出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語04-7-391921/12霊主体従卯 常世の暗王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
エルサレム
あらすじ
 常世彦命の子供高月彦は父を助けて神業に奉仕し、一時は天下泰平の時代となっていた。しかし、油断をしていてまた邪神のつけねらうこととなり、八頭八尾の大蛇の変化した高月彦が本物高月彦に付きしたがっていた。どちらが本物の高月彦か判明しなかった。これがもとで常世彦命は発病して、本心より邪心を恥じ、非行を悔いて、因果の理法を悟って、身魂まったく清まり、神助のもとに安々と眠るが如く帰幽した。
 高月彦を後継の天使長にすると決まったが、二名のうちどちらが本物であるか判明困難であった。そこで、本物の高月彦は五月姫の権謀術策によって偽の高月彦を追い出すことに成功した。しかし、権謀術策に頼ったため、急病となり、八頭八尾の大蛇の邪神に憑依されることとなった。
名称
五月姫 高月彦? 天使長常世彦命 八百万の神々
悪魔 天津大神 国祖大神 邪神 邪霊 八頭 八頭八尾の大蛇 八王 霊魂
宇宙 エルサレム 大本神諭 神言 神界 神政 常世国 万寿山 竜宮海
 
本文    文字数=8071

第三九章 常世の暗〔一八九〕

 聖地ヱルサレムの天使長常世彦命には、高月彦誕生して追々と成長し、父を輔けて、その勲功もつとも多く、かつ天使長の声望天下に雷のごとく轟き、その善政を謳歌せざるもの無く、一時は実に天下泰平の祥代となりける。
 しかるに油断は大敵すこしにても間隙あらむか、宇宙に充満せる邪神の霊はたちまち襲ひきたりて、或は心魂に或は身体にたいして禍害を加へ、またはその良心を汚し曇らせ、つひにはそのものの身体および霊魂を容器として、悪心をおこし悪行を遂行せしめむと付け狙ふに至るものなり。
 大本神諭にも、
『悪魔は絶えず人の身魂を付け狙ひ居るものなれば、抜刀の中に居る心持にて居らざる時は、いつ悪魔にその身魂を自由自在に玩弄物にせらるるや知れず。ゆゑに人は神の心に立帰りて神を信仰し、すこしも油断あるべからず』
 常世彦命は神界の太平にやや安心して、あまたの侍臣とともに竜宮海に舟遊びの宴をもよほすとき、竜宮海の底深く潜みて時を待ちつつありし八頭八尾の大蛇の邪霊は、この時こそと言はむばかりに、その本体を諸神人の前に顕はし、態と神人らの前にて高月彦と変化し、常世彦命の居館に入りこみ神人らを悩めたるなり。
 常世彦命はじめ聖地の神人らは、二人の高月彦のうち一人は邪神の変化なることを何れも知悉すれども、その何れを真否と認むること能はざりしために、止むを得ず、同じ姿の二人を居館に住まはせたりける。真の高月彦は、
『我こそは真の高月彦なり、彼は邪神の変化なり』
と證明せむとすれば、邪神の高月彦もまた同じく、
『我こそは真の高月彦なり、彼は邪神の変化なり』
と主張し、その真偽判明せず、やむを得ず二人を立てゐたりける。
 この怪しき事実は誰いふともなく神界一般に拡まり伝はり、八王八頭の耳に入り、神人らは聖地の神政に対して、不安と疑念を抱くに至りける。
 常世彦命はこのことのみ日夜煩悶し、つひには発病するに立ちいたりぬ。命は妻を枕頭に招き、苦しき病の息をつきながら、
『吾は少しの心の欲望より終に邪神に魅せられて常世国に城塞を構へ、畏くも国祖大神をはじめ歴代の天使長以下の神人らを苦しめ悩ませたるにも拘はらず、仁慈深き国祖は吾らの改心を賞でたまひて、もつたいなき聖地の執権者に任じたまひたれば、吾らは再生の大恩に報いたてまつらむと誠心誠意律法を厳守し、神政に励みて国祖の大神に奉仕せしに、心の何時となく緩みしためか、竜宮海に船を浮べて遊楽せし折しも、海底より邪神現はれて愛児の姿となり、堂々として我館に住み込み、その真偽を判別する能はず、それより吾は如何にもしてその真偽を知らむと、日夜天津大神および国祖大神に祈願を凝らせども、一たん犯せる罪の報いきたりて、心魂暗み天眼通力を失ひ、かつ、それより我身体の各所に痛みを覚え、今やかくのごとく重態に陥りたるも深き罪障の報いなれば、汝らは吾が身の悲惨なる果を見て一日も早く悔い改め、寸毫といへども悪心非行を発起すべからず』
