てて武勇を誇つた。後世年の始めに松竹梅を伐り、砂盛をして門戸に飾るはこれより始まつたのである。
 玉春姫はこの奇怪なる出来事に胆を潰し、茫然として空ゆく雲を眺めつつありしが、つひに過つて庭前の深き井戸に顛落した。盤古大神の長子塩光彦は、これを見るより丸裸体となり井戸に飛び入り、玉春姫を漸くにして救ひあげた。これより塩光彦と玉春姫との間に怪しき糸が搦まれた。
 盤古大神は神霊を玉箱に奉安し、玉春姫に下げ渡し、聖地ヱルサレムに帰らしめた。八島姫、春日姫は何処よりともなく現はれきたり、玉春姫に依然として扈従してゐた。塩光彦は、姫のエデンの大河を船に乗りて渡りゆく姿を打ちながめ、矢も楯もたまらなくなつた。盤古男神のとどむる声も空吹く風と聞き流し、たちまち大蛇と身を変じ、河を横ぎり南岸に着いた。ここに再び麗しき男神となり、聖地ヱルサレムを指して玉春姫のあとを追ひかけた。この神璽は空虚であつた。何ゆゑか盤古大神の熱心なる祈祷も寸効なく、いかにしても神霊の鎮まらなかつたのは奇怪のいたりである。しかるにエデンの大河を渡るや、この神璽の玉箱は俄に重量加はり数十柱の神々が汗を垂らして輿に乗せ捧持して帰つた。

(大正一一・一・四 旧大正一〇・一二・七 加藤明子録)



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