出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語03-3-51921/12霊主体従寅 不審の使神王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
ロッキー山
あらすじ
 ロッキー山では貴治彦、靖国別が紺色の玉を祭っていた。常世彦のスパイ小島彦(玉醜別)がやって来て、「地の高天原が襲われた」と嘘の情報を流す。貴治彦が国彦を高天原に使いにやると、それは嘘であることがわかった
 地の高天原からやって来たと称して、常世姫の間者豊彦がやって来る。そして、偽の国直姫命が現れ、貴治彦、靖国別らを地の高天原の応援に派遣する。
 高天原からは言霊別がロッキー山に向う。
名称
国直姫命? 国彦 言霊別命 貴治彦 天使長大八州彦命 豊彦 靖国姫 靖国別 小島彦?
大神 国治立命 邪神 玉醜別! 常世彦 常世姫 八頭 八王 八王大神
紺色の玉 神政 地の高天原 十曜 ロツキー山
 
本文    文字数=6034

第五章 不審の使神〔一〇五〕

 ロツキー山は紺色の玉を、荘厳なる神殿を建立して鎮祭され、貴治彦八王神となり、靖国別八頭神となり、律法を遵守して、きはめて平穏に神事、神政は行はれけり。
 ある時、靖国姫の居間の扉を、ひそかに叩く者あり。靖国姫は侍女とともに扉を開き、
『かかる深夜に戸を叩くは何者ぞ』
と問ひただせば、声に応じて、
『私は地の高天原なる国直姫命の密使にして、小島彦と申す者なり』
(附言、小島彦と称するは実は偽名にて、常世彦の間者、玉醜別といふ曲者なりける)
 靖国姫は小島彦に一面識もなければその真偽を知らず、国直姫命の急使と聞きて大いに驚き、
『かかる夜陰にひそかに来りたまふは、地の高天原に何事か急変おこりしならむ。まづわが居間に』
と小島彦を引入れ、その用務をあわただしく息をはづませ問ひかくれば、小島彦は声を低ふし四辺に眼を配り、かつ畏れながら、
『隣神を遠ざけたまへ』
と仔細ありげなり。
 靖国姫はその言のごとく隣神を遠ざけ、小島彦としづかに対座したり。小島彦は声を低ふしていふ、
『地の高天原には大変事出来し、天使長大八洲彦命は、八王大神部下の神の悪辣なる計略におちいり、つひに上天せり。その他の天使は善後策につき協議中にして、一歩も外出することを得ず。上を下への大騒ぎなれば、我をして天使代理として遣はしたまふ。ゆゑに我が言は国直姫命の神言にして、天使の言も同様なり。一時も早く靖国別に貴下より伝言せられたし』
と顔色を変じていひければ、靖国姫はそのまま使者をわが居間に待たせおき、靖国別の寝殿にいたり、密使の次第を逐一進言したりけり。靖国別は大いに驚きしばらく双手を組ンで思案の体なりし。たちまち座を立つて、貴治彦の御殿に参向し、密使の次第を逐一奏上したりける。
 貴治彦はこれを聞きて大いに訝かり、
『国直姫命の密使ならば、第一着に吾れに伝へらるべきはずなり。しかるに如何なる変事ありとて吾れを差しおき、しかも女性の居間をたたき、かかる一大事を報告すべき理由なし。想ふに反逆を企つる者の奸手段なるべし。汝らはすみやかに、その密使を我が前にともなひ来れ。我は彼に会ひ実否を調査せむ』
と言葉を残して殿中に進み入りける。
 靖国別は命を奉じ、小島彦を伴なひひそかに殿中に伺候し、貴治彦にむかつて謁を乞ひしに、命は小島彦にむかつて密使の次第を詳細に訊問したりける。小島彦は低頭平身して言葉たくみに、前述の次第を奏上し、一時もはやく貴治彦の地の高天原へのぼられることを懇請し、かついふ。
『徒に躊躇逡巡して時を移さば一層大事変を惹起し、つひには国直姫命の御身辺も危からむ。大神の一大事、早くこの場を立つて、吾らとともに地の高天原へ参向されたし』
と進言せる。
 折からたちまち城下におこる鬨の声。命は急ぎ勾欄にのぼり山下はるかに見渡せば、夜陰のため確かにそれと判別はつかざれども、立ちならぶ無数の高張は、十曜の神紋記されありき。ただごとならじと元の座にかへり、靖国別に何事か耳語したまひける。矢叫びの声、鬨の声、次第に近づききたる。そのとき地の高天原の従神司豊彦(実は常世姫の間者)は軽装のまま走りきたり階下に平伏し、
『恐れながら八王の神に注進し奉る。地の高天原はほとんど破壊の運命に逢着し、国治立命は行衛不明となり、大混乱状態におちいり、収拾すべからざる惨状なり。国直姫命は従者をしたがへ小島彦の跡を追ひ、ただ今出御相なりたり。相当の礼をつくして諸神司をして城門に奉迎せしめたまへ』
とあはただしく奏上したるにぞ、命は寝耳に水の注進にしばし茫然としてゐたりしが、ただちに靖国別に命じて城内の諸神司に非常召集を命じ、国直姫命を城門に迎へたてまつるの準備に着手されたりける。
 命の命令一下とともに、諸神は各自礼装をととのへ、城門に奉迎したり。
 ここに国直姫命は諸神司とともに悠然として入りきたり、慇懃に挨拶を述べ、地の高天原の惨状を物語られける。ここに国直姫命の命令を奉じて貴治彦、靖国別は少数の神軍をひきゐ、地の高天原へ応援のため参向することに決したり。
 あまたの諸神将卒は靖国姫を守護し、ロツキー山の城中にとどまり、しばらく形勢を観望することとはなりける。
 これよりさきに貴治彦は、国彦をひそかに地の高天原につかはし、実否を糺さしめ、かつ小島彦の密使の真偽を調査せしめゐたりしなり。
 大八洲彦命は国彦の言を聞いておほいに驚き、
『地の高天原はかくのごとく平穏無事なるに、かかる密使をだすべき理由なし。察するところ邪神の奸策ならむ。このままに捨ておかば、ロツキー山は、いかなる運命に逢着するや計りがたし』
と、言霊別命に、国彦を添へ、あまたの従神とともに、ロツキー山に急ぎ出発せしめられたるぞ畏こけれ。

(大正一〇・一一・一四 旧一〇・一五 栗原七蔵録)



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