出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語04-7-401921/12霊主体従卯 照魔鏡王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
エルサレム
あらすじ
 高月彦は常世彦命の後を襲い天使長となった。常世姫は夫の死後、夫の菩提を弔うために竜宮城の主宰者の位を初花姫に譲ろうとしたが、初花姫と五月姫の区別がつかない。そこで、宮比彦は国祖大神の神勅を伺おうとしたが、大八州彦命が宮比彦が自分で正邪を判断するように命じた。宮比彦が天の真名井で御禊をすると国祖大神の奇魂が懸かった。鎮魂すると、五月姫は邪神の本体を現わし、金毛九尾白面の悪狐となり逃げ去った。
 自分の腹から邪神を生んだというショックで、常世姫は病を得て、夫の後を追って昇天した。初花姫は竜宮城の主宰者となったが、再び金毛九尾白面の悪狐に憑依されてしまった。
名称
神務長大八州彦命 春日姫 五月姫 高月彦 高照姫命 常世姫 初花姫 宮比彦 八島姫
金毛九尾白面の悪狐 奇魂 国祖大神 邪気 邪霊 八頭八尾の大蛇 八百万の神々
天津祝詞 天の数歌 天の真名井 神言 鎮魂 常世城 直会 真澄の鏡 御禊 竜宮城
 
本文    文字数=6719

第四〇章 照魔鏡〔一九〇〕

 高月彦が父母二神司をはじめ、八百万の神人の眼力をもつて看破し得ざりし八頭八尾の大蛇の化身を、諸神人満座の中に善言美詞の神言を奏し、その正体を暴露せしめた天眼通力は、あたかも真澄の鏡の六合を照徹するがごとしと、讃嘆せしめたりける。いかに善言美詞の神言なりといへども、これを奏上する神人にして、心中一片の暗雲あり、執着ある時はたちまちその言霊は曇り、かつ、かへつて天地の邪気を発生するものなることは、第一篇に述べたるところなり。
 ここに高月彦は神人らの絶対の信望を負ひて父の後を襲ひ天使長となり、天使長親任の祝宴は聖地城内の大広前において行はれ、まづ荘厳なる祭壇は新に設けられ、山野河海の種々の美味物を八足の机代に横山のごとく置き足らはし、御酒は甕戸高知り、甕腹充てならべて賑々しく供進されたりける。神人らは一斉に天地の神明にむかつて天津祝詞を奏上し終り、ただちに直会の宴に移りたり。
 このとき竜宮城の主宰者として常世姫は、春日姫、八島姫を従へ礼装を凝らして臨席し、この目出度き盛宴を祝しける。
 常世姫は夫と別れ、涙のいまだ乾かざるに、吾が長子は天使長の顕職につきたるを喜び、神明に謝し感涙に咽びつつ、悲喜こもごもいたり夏冬の一度に来りしがごとき面色なりけり。ここに長女初花姫、五月姫も常世姫の左右に座を占めにける。常世姫は夫の昇天されしのちは、みづから竜宮城の主宰たることを辞し、夫の冥福を祈らむと決心し、その後任を初花姫に譲らむとし、さいはひ諸神司集合の式場にその意見をもちだし、諸神人の賛否を求めたるに、諸神人はその心情を察し、一柱も拒止するものなく異口同音に初花姫をして、竜宮城の主宰者たらしむることを協賛決定したりけり。善は急げの諺のごとく、ここに常世姫の後任者として初花姫就任の披露をなし、ふたたび厳粛なる祭典を執行されたれば、聖地は凶事と吉事の弔祝の集合にて非常なる雑踏を極めけり。祭典は無事にすみ、初花姫は就任の挨拶をなさむとし中央の小高き壇上に現はれたるに、同じく五月姫も登壇したり。しかしてその容貌といひ、背格好といひ、分厘の差もなく瓜を二つに割りたる如くなりき。初花姫が一言諸神人に向つて挨拶すれば、五月姫も同時に口を開いて同じことをいふ。初花姫が右手を挙ぐれば五月姫も右手を挙げ、くさめをすれば同時にくさめをなし、あたかも影の形に従ふがごとく、あまたの神人らはこの不思議なる場面に二度びつくりしたり。さきに二柱の高月彦の怪に驚き、漸くその正邪を判別し、ほつと一息吐きしまもなく、またもや姉妹二人の判別に苦しまさるる不思議の現象を見せつけられ、いづれも目と目を見合せ、またもや常世城における野天泥田会議の二の舞にあらずやと眉に唾し、頬を抓めりなどして煩悶しゐたりける。二女性は互に姉妹を争ひぬ。されど現在生み落したる母の常世姫さへ、盛装を凝らしたる姉妹を判別することを得ざりける。
 ここに高月彦はふたたび「惟神霊幸倍坐世」の神言を奏上したれど何の効果もなく、依然として二女は互ひに姉の位置を争ふのみ。ここに宮比彦は座をたち諸神人にむかつて、
『我はこれより国祖大神の宮殿に参向し、大神の審判を乞ひ奉らむと思ふ。諸神人の御意見如何』
と満座に問ひけるに、諸神司は一斉に賛成し、宮比彦をして大神の神慮をうかがひ正邪の審判を乞ひ奉らしめけり。
 大宮殿には大八洲彦命、高照姫命一派の神人がまめまめしく国祖大神に奉侍し、神務に奉仕し居たり。宮比彦はただちに奥殿に入り、神務長大八洲彦命にむかひ、国祖大神に伝奏されむことを願ふにぞ、大八洲彦命は大いに笑ひ、
『汝は常に神明に奉仕する聖職にありながら、かくのごとき妖怪変化をも看破し能はざるや。我はかかる小さきことを国祖に進言するは畏れおほければ謝絶す』
と断乎として撥ねつけたれば、宮比彦は大いに恥ぢ、神務長の言に顧み直ちに天の真名井に走りゆき、真裸体となりて御禊を修し、祈祷を凝らしけるに、果然宮比彦は国祖大神の奇魂の懸らせたまふこととなりぬ。ここに宮比彦は急ぎ大広間に現はれ、壇上に立ち両手を組み姉妹の女性にむかつて鎮魂の神業を修したるに、命の組みたる左右の人指指より光明赫灼たる霊気発射して二女の面を照らしければ、たちまち五月姫はその霊威光明に照らされて、金毛九尾白面の悪狐の正体を現はし、城内を黒雲にて包み、雲に隠れて何処ともなく逃げ去りにける。宮比彦は中空に向つて鎮魂をはじめ、
『一二三四五六七八九十百千万』
の天の数歌を再び繰返し奏上し終るとともに、大広間の黒雲は後形もなく消え去せ、神人らの面色はいづれも驚異と感激の色ただよひにける。
 常世姫は現在我が生みの子五月姫の悪狐の我が胎内を借りて生れ出たりしものなるかと、驚きあきれ茫然として怪しみの雲につつまれけり。これより常世姫は病を得、つひに夫の後を追ひて昇天したりしより、いよいよ竜宮城は初花姫代りて主宰者となりぬ。金毛九尾白面の悪狐の邪霊現はるるとともに、初花姫は精神容貌俄に一変し、さしも温和なりしその面色は次第に険峻の色を現はしけるに、満座の神人らは初花姫の面貌の俄に険峻となりしは、今までの気楽なる生活に引き替へ、竜宮城の主宰者たるの重職を負ひしより、心魂緊張をきたしたる結果ならむと誤信し居たりける。ああ初花姫の身魂は、何者ならむか。

(大正一〇・一二・二八 旧一一・三〇 加藤明子録)



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