出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語04-1-61921/12霊主体従卯 怪また怪王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
常世城
あらすじ
 美山彦と国照姫が登壇して地の高天原の内情を暴露した。怒った行成彦、猿田姫、出雲姫は壇上に駆け上り、国照姫を壇上より引きずりおろし、議場を混乱させた。大虎彦らが捕らえると、猿田姫、出雲姫ではなく春日姫、八島姫であった。
 次に、何物かが吾妻彦に変化して常世彦に反対の意見を述べる。吾妻彦を斬ろうとした魔我彦は自分を傷つけてしまう。
名称
吾妻彦 出雲姫 大虎彦 春日姫 国照姫 猿田姫 魔我彦 美山彦 八島姫 行成彦
邪神 常世彦 八王大神
天の鳥船 青雲山 地の高天原 天地の律法 常世城 竜宮城
 
本文    文字数=6644

第六章 怪また怪〔一五六〕

 竜宮城に野心を包蔵して永く仕へゐたる美山彦、国照姫は、地の高天原の事情によく通じゐたるを幸ひ、美山彦とともに国照姫は傲然として中央の高座に登壇し、口を極めて、聖地の窮状を満座の前にて嘲笑し、かつ凡ての内情を暴露したるにぞ、行成彦、猿田姫、出雲姫は、国照姫の行動をいま眼前に認めて非常に憤慨し、獅子奮迅の勢にて前後の区別も知らず、たちまち壇上に馳せのぼり、猿田姫、出雲姫は国照姫の襟髪をとるより早く、高座より引きずりおとし、驚きおそれ狼狽する国照姫の部下を、一々女姓の強力にて打据ゑ蹴飛ばし、泣き叫ぶ神人を目がけて、二女は多数を相手に戦ふにぞ、大虎彦、美山彦は、
『ソレ狼藉者逃がすな、引捕へて縛せよ』
と厳しく下知するを、満座の神司らは呆気に取られて、この場の光景を黙視するのみなりき。神司は漸くにして猿田姫、出雲姫を捕へ高手小手に縛りあげ、中央の壇上に押しあげ、満座にむかつて、
『地の高天原の神人は、女性といへどもかくのごとき乱暴なるもののみ。その他の男司の暴悪無道や知るべきのみ。諸神司はこの現場において暴逆なる女性の行為を直接目撃されたれば初めて迷夢を覚まし玉ひしならむ。これにてもなほ聖地の神政経綸を謳歌し、もつて行成彦の説に賛成盲従をつづけたまふ所存なりや』
と両肩をゆすり、口を左方に斜に釣りあげながら、したり顔に高座より述べたてたり。一座の神司らは耳を澄ませて聞き入りしが不思議なるかな、いままで猿田姫、出雲姫と見えしは、まつたくの間違ひなりける。猿田姫と見えしは、八王大神の寵神にして常世城の内外に嬌名たかき春日姫にして、出雲姫と見えしは、これはまた八王大神の寵神にして常世城に艶名並びなき八島姫なりき。真の猿田姫、出雲姫は依然として自席に柔順にひかへて静かにこの光景を対岸の火災視しつつ無心の態なり。満座の神司らは、この不審の出来事にその真偽に迷はざるを得ざりける。
 今まで沈黙を守り怖ぢ怖ぢし居たりし青雲山の八頭なる吾妻彦は、猛然として立ちあがり中央の高座に登壇し、一同にむかつていふ、
『ただいま大虎彦、美山彦ならびに常世城の神司らは、聖地の神人は女性さへもかくのごとき乱暴狼藉におよぶ。これを見ても聖地の神人らの暴悪は察知さるべしとの言明にあらざりしか。しかるにただいまの狼藉者の女性は、満座諸神司の見らるるごとく、常世彦の寵神なる春日姫、八島姫の二人に非ずや。しかるに温柔なる聖地ヱルサレム城の女臣、猿田姫、出雲姫の暴動せしごとく主張せし美山彦、大虎彦、国照姫らの神司らは、かかる明白なる事実をとらへて、罪を聖地の女性に科せむとするは何ゆゑぞ。乱暴もまた極まれりとゐふべし。今ここに縛されし二人は、常世城にてもつとも声望高き女性にして、かつ八王大神の無二の寵女なり。そのもつとも精選されたる女性にして、その乱暴の行為かくのごとし。これをもつて推し考ふるときは、常世城の男神らの悪逆無道の邪神たるは論をまたず。况ンやこれを統轄する常世彦においておや、その悪逆無道は察するに余りありとゐふべきのみ。常世城の神人らはこれにたいして何の辞あるか。ただちに明確なる答弁を待つ』
と壇上に突立ちたるまま大虎彦、美山彦の面をにらみつけたり。にらみつけられたる二人は何の返答もなく顔見合せてブルブルと菎蒻の幽霊のごとく震ひをののき居たりける。このとき会場の空には、天の鳥船のとどろく声ますます激烈となり、示威運動は再開せられたり。吾妻彦は、毫も屈せず、直立不動の姿勢をとり、壇上にて、
『常世彦は悪逆無道にして天地に容るべからざる魔神なれば、満座の神司らはこの機を逸せず常世彦を面縛し、天地の律法を説き諭し、いよいよ改心せざるにおいては、吾一人としても諸神司の面前にて天に代り誅伐せむ』
と臆めず恐れず懸河の弁舌さはやかに述べたてたり。満座の神司らは呆然自失ほとんど腰を抜かさむばかりの状態なり。このとき場の一隅より魔我彦は席をけつて立ちあがり、
『畏くも八王大神にむかつて無礼の暴言聞きすてならじ、我は天に代つて無礼者を誅伐せむ。思ひ知れや』
といふより早く長刀を引抜き、高座に馳せ登り、ただ一刀のもとに吾妻彦を頭上より斬りつけたりしが、ハツト思ふとたんに一条の白煙立ちのぼり見るまに、吾妻彦の姿は消え失せにけり。同時に春日姫、八島姫の姿も見えずなりぬ。魔我彦は吾が振りあげたる長刀の尖に我とわが脚を斬り、流血河のごとくあけに染まりてその場に打ち倒れたりける。神司らは周章狼狽して魔我彦をかつぎ一室に送り、侍女をして看護せしめたりき。しかるに、またも不思議や吾妻彦は依然として自席に柔順にひかへ無心の態に、コクリコクリと白河夜船をこぎ、華胥の国に遊楽の最中なりける。かかる大騒動を前にして議席に着きしまま眠りゐたる吾妻彦こそは、じつに暢気なものといふべし。
 大虎彦、美山彦は一向合点ゆかず、アフンとして、魂をぬかれたる人形のごとく、木像のごとく呆然自失の態にて、蛸の八足を取られし時のごとく、身体は一寸一分といへども、動かずなりゐたりける。第一回の会議は混乱紛糾の中に幕を閉ぢられしが、第二回目の会議の模様は果していかなる結果を来たすならむか。吾妻彦、八島姫、春日姫は果して何ものなりしや合点行かざる次第なりける。

(大正一〇・一二・一六 旧一一・一八 出口瑞月)



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