出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語03-6-191921/12霊主体従寅 楠の根元王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
青雲山
あらすじ
 青雲山には十二の玉の中でも最も大切な黄金の玉を祀るべく宮殿が建立されていた。玉守彦は前もって偽玉を作り玉の保護に当たったが、その妻玉守姫は口が軽く智恵が足らない。そこで玉守彦は一計を案じて、先に一人で宝珠山に行き、川でウサギをざるの中に入れておき、森の木に鮭を括り付けて置いた。そして、二人で森に入り、それらを玉守姫に見せ、玉を楠の木の根元に埋めた。
名称
吾妻彦 吾妻姫 神澄姫 神澄彦 国足彦 醜熊 玉取彦 玉守彦 玉守姫 常世彦
国魂 曲人
黄金の玉 黄金の宮 神政 青雲山 宝珠山 八頭 八王 八王大神
 
本文    文字数=5205

第一九章 楠の根元〔一一九〕

 青雲山は、八王神として神澄彦任ぜられ、神澄姫妻となり、吾妻彦は八頭神となり、吾妻姫はその妻となりたまひて、青雲山一帯の神政を司ることと定まりにける。
 青雲山には国魂として、黄金の玉を祭るべく、盛ンに土木を起して、荘厳無比なる宮殿の建立に着手されたり。この宮殿を黄金の宮といふ。宮殿の竣工するまで、玉守彦をして大切にこの宝玉を保護せしめたまひぬ。
 この黄金の玉は、十二個の国魂のうちにても、もつとも大切なる国魂なり。八王大神一名常世彦は、いかにもしてこの玉を手に入れむとし、部下の邪神、国足彦、醜熊、玉取彦に内命を下し、つねに玉守彦の保護せる国魂を手に入れむと、手を替へ品を代へ、つけ狙ひゐたりける。
 玉守彦は、大切なるこの宝玉を敵に奪はれむことを恐れ、ひそかに同形の石玉を造り、これに金鍍金を施し、真正の玉には墨を塗りて黒玉となしゐたるを、玉守彦の妻玉守姫はこの様子をうかがひ知り、玉守彦に向つてその不都合を責め、かつ偽玉を造りたる理由を尋ねてやまざれば、玉守彦はやむを得ずして答ふるやう、
『この黄金の玉は天下稀代の珍品にして、再び吾らの手に入るべきものに非ず。われこの玉の保管を命ぜられしを幸ひ、同形の偽玉を造り、これを宮殿竣工の上、殿内深く納め、真正の玉はわが家に匿しおき後日この玉の徳によりて、吾ら夫婦は、青雲山の八王神となり、一世の栄華を極めむと思ふゆゑに、吾は偽玉を造りたり』
といひつつ玉守姫の顔をのぞき見しに、玉守姫は喜色満面にあふれ、おほいに夫の智略を誉め立てにける。
 玉守彦は、智慧浅く、口軽く、嫉妬深き妻の玉守姫に、秘密を看破されしことを憂ひ、終日終夜頭を垂れ、腕を組み、溜息をつき思案にくれける。女は嫉妬のために大事を洩らすことあり、いかにせば妻を詐り、この秘密の漏洩を防がむかと苦心焦慮したる結果、ここに玉守彦は、真偽二個の玉を玉守姫に預けおき、
『我は数日間山中を跋渉し、真宝玉の匿し場を探し来らむ。汝は大切にこの宝玉を片時も目放さず堅く守るべし。この玉は吾ら夫婦の栄達の種なり』
と、まづ名利欲をもつて玉守姫を欺き、自分は山に入りて兎を擒り、また海にいたりて鮭を捕へ、夜中ひそかに宝珠山にわけ入り、広き谷川の瀬に兎を笊に容れ浅瀬に浸し置き、八尾の鮭を大樹の枝につるし、何喰はぬ顔にて数日の後わが家に帰り、玉守姫に、適当なる匿し場所を探し得たることを、喜び勇み報告したりける。玉守姫はおほいに喜び、
『善は急げといふことあり。一時も早く、この黒き黄金の宝玉を匿しおかむ』
と玉守彦の袖をひきて、そはそはしき態度を現はし急き立てたり。玉守彦は、
『しからば明朝未明に吾が家を出で、汝とともに宝珠山にゆかむ』
と答へ、その夜は夫婦ともに安眠し、早朝黒き玉を携へ山深くわけ入りける。途中かなり広き谷川の流れあり。二人は浅瀬を選びて渡りはじめ、川の中ほどにいたりし時、バサバサと音するものあり。玉守姫は耳敏くこれを聴きつけ、眼を上流に転じ見るに、川中には一個の笊が浅瀬にかかり動きゐたり。夫婦は不思議にたへずと近より、笊の蓋を明け見れば不思議や、中には兎が二匹動きゐたり。玉守姫は玉守彦にむかひ、
『これは実に珍しき獲物なり。天の与へならむ。幸先よし』
と笊と共にこれを拾ひて、なほも山奥深くわけ入りにける。
 鬱蒼たる老松は天をおほひ、昼なほ暗きまでに繁りゐる。その樹下に夫婦は横臥して息を休めゐたりしが、玉守姫はフト空を仰ぎ見るとたんに、
『ヤー不思議』
と絶叫したり。玉守彦は素知らぬ顔にて、
『不思議とは何事ぞ』
と言ひも終らざるに、玉守姫は頭上の松の梢を指さし、
『この松には沢山の鮭の魚生りをれり』
といふ。玉守彦はいかにも不思議千万とあきれ顔に答へ、ただちにその木にのぼり、鮭を一々樹の枝よりむしり取りぬ。夫婦は鮭と兎を重たげに担ひ、なほも山深くわけ入り、楠の大木の根元に玉を埋めて帰り来たりける。
 ここに夫婦は兎と鮭を料理して、祝ひの酒を飲み、雪隠にて饅頭喰ひしごとき素知らぬ顔にて日八十日、夜八十夜を過したりける。

(大正一〇・一一・一八 旧一〇・一九 栗原七蔵録)



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