と遺言して眠るがごとく帰幽したりける。鳥の将に死なむとするやその声悲し、人の将に死せむとする時その言や善しと。宜なるかな、さしも一旦暴威をふるひたる常世彦命も本心より省み、その邪心を恥ぢ、非行を悔い神憲の儼として犯すべからざるを畏れ、天地の大道たる死生、往来、因果の理法を覚りて身魂まつたく清まり、神助のもとに安々と眠るがごとく帰幽したりける。アヽ畏るべきは心の持ちかた一つなりける。
 常世彦命の昇天せしより、聖地の神人らは急使を四方に派して、各山各地の八王をはじめ一般の守護職にたいして報告を発したれば、万寿山をはじめ八百万の神人は、この凶報に驚き我一と先を争ひて聖地に蝟集しその昇天を悲しみつつ、後任者の一日も早く確定せむことを熱望し、ここにヱルサレム城の大広間に会したり。常世彦命の長子高月彦を天使長に選定し、国祖大神の認許を奏請せむとするや、天下に喧伝されしごとく、二人の高月彦あらはれ来たりぬ。
 諸神司はその真偽について判別に苦しみ、七日七夜大広間に会議をつづけたれど、いかにしても前後と正邪の区別つかざるところまで克く変化しゐたるにぞ、真偽二人の天使長を戴くことを得ず、神人らは五里霧中に彷徨しつつ、その怪事実に悩まされけり。
 高月彦は大広間に現はれ竜宮海に潜める邪神大蛇の変より、父の昇天までの種々聖地の怪を述べかつ、
『吾身に蔭のごとく附随せるは、かの大蛇の変化なることを證明すべきことあり。諸神人はこれにて真偽を悟られたし。吾には父より賜はりし守袋あり、これを見られよ』
と満座の前に差出し、偽高月彦の邪神にむかひ、
『汝が果して真なれば、父より守袋を授けられし筈なり、今ここにその守袋を取出して、その偽神にあらざることを證明せられよ』
と詰め寄れば、邪神はたちまち色を変じ、何の返答もなく物をもいはず、真の高月彦に噛付かむとする一刹那、たちまち「惟神霊幸倍坐世」の神言が自然に口より迸出したるにぞ、偽神はたちまちその神言の威徳に正体を現はし、
『アヽ残念至極口惜さよ。我は永年この聖地を根底より顛覆せむと、海底に沈みて時を待ち、つひに高月彦と変化し、聖地の攪乱に全力を尽したりしに、高月彦の神言によりてその化けの皮を脱がれたれば、いまは是非なし、ふたたび時節を待つてこの怨みを報ぜむ』
と言ふよと見るまに、見るも恐ろしき八頭八尾の大蛇と現はれ叢雲をよびおこし天空をかけりて、遠くその怪姿を西天に没したりけり。高月彦は忽然として立ちあがり、
『諸神司はただいまの邪神の様子を実見して、その真偽を悟りたまひしならむ、吾こそは天使長常世彦命の長子高月彦なり。今後聖地の神政については、諸神司の協力一致して御輔翼あらむことを希望す』
と慇懃に挨拶を述べ終るや否や、たちまち悪寒震慄、顔色急に青ざめ、腹をかかへて苦悶の声を放ちければ、諸神司は驚きて命を扶けその居館に送り、侍者をして叮嚀に看護せしめたり。
 この守袋は妹五月姫の計らひにて、俄に思ひつきたるカラクリにして、邪神の正体を現はすための窮策に出たるものなりける。かくのごとき権謀術数を弄するは、神人としてもつとも慎まざるべからざることなり。
 また高月彦の急病を発したるは、真正の病気ではなく、命の安心とややその神徳にほこる心の隙に乗じて、西天に姿を隠したる八頭八尾の大蛇の邪霊が、間髪を容るるの暇なきまで速く、その肉体に憑依したる結果なりける。

(大正一〇・一二・二七 旧一一・二九 外山豊二録)



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