出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語03-9-381921/12霊主体従寅 四十八滝王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
高白山
あらすじ
 道彦は高白山の荒熊彦を救って城に召抱えられた。言霊別命は常世国に捕らえられたが、言代別命に救われて、今は玉照彦と名乗り高白山にいた。
 常世姫の部下の八十熊別が月の姫を使って、城内に逗留している玉照彦(言霊別命)の素性をさぐらせた。月の姫は言霊別命を荒熊彦らと共に毒殺しようとしたが、道彦は逆に月の姫に毒を飲ませて殺した。八十熊別も道彦に八つ裂きにされた。言霊別命は高白山の主将となるが、地の高天原にはそのことは伏せておいた。
名称
荒熊彦 言霊別命 邪軍 月の姫 白狐高倉 道彦 八十熊別
言代別命 探女 玉照彦! 常世姫
天津祝詞 アラスカ 高白山 四十八滝 地の高天原 長高山 鎮魂 常世の国 ローマ
 
本文    文字数=6103

第三八章 四十八滝〔一三八〕

 長高山の城塞より煙のごとく消え失せたる道彦は、高倉のあとを追ふて、遠く東北にすすみ、氷のはりつめたる海峡を渡りて、アラスカの高白山の谷間に進みたりしが、すこしく谷川の上流にあたりて喧騒の声聞え来たる。道彦はその声をしるべに谷川をどんどん上りゆきみれば、谷の両側はあたかも鏡を立てたるごとく、断巌絶壁の一方に、あまたの人々寄り集まり、右往左往に声を放ちて騒ぎゐたり。
 見れば、高白山の主将荒熊彦は、谷間に顛落して大負傷をなし、谷水を鮮血にそめ苦しみつつありしなり。
 神司らはこれを救はむとすれども、名におふ断巌絶壁、いかんともすることあたはず途方にくれゐたりける。
 このとき白狐の高倉は、金色の槌と変化し、絶壁をうち砕き、足のかかるべき穴を穿ちつつ谷底に下り行く。道彦は傍なる山林に生茂れる藤葛を長く結び、谷川のほとりの老木の根にその一端を結びつけ、みづからその蔓を谷底に垂れ、高倉の穿ちおきたる巌壁の穴に足をかけ、やうやく谷底に下りつき、荒熊彦のかたはらに寄りそひ、水を口にふくみて面上に吹きかけ、かつ天津祝詞を奏上し、鎮魂の神術をほどこし、やうやく正気づき、出血もただちに止りたれば、右の脇に引抱へ、藤葛を左の手に持ち、巌壁の穴に足をかけ上りきたりぬ。神司らの喜びの声、感歎の声は天地も崩るるばかりなり。荒熊彦は道彦を命の親として尊敬し城内にともなひ帰り、山海の珍味を出して饗応し、救命の恩を感謝したりける。
 さて荒熊彦は衆とともに、この谷間の絶景を眺めて酒宴を催し、興に乗じて踊り狂ひ眼くらンで、この千仭の谷間に顛落したりしなりけり。この谷川は四十八滝と称し、いたる所に奇岩、怪石散在して、大小四十八個の荘厳なる瀑布が出現し、風光絶佳の遊覧所となりゐたりけり。
 道彦は荒熊彦の信任を得、聾唖痴呆の強力として侍臣のうちに加へられ、つひには炊事の用務を命ぜられ、まめまめしく奉仕しゐたり。
 高白山の城内の宰相に、八十熊別といふ徳望高き人あり。この人は常世姫の間諜にして、古くより高白山に謀計をもつて忍び入り、時をみて高白山を顛覆せむと企てゐたりける。
 ここにローマの戦に敗れ、常世の国に送られたる言霊別命は、中途にて、言代別命のために救はれ、身を変じて高白山にのがれ、賓客として、荘厳なる別殿に迎へられ、時機を待ちつつありしが、八十熊別は、言霊別命の素性を探知せむと、探女を使役して常にその行動を注視せしめゐたり。探女の名を月の姫といふ。月の姫は常に八十熊別の命により、言霊別命の侍女として、表面まめまめしく仕へゐたりぬ。
 ある夜、言霊別命と荒熊彦の密談を立聴きしてをり、ひそかにその詳細を八十熊別に報告しければ、八十熊別は月の姫に耳語して何事か命令を下しける。
 時に八十熊別は、茶の湯の饗応に言寄せて荒熊彦夫妻を招待し、かつ賓客なる玉照彦を招待したり。玉照彦は言霊別命の仮名なり。道彦は荒熊彦の侍者として宴席に現はれしが、彼はただちに炊事場にいたり、水をくみ茶を沸かすなど、まめまめしくたち働きける。
 八十熊別の侍者は、道彦の聾唖と痴呆とに心をゆるし、よろこびて炊事一切をうち任せける。月の姫は客人に茶をたて、これをすすめむとするとき、懐中よりひそかに毒薬をとり出し、茶の湯に投じたるを道彦は素知らぬ顔にこれを眺めゐたりける。月の姫はうやうやしく茶の湯を両手にささげ、玉照彦、荒熊彦らの前にすゑ、一礼して座を立ちにける。
 道彦はただちに月の姫を強力に任せてひきつかみ、茶席の前に現はれ出で、仰向に押し倒し、その茶を取るより早く、月の姫の口に無理やりに飲ませたり。
 月の姫はたちまち手足をもがき、黒血を吐きことぎれにける。
 八十熊別は謀計の暴露せむことを恐れ、合図の磬盤を打つやいなや、どこともなく数多の邪軍現はれ、玉照彦、荒熊彦らを目がけて前後左右より、長刀を抜き放つて切り込みぬ。このとき道彦は、高倉の妙術により、数百の道彦となつて現はれたれば、八十熊別の味方の邪軍は、縦横無尽に、道彦を目がけて切りこめども、いづれも皆空を斬り、影を追ひ、勢あまつて階上より地上に顛落し、さんざんに敗北したりける。
 八十熊別はこの態を見て、裏門よりのがれ出むとするや否や、幾千丈とも限りなき深き広き池沼にはかに現出して、遁るるの道なかりける。これは高倉白狐の謀計的幻影なりける。
 八十熊別はやむをえず、あとへ引返すとたんに、真正の道彦のために、八つ割にされ、ここに高白山の妖雲はまつたく晴れわたり、真如の明月は、高く中天に輝きはじめたり。
 言霊別命は、高白山の主将となり、しばらく地の高天原の神司らにも行衛を秘密にしゐたまひける。
 荒熊彦、荒熊姫は、言霊別命に一切を譲り、みづから従臣となり忠実に奉仕したりしが、道彦の姿はまたもや煙と消えにける。

(大正一〇・一二・七 旧一一・九 栗原七蔵録)



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