出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語02-7-481921/11霊主体従丑 律法の審議王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
竜宮城
あらすじ
 言霊別命は花森彦に妻を持たせようと提案した。しかし、「花森彦は稚桜姫命を堕落させた張本人である」として、神国別命、真澄姫ら諸神は反対した。言霊別命は、「これは律法制定以前の問題であったので、それが問題なら自分も過去に妻を何度も持っているので根底の国へ追われなければならない」と主張。そこで、国治立命が天津神と協議の結果、律法制定以前の罪は問わないことに決められた。花森彦は妻をめとることができた。
 天上より国直姫命が降りてきて、稚姫君命の後を継いだ。
名称
神国別命 国栄姫 国直姫命 言霊別命 花森彦 花森姫! 真鉄彦 真澄姫 安世彦
天道別命 天津神 天稚彦 国治立命 言霊姫 主神 常世姫 霊魂 稚桜姫命
地の高天原 天地の律法 幽界 竜宮城
 
本文    文字数=6180

第四八章 律法の審議〔九八〕

 国治立命が、天道別命とともに天地の律法を制定され、その第一着手に、稚桜姫命は律法の犠牲となり、幽界に降りたまうた。それより竜宮城も、地の高天原も、神司の謹慎により、律法は厳粛に守られてゐた。
 さて一夫一婦の制定により、花森彦の身上について一つの問題がおこつた。ここに言霊別命は、花森彦の孤独を憐み、相当の妻を選定し、夫婦うちそろひ、神業に参加せしめむことを提議した。神国別命以下の諸神将は、鳩首謀議の結果、言霊別命の提議を理由なしとして、葬らむとした。その理由は、
『天稚彦、稚桜姫命を堕落せしめたる原因は、花森彦である。肝腎の主神は幽界に落ちたまひし後に、安閑として妻を娶り、雪隠にひそみて饅頭くらひしごとく素知らぬ顔色なしをるは、実に無責任にしてかつ道義的罪悪である。平たくいへば花森彦は、二柱とともに罪に殉じ、幽界にいたつてこれに奉仕すべきが、神司たるものの当然の行動であらねばならぬ』
といふのであつた。城内の諸神将は満場一致、手を拍つて神国別命の意見に賛成した。
 言霊別命は、
『今回の事件の原動力は決して花森彦にあらず。奸佞邪智にたけたる常世姫が原動力である。ゆゑに花森彦の妻を禁ずるに先だち、まづ常世姫を改心せしめ、幽界に赴かしめよ』
と言葉を強めて主張した。かくして互ひに議論は果てなかつた。つひには真澄姫の裁断を乞ふこととなつた。真澄姫は、
『花森彦の妻帯は、断じて許すべからず』
と裁決した。八百万の神人はこの説に賛成をした。
 ここに言霊別命は色をなし、
『天地の律法は既往に遡りてこれを罰すべきや』
と質問した。神司は、
『肉体上の既往はおろか、過去における霊魂の罪も今回の律法によりて罰すべきもの』
と主張したのである。言霊別命は、
『しからばまづ第一に吾を罪せよ。吾は言霊姫の夫となるまでに、数回妻を替へたり。過去の霊魂の罪は確知せずといへども、肉体上における律法違反は、確乎たる証拠あり』
といひはなち、かついふ。
『諸神司にして果してこの律法に触れざるもの幾柱かある』
と大声叱呼された。いづれの神司も今まで自分の罪を棚にあげ、素知らぬ顔に隠してゐたのを素つ破ぬかれ、猿猴の樹上よりたたき落されしごとき心持ちとなり、いづれもアフンとして沈黙におちてしまつた。いづれの神司もここにいたつて開いた口がすぼまらず、誰もかれも雪隠で饅頭食ふた系統の神司ばかりであつた。
 神司らは言霊別命の事理明白なる一言に胆をぬかれ、石亀が横槌の柄の上に甲をのせられ、首を延ばしてもがきつつ進退きはまりし体裁にて、手も足もつけやうがなかつた。
 言霊別命は、
『諸神司の意見にして果して正当ならば、吾には大なる決心あり。吾まづ、天則違反の罪神として裁断をうけ、幽界にくだらむ。諸神司はいづれも清廉潔白の神司にましませば、決して幽界に降されたまふごとき案じは毛頭なかるべし。さらばこれより国治立命の御前に出で吾が罪を自白し、その処置を甘受せむ』
と立ちあがらむとするを、諸神司はあわててこれを引きとめ、
『短気は損気、しばらく待たれよ』
と大手をひろげて命の前に立ちふさがるのであつた。言霊別命はをかしさにたへず、思はず失笑せむとしたが、にはかに律法の精神を思ひだし、無理にこれをおさへた。
 そのとき真鉄彦走りいで、
『蓋をあくれば何れの神司も同様ならむ。同じ穴の狐、同僚の情誼をもつて、まづ思ひとどまりたまへ』
と諫止した。言霊別命は、
『天地の律法に依怙なし。吾は過去の罪によつて裁断を受けむ。止めたまうな』
と袖振りきつて行かむとす。をりしも安世彦は口をひらいて、
『まづこの場はこれにて静まりたまへ。敵の末は根を絶つて葉を枯らす。まづ第一に常世姫を亡ぼし禍根を絶つに如かず』
とこともなげにいつた。言霊別命は、
『亡ぼすとは殺すといふことならむ。殺すといふ行為は天地の律法に違反せずや』
と一本参つた。安世彦は頭をかき、
『これは失言いたしました』
と引きさがる。この光景を見たるあまたの神司は、あたかも蜴のあくびしたやうな顔色にて、口を開きアフンとしてゐたのである。
 をりしも天上より一道の光明赫灼として、衆神司のまへに強く放射するよと見るまに、麗しき威厳そなはれる女神降りきたり、中央にしとやかに端座せられた。この神は国直姫命である。国直姫命は神司にむかひ、ただいま国治立命天上にのぼり、律法の解釈につき、天津神とともに御詮議ありし結果、
『律法制定前の罪は今回かぎり問はざるべし。今後の世界における総ての罪悪は厳重に処罰し、霊魂上の罪も償却するまでは永遠に罪さるるべし』
との御決定なりと、言葉おごそかに宣示せられた。そして国直姫命は、稚桜姫命の天職をおそひ、竜宮城にとどまり地の高天原を治めたまふこととなつた。かくて花森彦は国栄姫一名花森姫との結婚を許さるることとなつた。

(大正一〇・一一・九 旧一〇・一〇 加藤明子録)



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