出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語02-4-201921/11霊主体従丑 疑問の艶書王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
竜宮城
あらすじ
 常世姫は稚桜姫命の3女、言霊姫は5女であった。
 言霊別命が、大八州彦命、真澄姫、神国別命の協力によって地の高天原で信頼をとりもどしているので、常世姫は地の高天原を乗っ取るのは難しいと思い常世の国へ去った。
 常世姫の意を受けた安川彦は数子姫を使って、不倫をでっち上げて言霊別命を陥れようとするが、神国別命にあばかれ失敗した。
名称
大八州彦命 数子姫 神国別命 小島別 言霊姫 言霊別命 竹彦 田依彦 常世姫 魔我彦 魔我姫 真澄姫 安川彦
国照姫 天地の神明 天魔 稚桜姫命
天の真奈井 神言 鬼城山 神政 常世国 ヨルダン河 竜宮城
 
本文    文字数=6874

第二〇章 疑問の艶書〔七〇〕

 言霊別命の妻神言霊姫は稚桜姫命の第五女であり、常世姫は第三女である。言霊別命の帰城により城内の疑雲は一掃され、親子兄弟夫婦の目出たき対面となつた。邪智深き常世姫は表面祝意を表し、城内の諸神将もまた心底より平和にをさまりしことを祝した。しばらくの間は竜宮城はきはめて平穏無事であつた。
 ここに常世姫は稚桜姫命、以下諸神将の信頼を一身に集めた。しかしてその勢力は日ごとに増して来たのであつた。言霊別命の声望は以前の如くならず、一時の叛将として上下一般より侮蔑の眼をもつて見らるるにいたつた。しかし稚桜姫命に信任厚き大八洲彦命、真澄姫の隠れたる努力により、日に月に言霊別命の声望は回復に向つていた。そこで言霊別命はふたたび神務を掌握し、神国別命は依然として神政を総攬し、言霊別命と神国別命のあひだは極めて円にして、あたかも親しい夫婦のごとくであつた。常世姫はふたたび魔我彦、魔我姫を左右の補佐となし、種々の手段をめぐらし、二神の信望を失墜せしめむとした。
 言霊別命の声望日々に回復するとともに、常世姫の奸黠なる心情はやうやく諸神司の感知するところとなつた。しかるに小島別、田依彦、安川彦、竹彦一派は常世姫を深く信頼してゐた。稚桜姫命もつひにその心情を察知し、信任は前日に比して大いに薄らいだのである。
 やうやく言霊別命の一派と常世姫の一派とがここに現はれた。されど常世姫の一派はきはめて少数にして微力であつた。常世姫はつひに策の成らざるを知り、時機をまつてその目的を達せむとし、表に不平を包み、莞爾として稚桜姫命に暇を請ひ、常世国へ事変突発せりと称して、帰国せむことを乞ふた。稚桜姫命は思ふところあつて、これをただちに許したまふた。常世姫は魔我彦、魔我姫を伴なひ、帰国に際して小島別、田依彦、安川彦一派に密策を授け、公然帰国した。
 常世姫の退城したるあとは、言霊別命の勢力は実に旭日昇天の勢となつた。田依彦、安川彦は命の声望を傷つけむとし、容色並びなき数子姫を城内に召し、言霊別命に近侍せしめた。数子姫はいと懇切に命に仕へて、かゆきところへ手のまはるごとく立ち働いた。命は数子姫の誠意を喜び、外出のときは必ず侍女として相伴なふこととしてゐた。
 あるとき城内に一通の手紙が落ちてゐた。安川彦は手早くこれを拾つて懐中し、ただちに小島別の手に渡した。小島別はこれを披見し、稚桜姫命に奉つた。その手紙は数子姫より言霊別命へ送れる艶書であつた。その文面によれば、すでに数回要領をえたる後にして、かつ命の強圧的非行を怨み、天則に違反したる罪を謝し、自らはヨルダン河に身を投じて罪を償はむとの意味が認めてあつた。ここに稚桜姫命はおほいに驚き、ひそかに言霊姫にその手紙を示された。
 言霊姫は夫神の行為を嘆き、死して夫を諫めむと覚悟を定めた。言霊別命はかかる奸計ありとは夢にも知らず、一間に入つて安臥しゐたりしに、夜半ひそかに室の押戸を押開きて入りきたる怪しき影がある。何心なく打ちながめてゐると、その影は正しく言霊姫であつた。しばらく熟睡をよそほひ姫神の様子をうかがつてゐた。姫神は命の枕辺に端坐し、小声にて何事か耳語しつつ寝姿を三拝して直ちにその室を立ち出でた。言霊別命はこれを怪しみて直ちに起きあがり、姫神の後を差し足抜き足しつつ追ふていつた。姫神は天の真名井の岸に立ち、天地を拝して合掌し神言を奏上しをはりて今や投身せむとす。命は驚いて背後より不意にこれを抱きとめ、仔細を尋ぬれば、数子姫の落したる艶書の次第を物語り、かつ泣いていふ。
『折角の声望を回復したまへる夫神にして、かかる汚き御心ましますはかならず天魔の魅入りしならむ。妾は死をもつて夫神に代り、天地の神明に夫の罪科を謝し、かつ夫神をして悔改め本心に立ちかへらしめ奉らむと、女心の一心に胸せまりてかかる行動に出でしなり』
との陳弁であつた。命の驚きはあたかも寝耳に水のごとく、呆気にとられて何の言葉も出なかつた。時しも城内は言霊姫の影を失ひしに驚き、上を下へと動揺めきわたつた。神国別命は姫神を尋ねむとしてここに現はれ、二神の姿を見てやや安堵し、二神をなだめて殿内に帰つた。
 稚桜姫命は言霊別命の非行を質問したまふた。諸神司はただ驚くばかりである。この時思慮深き神国別命は安川彦をひそかに招き、肩をたたき敬意を表して、
『貴下の謀計は巧妙至極にして、吾らは実に舌を巻くに堪へたり。吾も貴下と同腹なり。いかにもして言霊別命を失墜せしめむと日夜苦慮せしが、もとより愚鈍の吾、かかる神策鬼謀は夢にも思ひよらず。吾は今日より貴下を総裁と仰ぎ、貴下の部下となつて仕へ奉らむ』
と言葉たくみに述べたてた。安川彦は持ち上げられて心おごり、鼻高々と吾の腕前はかくの如しといはむばかりの面色にて、
『実は数子姫は吾の間者なり。決して言霊別命に非行あるに非ず。数子姫をしてわざと艶書を認め、殿内に遺失せしめたるなり。しかしながら吾は貴下を信じて秘密を打明けたれば、貴下もまた吾を信じて口外したまふ勿れ』
と、かたく口止めた。神国別命は直ちに色を変じ、安川彦の両手を捻ぢ後へまはして縛りあげ、稚桜姫命の御前に引き連れ、彼が自白のことを逐一進言した。
 ここに言霊別命に対する疑ひは全く晴れた。神国別命は諸神司を集めて、安川彦、数子姫の罪状を審議し、つひに退去を命じたのである。安川彦は退はれて直ちに鬼城山にある国照姫の城塞に使はるることとなつた。

(大正一〇・一〇・三一 旧一〇・一 桜井重雄録)



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