出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語04-2-101921/12霊主体従卯 雲の天井王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
常世城
あらすじ
 八島姫、春日姫、常世姫、八王大神常世彦の偽者が現れ、議場は大混乱となる。神々は気がつくと泥田の中にいた。これは白狐が仕組んだことであった。八王大神以下の神々は、「国治立命の許可を受けなければ、何事も成就しない」と心の底から悟った。
名称
春日姫? 常世姫? 道貫彦 道彦 八島姫? 八王大神? 行成彦
悪竜 妖狐 金毛九尾の悪狐 国治立命 国祖 邪鬼 邪神 天地の大神 常世彦 白狐 八王
天の川原 神界 常世城 常世の国 南高山 祝詞 モスコー 竜宮城
 
本文    文字数=6439

第一〇章 雲の天井〔一六〇〕

 南高山より八島姫来場せりとの急報は、諸神人の耳朶に、晴天の霹靂のごとくに轟きわたりけり。八島姫は盛装を凝らして、諸神人列座の前をはづかしげに一礼して通りぬけ、ただちに壇上に登りたり。ここに毫末の差異なき八島姫は二柱あらはれたるなり。このときまたもや、
『八島姫ここにあり』
と場の一隅よりまたもや同じ八島姫が現はれ壇上に登りける。衣服の色といひ、頭髪の艶といひ、面貌といひ、背の高さといひ、分厘の差もなきこの光景を見やりたる神人は、夢かうつつか、はた幻かと、互に眼をこすり頬をつめれども夢でもうつつでも幻でもなかりける。この時、
『モスコーの城主八王神道貫彦の娘春日姫来城あり』
との急報あり。諸神人はまたもや不審の眉をひそめゐる際、悠然として入りきたる絶世の美人あり。美人は列座の神人に叮嚀に一礼し、ただちに中央の壇上に登りたれば、春日姫はまたもや二人ならびたり。いづれを見ても花菖蒲、正非の区別つかざりにける。
 この時、
『竜宮城に久しく出たまひし八王大神の妻常世姫御帰城あり』
と報告する使神あり。
 常世姫は顔色を変じていふ、
『常世姫は妾なり、何ぞ妾のほかに常世姫あらむや』
と絶叫する。このとき絹ずれの音しとやかに入りきたる女性は、常世姫そのままなりき。女性は列座の神人に一礼して直ちに壇上に登る。またもや二人の常世姫が現はれたるなり。大広間の中央の高座は月雪花にも擬ふ二常世姫、二春日姫、三八島姫の美人立ならび、じつに立派なるものなりき。これを七柱の女神と誰いふとなく言ひふらす者ありける。
 以前より現はれゐたる常世姫は柳眉を逆立て、
『汝いづれの邪神にや、かかる神聖なる議場に突然入りきたりて、妾と同様の姿と変じ、この聖場を汚さむとするや。いでや汝が化の皮をぬぎ、正体を現はしてくれむ』
といふより早く、後の常世姫にむかつて組付けば、後の女神は声を張りあげ、
『汝こそは真の妖怪変化なり、今にその正体を露はし、神人の目を醒しくれむ』
といふより早く、細き白き腕を捲りて丁々発止と打ちすゑたり。
 八王大神は従者道彦の急報におどろき愴惶として議場に走りきたり、常世姫以下女性のあまた並立せるに呆れはて、いづれをそれと分別しかねて眼を光らせ、直立不動の体に七柱の女神の様子を凝視しゐたり。常世姫は八王大神の姿を見るや、飛びかかつて泣きはじめたるに、またもや一人の常世姫は八王大神に飛びかかり泣きつく。春日姫は二人一度に八王大神にむかつて、
『妾こそは真正の春日姫なり』
『いな彼は偽神なり。真正の春日姫は妾なり、かならず見過まりたまふな』
と泣いて抱つかむとするや、一方の八島姫は、
『妾こそ真正の八島姫なり、他は偽神なり』
『いな妾こそ真の八島姫なり』
『いな妾なり』
と同じ姿の三柱の姫は、四方八方より八王大神を取りまき、一寸も動かさず。八王大神は五里霧中に彷徨するの思ひにて、真偽の判別に苦しむ折しも、
『八王大神これにあり、偽神の八王大神に面会せむ』
と大音声に呼ばはりながら悠々として入りきたり、中央の高座に登れば、八王大神は烈火のごとく憤り、
『汝何神なれば我が名を偽りて、この神聖なる議場を攪乱せむとするや、目に物見せてくれむ』
と、後来の八王大神にむかつて打つてかかり、八王大神と八王大神は互に鎬を削りて壇上に挑みあひ、終には入り乱れて前後の八王大神の判別を失ふに致りける。列座の神人は狐に魅まれたるごとき顔して見入るばかりなりけり。たちまち中空に声あり、
『常暗の夜の常世の国の常世彦、その妻の常世姫、それに従ふ八島姫、こンな不審の三柱の、女神の心は暗の夜に、鼻をつままれ鼻折られ、春日の姫のかすかにも、光さへ見ぬ常世国、列座の神の胸の内、みな常暗となりにけり、みな常暗となりにけり。アハヽヽハのアハヽヽヽ』
と声高らかに笑ふ。諸神は一斉に声する方の空をながむれば、天井の堅く張りつめられたる常世城の大広間の上には、数万の星が明滅し、天の川原は明らかに見えきたりける。このとき行成彦は大に笑つていふ、
『常暗の夜の神人たちよ、国祖国治立命の神勅律法を無視したる天罰は覿面なり。諸神はよろしく各自の脚下を熟視されよ』
と怒号したりければ、八王大神はじめ列座の神人は、ふと気がつき四辺を見れば、足下のじるき泥田のなかに、泥まぶれになりて坐りゐたること明白となりきたりぬ。常世城の大広間は巍然として遥の遠方に聳えゐたり。常世彦、常世姫の背後には、あまたの邪鬼、妖狐のつねに憑依して悪業を勧めつつありしが、正義の神人には勝つべからず。この時のみはさすがの悪竜も金毛九尾の悪狐も、その魔術を行ふに由なく、だます狐が正義の白狐にすつかりだまされて、拭ふべからざる末代の愧を天地にさらしたるなり。
 ここに目覚めたる八王大神以下満座の神人は、第一に国祖国治立命の認許を得ざれば、何事も成就せざることを心底より悟了し、第三回の会議よりは、天地の大神にたいして祝詞を奏上し供物を献じ、神界の許しを得て、その後に何事にも着手すべきものなることを、深く感得したりける。

(大正一〇・一二・一七 旧一一・一九 出口瑞月)



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