出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語02-4-241921/11霊主体従丑 藻脱けの殻王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
常世城
あらすじ
 言霊別命と竜世姫は犬猿の仲のように見せかけていたので常世姫は気を許した。直会の宴席でも、言霊別命に毒の入った食べ物が出されたが、竜世姫が八百長の喧嘩を始めて助けた。夜になって、竜世姫は言霊別命を常世城から逃がした。
名称
小島別 言霊別命 神軍 竹島彦 竜世姫 常世姫 松代姫 元照彦 八百万の神司
稚桜姫命
天の羽車 常世城 直会 竜宮城
 
本文    文字数=4640

第二四章 藻脱けの殻〔七四〕

 常世の都には荘厳瀟洒なる大神殿が建てられ、天地の諸神を鎮祭し奉つた。ここに常世姫は斎主となり、言霊別命は諸神司を率ひ副斎主の職を奉仕した。荘厳なる祭典はやうやくにして済んだ。ただちに直会の宴にうつり、常世姫は首座に、八百万の神司は順次宴席に着いた。さしもの広大なる広前も立錐の余地もなきまでに塞がつた。
 言霊別命は竜宮城の大切なる賓客として、常世姫の次席の座を占めることとなつた。このとき竜世姫は顔色を変へ、常世姫の前にて言霊別命を尻目にかけ、
『かかる腰抜け神司を正座に着かしむるは吾を侮辱するものなり。吾は稚桜姫命の娘なり。席を代らせたまへ』
と申し込んだ。衆神はこの形勢を見て不安の念にかられた。言霊別命は大いに怒り、
『女神の分際にて吾の上座に着かむとするは、僣越もはなはだし。汝は最下座にかへり、吾に接待の役を務めよ』
といつた。かくして二神の争ひは再発した。
 言霊別命はつひに一歩を譲つて、竜世姫を上座にすゑた。このとき山野河海の美味し物は諸神司の前へ運ばれてきた。常世姫は一同にむかひ、祭典の無事終了せしことを祝し、かつ直会の宴を開きたる次第を細々と述べたてた。
 言霊別命はこれに答へて竜宮城を代表し、慇懃なる挨拶を述べ、いよいよ酒宴の箸をとることとなつた。このとき竜世姫は、言霊別命の前にある種々の馳走をみ、怒つて曰く、
『かかる腰抜け神司に、山野河海の珍物を饗応するは分に過ぎたり』
といひつつ、命の前に据ゑたる膳部を残らず転覆かへした。そして自分の懐中より蛙の形したる味よきパンを取りだし、
『これは蛙の木乃伊なり。汝はこれにて充分なり』
といひも終らず、ただちに言霊別命の口に捻こんだのである。うちかへされたる膳部の羹よりは青色の火焔が立ち昇つた。常世姫以下の神司は、二神の間が犬猿もただならざることを知り、竜世姫に心を許してゐた。
 宴会は無事にすんだ。神司は各自わが居間に帰つた。言霊別命は主賓として、奥殿のもつとも美しき居間にて寝につくこととなつた。小島別、竹島彦は侍者として枕辺に保護することとなつた。命は腰部の苦痛はなはだしければ、ふたりに命じて夜深くまで腰を揉ましめた。ふたりは疲れはてて高鼾をかきだした。そこへ竜世姫来りて、ふたりに対して一間に休息せよと命じた。ふたりは喜んで命のまにまに一間へはいつて、白河夜船を漕いで、華胥の国へ遊楽してゐた。
 その間に竜世姫は言霊別命に武装せしめ、夜ひそかに裏門より逃れしめた。門外には元照彦あまたの従者とともに待ち伏せて、天の羽車に乗り、北方めがけて逃げ出したのである。たちまち奥殿に声が聞えた。諸神司は目を醒まし、何事の突発せしかと怪しみながら駆けつけた。
 このとき竜世姫は大音声にて、
『われ今、言霊別命に殺されむとせり。われは女神ながらも死力をつくして争ひたれば、命は力つき逃げゆくとたんに、階段より辷り落ち、いまこの深き濠に溺没したり。神司来りてこれを救ひ上げよ』
と叫びつつあつた。神司は言霊別命のひそかに逃れしを夢にも知らず、右往左往に走りまはり、舟をいだして濠を捜索したが、つひにはその影だにも認むることができなかつた。
 小島別、竹島彦、松代姫は大いに驚き、
『吾らは稚桜姫命に対し奉り、何とも陳弁の辞なし』
と頭をかたむけ吐息をつくのであつた。時しも急報あり、
『言霊別命は元照彦と共に、神軍を率ゐて逃げ失せたり』
との報告である。常世姫、小島別、その他あまたの神司は、八方に手配りして命の所在を厳探したが、つひにその影を認むる事はできなかつた。ああ言霊別命の運命はどうなるであらうか。

(大正一〇・一一・一 旧一〇・二 桜井重雄録)



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