出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語03-9-391921/12霊主体従寅 乗合舟王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
スペリオル湖
あらすじ
 道彦はスペリオル湖上の船で八島姫と一緒になったが、分らないように隠れていた。八島姫は南高山の従臣である玉純彦と出会い、親の惨状を聞き胸を痛める。そこで、白狐旭が八島姫に変化して南高山に帰り親孝行した。道彦は常世彦の従者に、八島姫は常世姫の従者になり、常世城に入りこんだ。
名称
旭姫! 大島別 邪神 玉純彦 白狐旭 道彦 八島姫?
国直姫命 国治立命 神霊 常世姫 豊彦 八島彦 八島姫
高白山 スペリオル湖 地の高天原 常世城 常世国 南高山 ロツキー山
 
本文    文字数=5457

第三九章 乗合舟〔一三九〕

 道彦は高白山を出でしより、諸方を遍歴し艱難辛苦を重ねて、やうやく常世国スペリオル湖の北岸に出たり。ここに船を傭ひ、ロツキー山に向はむとしたり。船中には沢山の神人乗りゐたり。八島姫もいつの間にか、この船の客となり居たりしが、道彦はわざと空とぼけて、素知らぬ顔をなしゐたり。八島姫は道彦の変りはてたる姿を見て、少しも気付かざりける。
 この時船の舳先よりすつくと立ちて、八島姫の傍に近づききたる神人あり、これは南高山の従臣玉純彦なりき。南高山は八島姫の出城以来、四方八方に神人を派遣して姫の行方を探しゐたりしなり。玉純彦は八島姫にむかひ、飛つくばかりの声を発し、
『貴女は八島姫にましまさずや』
といふ。八島姫も風采容貌ともに激変して、ほとンど真偽を判別するに苦しむくらゐなりしかば、八島姫は首を左右に振り、
『われは旭姫といふ常世城の従臣にして、南高山のものに非ず、見違へたまふな』
と、つンとして背を向けたるを玉純彦は、どことなく八島姫の容貌に似たるを訝かり、姫の前方にまはりて首を左右にかたむけ、穴のあくばかり千鳥のごとき鋭き目を見はり、
『如何にかくしたまふとも、貴女の額には巴形の斑点今なほ微に残れり。われは主命により貴女を尋ねむとして、櫛風沐雨、東奔西走あらゆる艱難をなめつくし、今ここに拝顔し得たるは、天の授くる時運の到来せしならむ。袖振り合ふも他生の縁といふ。況ンや天地のあひだに二柱と無き主の御子においてをや。今この寒き湖の中に一蓮托生の船客となるも、かならず国治立命の御引き合せならむ、是非々々、名乗らせたまへ』
と、涙を流して男泣きに泣く。
 八島姫は名乗りたきは山々なれども、国直姫命の神命を遂行し、地の高天原に復命を終るまで、なまじひに名乗りをあげ、神業の妨害とならむことをおそれ、断乎としてその実を告げざりし。八島姫の胸中はじつに熱鉄をのむ心地なり。玉純彦はなほも言葉をついで、
『貴女はいかに隠させたまふとも、吾は正しく八島姫と拝察したてまつる。貴女の出城されしより、御父は煩悶のあまり、重き病の床につかせたまひ、御母また逆臣豊彦のために弑せられ、御父大島別は老いゆくとともに世をはかなみ、ぜひ一度八島姫に面会せざれば死すること能はずと、日夜悲嘆の涙にくれたまふのみならず、御兄八島彦は、瓢然として出城されしまま、行方不明とならせ給ふ。海山の大恩ある御父の難儀をふりすて、わが意中の道彦の後を追はせたまふは、実に破倫の行為にして天則に違反するものに非ずや』
と言葉をつくして述べたてける。
 姫の胸中は暗黒無明の雲にとざされにけり。ほどなく船は南の岸に近づきぬ。この対話を聞きゐたる道彦は、はじめて様子を知り、いよいよ八島姫なることを悟り、つくづくその面を見れば、かすかに巴形の斑点を認むることを得たり。
 船はやうやく岸に着き、神人は先を争ふて上陸したり。道彦は八島姫に悟られじと直ちにその姿を物陰に隠したるに、玉純彦は姫の手を固く取りて離さざりけり。
 八島姫は進退きはまり、国治立命の神霊にむかひて、この場を無事にのがれむことをと祈願したるに、たちまち白色の玉天より下り、二人の前に落下し白煙濛々としてたち昇り、四辺をつつみける。玉純彦は驚きて、姫の手を離したるを幸ひ、姫は白煙のなかを一目散に南方さして逃げ去りにける。
 ややありて白煙は四方に散り、後には八島姫地に伏して泣き倒れてゐたり。これは白狐旭の変化なりき。玉純彦はふたたび傍に寄り、千言万語をつくして帰城をすすめたれば、姫はやうやう納得して、玉純彦とともに帰城の途につきにける。
 数多の山河を跋渉し、やうやく南高山の城内にたち帰り、八島姫は久しぶりにて父に面会し、無断出城の罪を謝したりしが、父はおほいに喜び、かつ玉純彦の功績を賞揚し、城内にはかに春陽の気満ち神人らは祝宴をひらいて万歳を唱へ、大島別はここに元気回復して、後日神政成就の神業に参加することとなりける。
 道彦は八島姫の目を免がれ、常世城に入り、従僕となり遂に抜擢せられて、八王大神の給仕役となり、総ての計画を探知するを得たり。また白狐の変化ならざる八島姫も同じく常世城に入り、常世姫の侍女となり、一切の邪神の計画を探り、地の高天原に復命し、偉勲を樹つる次第は後日明瞭となるべし。

(大正一〇・一二・七 旧一一・九 加藤明子録)



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