出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語02-4-231921/11霊主体従丑 竜世姫の奇智王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
常世の国
あらすじ
 小島別・竹島彦は言霊別命の乗った輿を谷に投げ捨てるが、領布の加護で言霊別命は無事だった。言霊別命と竜世姫は八百長で争論した。そして、常世城に着いて、常世姫は言霊別命に毒の入った水を与えが毒殺しようとしたが、竜世姫の奇策に救われた。
名称
小島別 言霊別命 竹島彦 竜世姫 常世姫 松代姫

末法
 
本文    文字数=4478

第二三章 竜世姫の奇智〔七三〕

 小島別、竹島彦は、言霊別命の輿をかつぎながら、猿が渋柿を喰つたやうに、子供が苦い陀羅助を呑んだやうな面構へして嫌々ながらかついでゆく。心中の不平不満は察するにあまりがあつた。やうやく嶮しい坂に差しかかつた。ふたりは汗水垂らして登りゆく。松代姫は竹島彦の後棒を押しながら助けてゆく。竜世姫は滑稽諧謔の神司である。後からこの状態を見、手を打ちつつ笑ひ、いろいろの面白き手まね、足踏みしながら、
『言霊別の神さんは こしの常世へ使ひして
 道に倒れて腰を折り 輿に乗せられ腰痛む
 こしの国でも腰抜かし 腰抜け神と笑はれる
 他の事なら何ともない こしやかまやせぬ、かまやせぬ』
と声を放つてからかふ。
 小島別以下の一行は、登り坂にあたつて苦しみつつある際、この歌を聞きて吹きだし、笑ひこけ、足まで捲るくなつて一歩も進めず、ここらに立往生をなし、つひには腰をまげ腹を抱へて笑ふのであつた。輿の中よりは、言霊別命の声としてさも愉快げに、
『こいでこいでと松代は来いで 末法の世がきて駕籠をかく
 小島、竹島お気の毒 さぞやお腰が痛からう
 お腹が竜世が倒れうが 他のことなら何ともない
 こしや構やせぬ、かまやせぬ』
と歌つた。小島別、竹島彦はその歌を聞くなり大いに怒つて輿をそのまま谷底へ投げ棄てた。
 輿は転々として谷底に落ち木葉微塵に砕けてしまつた。小島別らは手をうつて快哉を叫び舞ひをどつてゐた。
 言霊別命は懐中に持てる、種々物の領巾の神力により、少しの負傷だもなく、悠然として谷を登り、小島別一行の立てる前に現はれた。竜世姫は口をきはめて言霊別命を熱罵した。ここに二神のあひだに大争論がはじまり、つひには掴みあひとなつた。この争論は全く両神の八百長である。真意を知らざる小島別、竹島彦らは、竜世姫に怪我させじと仲に分けいり、言霊別命を双方より乱打した。それより竜世姫、言霊別命は後になり先になり悪口の限りをつくし、犬猿もただならざる様子を示した。一行はおひおひ常世の都に近づいた。常世姫はあまたの神司をして言霊別命の一行を迎へしめた。そして二台の輿がきた。一台には言霊別命これに乗り、一台には竜世姫がこれに乗つた。小島別、竹島彦は迎への神司に命じ、言霊別命の輿を前後左右に揺りまはし、あるひは高く頭上に上げ、ときどきは低く地上に落とし苦しめた。命はほとんど眩暈するばかりであつた。常世姫の宮殿に着いたときは、言霊別命は劇烈なる動揺のため疲労し、咽喉をかわかせ、急ぎ水を求めた。常世姫の侍者は黄金の器に水を盛り、渇ける命に捧呈した。このとき竜世姫は輿より降り、この様をみて、
『かかる尊き玉水を腰抜神に呑ますの必要なし。われは大いに渇きたり。この水はわが呑むべき水なり。腰抜神は泥水にて充分なり』
といひながらその水を横合よりやにはに奪ひ、松代姫の神を目がけて打かけた。松代姫の袖よりは火煙を発し、熱さに悶えつつ濠に飛込み火を消し、辛うじて這ひ上つてきた。諸神司は驚いて松代姫の方に走り新しき衣を着替へさせこれを労はり慰めた。言霊別命は竜世姫の剛情我慢を詰つた。竜世姫はしきりに「腰ぬけ、腰ぬけ」と嘲笑した。言霊別命は憤懣の色をあらはし、剣の柄に手をかけ切つて捨てむと竜世姫に迫つた。小島別、竹島彦は二神人の仲に割つていり、百方弁をつくして仲裁の労をとり、この紛争は無事に治まつたのである。この争ひは竜世姫が言霊別命の毒殺されむとするを救ふための深慮に出でたる一場の狂言であつた。

(大正一〇・一一・一 旧一〇・二 加藤明子録)



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