出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語04-5-311921/12霊主体従卯 傘屋の丁稚王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
エルサレム
あらすじ
 常世姫は国祖に行成彦他が権謀術策を弄して会議を妨害したことを報告した。国祖は、急に態度を変えて一言もなく別室に去った。行成彦は広宗彦命に復命し、大道別などの計略による活躍を話したが、広宗彦命はしぶい顔をしている。
 注! これは国祖の偽の命令を行成彦他が遂行したことを表しているのだろう。
名称
出雲姫 大島別 大道別 国祖 事足姫 猿田姫 玉純彦 常世姫 広宗彦命 道貫彦 桃上彦 百猛彦 森鷹彦 八十猛彦 行成彦
白狐旭 鬼武彦 国祖大神 白狐高倉 大自在天 八頭 八王 八王大神
大江山(たいこう) 天地の律法 常世城 水茎の文字 モスコー 竜宮海 竜宮城
 
本文    文字数=5340

第三一章 傘屋の丁稚〔一八一〕

 花のかんばせ月の眉、雪をあざむく優美姿の常世姫も、行成彦の一行御帰城あり、との急報に驚異の眼を見張り、不安の色を漂はしける。この光景を見て取つたる桃上彦は、ただちに八十猛彦、百猛彦に目配せしたれば、二人はうなづきながら急遽表に駆出したり。これは行成彦以下の神人を竜宮城に導くためなりける。
 二人は、あまたの部下を率ゐて一行を出迎へ、今回の遠旅の使命を了へ無事帰城せられしを祝し、かつその労苦を謝しける。
 行成彦はまづ兄の天使長に拝顔せむことを望みけるに、二人は言を設けて、ただ今天使長は国祖大神と御懇談の最中なれば、暫時この城内に休息されたしと進言したりける。行成彦命以下の神司らは、遠路の疲労を慰せむとその言にしたがひ、城内の別殿に入り休息したり。諸神将卒一同もまた竜宮海に瀕せる高楼に登り、春の海面に陽炎のきらめき渡り温かき風のおもむろに小波の皺を海面にゑがき、水茎の文字の清く美しく彩る長閑な光景を見やり、祝ひの酒に微酔の面をさらしつつ、広宗彦命の招き出しをいまや遅しと心待ちに待ちゐたり。しかして行成彦一行は、先だちて常世姫の来城せることを夢にも知らざりにける。
 広宗彦命は行成彦一行の帰城と聞き、一刻も早く面会して、その真相を聞かむことを急ぎたれど、常世姫、桃上彦の二人のために止むを得ず促されて、国祖の御前に参進したり。常世姫は国祖の御前に恭しく低頭平身して、御機嫌を奉伺し、かつ八王大神および吾身の自由行動の律法に違反せることを涙を流して陳謝し、速やかに天地の律法に照し厳罰に処せられむことをと泣いて訴へ、かつ行成彦をはじめ聖地の使臣らの権謀術数の奸手段を弄して大会議を攪乱し陋劣極まる手段を用ゐて、神司らを煽動し、つひに天地の律法を破り、天下にその暴状と卑屈とのあらむ限りを遺憾なく暴露し、聖地の威厳をして、まつたく地に落さしめたりと、虚実交々進言したり。国祖は顔色俄に一変し一言の挨拶もなく奥の一室に入り玉ひけり。広宗彦命、常世姫、桃上彦は是非なく退出して錦の館に引上げたり。
 ここに行成彦は、今回の常世会議において、殊勲を建て八百八十八柱の神司らの精神を統一し、聖地の危急を根底より救ひたる大道別をはじめ猿田姫、出雲姫を先導に、八王八頭を従へ天にも昇る心地して、得々とし意気昇天の勢をもつて、衆望を一身に集め、八王大神なる大道別とともに潔く帰城したるなりき。
 この光景を窺知したる桃上彦は嫉妬の念押ふるに由なく如何にもして行成彦を聖地より排除せむと、ここに常世姫と計り、国祖に虚実交々言辞をたくみに讒言したるなり。
 聖地に今回参向したる、八王以下は、モスコーの道貫彦、南高山の大島別および玉純彦、森鷹彦の四神司と聖地の神司らより外には、八王大神を大道別の偽八王大神たりしことを知るものなかりける。
 ここに行成彦は、広宗彦命、事足姫に謁見をもとめ、常世城における大成功を詳細に物語り、かつ大江山の鬼武彦をはじめ、高倉と旭の殊勲を物語り、なほモスコーの宰相たりし大道別の永年の苦心より、つひに八王大神の替玉に選まれ、八王大神および大自在天の大陰謀を根底より覆へし、各山各地の八王以下を、心底より帰順せしめたることを、一々詳細に物語りける。
 広宗彦命は、弟の捷報を一々聞き終りて歓喜するならむと、従臣一行は御兄の様子を窺居たり。されど広宗彦命の面上には、何となく暗影のさし居ることは歴然として表はれ居たり。行成彦をはじめ御母の事足姫は、不審に堪へざるもののごとし。広宗彦命はやうやく口を開き、
『大道別はいま何処にありや』
と尋ねけるに、行成彦は何心なく、
『ただいま別殿に諸神司に護られ、八王大神となりて休息せり。しかして諸神司の大部分は八王大神常世彦と確信しつつあり。この機を逸せず、彼の口をもつて八王大神を辞職せしめ、諸神司をして御兄の直属のもとに帰順せしむるの神策確立せり。兄上よ歓ばせたまへ』
と一切の秘密を打ち明けたる折しも、廊下に小さき足音聞えきたりぬ。はたして何人の立聞きならむか。兄弟二人は声をひそめて、その足音のする方に耳をかたむけたり。
 天に口あり壁に耳あり、慎むべきは、密談なりける。

(大正一〇・一二・二五 旧一一・二七 クリスマスの日 近藤貞二録)



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