出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語02-6-391921/11霊主体従丑 太白星の玉王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
アルタイ山
あらすじ
 赤玉を失った鶴若は丹頂の鶴となり、玉を捜して飛び回り泣き叫んでいた。この声を聞いた天の太白星の精霊生代姫命は、鶴若に十二個の玉を授けた。鶴若はこの玉を飲み込んで芙蓉山に帰った。
 芙蓉山に雲がたなびいたので、それを見た清国別が出かけると、鶴野姫という女神が玉を産んでいた。鶴野姫は真実を物語り、「玉を竜宮城の大八州彦命に届け」るように頼む。清国別と鶴野姫は夫婦の契りを結んだが、それが元で神力を失い、そこから動けなくなり、泣き叫んでいた。
 アルタイ山の大森別は泣き声を聞き部下を派遣すると、「玉を竜宮城の大八州彦命に届け」るように頼まれたので、玉を竜宮城に運んだ。
 大八州彦命はこれを喜び、シオン山に神殿を造営して玉を安置した。
名称
生代姫命 大森別 清国別 高山彦 鶴野姫! 鶴若
大八州彦命 国照姫! 十二の白鳥 精霊 高虎姫 竹熊 丹頂の鶴 泣沢彦! 泣沢姫! 棒振彦 魔軍 美山彦!
赤玉 天の羽衣 アルタイ山 九皐 国玉 紅霓 シオン山 死海 地の高天原 天上 天の太白星 芙蓉山 竜宮城 黄金水
 
本文    文字数=6426

第三九章 太白星の玉〔八九〕

 竜宮城の従臣鶴若は、黄金水より出たる十二の玉の中、一個の赤玉を命にかへてアルタイ山に逃れ守つてゐたが、竹熊一派の奸策に陥り、つひにこれを奪取されて無念やる方なく、つひには嘆きのあまり、精霊凝つて丹頂の鶴と変じたるは、さきに述べたところである。
 丹頂の鶴は昼夜の区別なく、天空高く、東西南北に翔めぐつて声も嗄れむばかりに啼き叫んだ。その声はつひに九皐に達し、天の太白星に伝はつた。太白星の精霊生代姫命はこの声を聞き、大いに怪しみ、その啼くゆゑを尋ねられた。ここに鶴若は、
『われは、わが身の不覚不敏より大切なる黄金水の宝を敵に奪はれ、大八洲彦命に謝する辞なく、いかにもして、この玉を探し求め、もつて竜宮城に帰参を願ひ、再び神人となり、この千載一遇の神業に参加せむと欲し、昼夜の区別なく地上を翔めぐり探せども、今にその行方を知らず、悲しみにたへずして啼き叫ぶなり』
と奉答した。生代姫命は、
『そは実に気の毒のいたりなり。われは十二の白鳥を遣はし、黄金水の宝に優れる貴重なる国玉を汝に与へむ。汝が敵に奪はれたる玉は今や死海に落ち沈めり。されどこの玉はもはや汚されて神業に用ふるの資格なし。されば、われ新に十二の玉を汝に与へむ。この玉を持ちて竜宮城に帰還し、功績を挙げよ』
と言葉をはるや、忽然としてその神姿は隠れ、白気となりて太白星中に帰還された。たちまち鳩のごとき白鳥天より降るをみとめ雀躍抃舞した。されど鶴若は、わが身一つにして十二の白鳥の後を追ふはもつとも難事中の難事なり、いかがはせむと案じ煩ふをりしも、天上より声ありて、
『汝は天空もつとも高く昇り詰め、玉の行方を仔細に見届けよ』
といふ神の言葉が聞えてきた。
 鶴若はその声を聞くとともに天上より引つけらるるごとき心地して、力のかぎり昇り詰めた。このとき十二の白鳥は諸方に飛散してゐたが、たちまち各地に降下するよと見る間に白き光となり、地上より天に冲して紅霓のごとく輝いた。
 鶴若はその光を目あてに降つた。見れば白鳥は一個の赤玉と化してゐる。鶴若は急いでこれを腹の中に呑み込んだ。また次の白気の輝くところに行つた。今度はそれは白玉と化してゐた。これまた前のごとく口より腹に呑み込んだが、かくして順次に赤、青、黒、紫、黄等の十二色の玉をことごとく腹に呑み込んだ。鶴若は、身も重く、やむをえず低空を飛翔して、やうやく芙蓉山の中腹に帰ることをえた。
 芙蓉山の中腹には種々の色彩鮮麗なる雲立ちあがつた。この光景を怪しみて、清国別は訪れて行つた。すると其処には立派なる女神が一柱現はれて、十二個の玉を産みつつあつた。清国別は怪しみて、
『貴神は何神ぞ』
と尋ねた。女神は答ふるに事実をもつてし、かつ、
『この玉を貴下は竜宮城に送り届けたまはずや』
と頼んだ。この女神は鶴野姫といふ。
 清国別はここに肝胆相照らし、夫婦の約を結び、竜宮城に相携へて帰還し、この玉を奉納せむとした。
 しかるに夫婦の契を結びしより、ふたりはたちまち通力を失ひ、次第に身体重く、動くことさへままならぬまでに立ちいたつた。
 ふたりは神聖なる宝玉はともかく、夫婦の契によりてその身魂を涜し、通力を失ひたることを悔い、声をはなつて泣き叫ぶ。
 その声はアルタイ山を守る守護神大森別の許に手にとるごとく聞えた。大森別は従臣の高山彦に命じ、芙蓉山にいたつてその声の所在を探らしめた。
 高山彦は命を奉じ、ただちに芙蓉山に天羽衣をつけて、空中はるかに翔り着いた。見ればふたりは十二の玉を前に置き泣き叫んでゐる。高山彦は大いにあやしみ、
『汝、かかる美しき宝玉を持ちながら、何を悲しんで歎きたまふや』
と問ふた。ふたりは答ふるに事実をもつてし、かつ、
『貴神司はこの十二の玉を竜宮城に持ちゆき、大八洲彦命に伝献したまはずや』
と口ごもりつつ歎願した。
 高山彦はこの物語を聞き、しばし頭を傾け、不審の面持にて思案の体であつた。たちまち物をも言はず、ふたたび羽衣を着し、アルタイ山めがけて中空はるかに翔り去つた。
 後にふたりは絶望の念にかられ、その泣き声はますます高く天上に届くばかりであつた。ふたりのまたの名を泣沢彦、泣沢姫といふ。
 高山彦はアルタイ山に帰り、大森別に委細を復命した。大森別は、
『こは看過すべからず。汝も共にきたれ』
といふより早く天の羽衣を着し、芙蓉山に向つた。さうして心よくふたりの請を入れ、十二個の玉を受取り、ただちに竜宮城にいたり、この玉を奉献した。
 大八洲彦命は大いに喜び、これを千載の神国守護の御玉とせむと、シオン山に立派なる宮殿を造営し、これを安置した。
 シオン山は竜宮城の東北に位し、要害堅固の霊山にして、もしこの霊山を魔軍の手に奪はれむか、地の高天原も竜宮城も衛ることのできない重要な地点である。
 ここに棒振彦仮の名美山彦、高虎姫仮の名国照姫は、この霊地を奪ひ、かつ十二の宝玉をとり、ついで竜宮城および地の高天原を占領せむとして、主としてシオン山に驀進した。かくていよいよシオン山の戦闘は開始さるるのである。

(大正一〇・一一・六 旧一〇・七 谷口正治録)



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