出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語02-3-151921/11霊主体従丑 山幸王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
大台ケ原
あらすじ
 言霊別命の弟の元照彦は、山幸(狩)を好んだ。武熊別の部下八十熊たちは元照彦の部下の伊吹彦を誘惑して裏切らせた。元照彦は伊吹彦に矢を射掛けられたが、言霊別命によって救われた。元照彦は母の国世姫の説諭の結果正しい道に入った。伊吹彦は伊吹山の邪鬼となった。
名称
足熊 伊吹彦 国世姫 熊江姫 言霊別命 魔神 元照彦 八十熊
大神 邪鬼 邪神 武熊別 天地の大神
天の鳥船 天の香具山 伊吹山 大台ケ原 神界 日の出ケ山 領布 山幸 竜宮城
 
本文    文字数=3557

第一五章 山幸〔六五〕

 言霊別命の弟に元照彦という放縦な神司があつた。この神司は、言霊別命が神業に従事して神界を思ふのあまり、親兄弟を顧みざるのを憤慨してゐた。

  ふるさとの空打ちながめ思ふかな国にのこせし母はいかにと

 元照彦は山幸を好み、天の香具山の鉄をもつて諸々の武器を作り、あまたの征矢を製して大台ケ原に立てこもり、大峡小峡にすむ熊、鹿、猪、兎などを打ちとり無上の快楽としてゐた。さうして伊吹彦といふ供神は常に元照彦に陪従し、山幸を助けてゐた。
 ここに伊吹山に立てこもり時節を窺ひゐたる武熊別の部下、八十熊、足熊、熊江姫、その他多くの魔神も大台ケ原山にわけ入り、花々しく山幸を試むれども、終日奔走してただの一頭の獲物もなかつた。そのわけは元照彦が熟練せる経験により大小の鳥獣を一も残らず狩とつた後ばかりを進んだからである。八十熊以下は方向を転じて山を越え、再び山幸を試みた。そこには伊吹彦がゐて征矢をもつて盛んに山幸をしてゐた。八十熊以下の者は伊吹彦に種々の宝を与へて、しきりにその歓心を買ひ、つひに伊吹彦をして元照彦に背き、かつ征矢をもつて元照彦を殺さしめむと計つた。伊吹彦は八十熊らの欲に誘はれ、つひに八十熊の味方となつてしまつた。
 元照彦は伊吹彦の変心せしことを知らず、常のごとく相伴なつて日の出ケ山に登り、群がる猪にむかつて征矢を射らしめた。伊吹彦はその猪にむかつて矢を射るがごとく装ひ、たちまち体を翻して元照彦目がけてしきりに射かけた。元照彦は驚いて八尋まはりの大杉の蔭にかくれ、征矢を防がむとした。この時、八十熊らの魔軍八方より現はれ来りて、さかんに征矢を射かけた。元照彦は進退これ谷まり、身に十数創を負ひその場に仆れた。
 言霊別命は竜宮城にあり、弟の危難を知りて直ちに天の鳥船に乗り、大台ケ原に駆り進んだ。ただちに伊吹彦、八十熊以下の魔軍にむかひ種々の領巾を打ち振れば、魔軍は黒雲をおこし、武熊別の隠れたる伊吹山さして雲を霞と逃げ去つた。
 元照彦は重傷を負ひ、つひに病の床に臥し、生命危篤の状態におちいつた。このとき母神の国世姫は、
『汝平素の放縦なる心を立替へ、深く神を信じ、兄弟と共に神業に参加せば、大神の恵によりて汝が病はたちどころに癒えむ』
と懇に涙とともに諭された。
 ここにはじめて元照彦は敬神の至誠をおこし、数月の間、苦痛を忍びつつ天地の大神を祈り、つひに病床を離れ全く悔改めて、山幸の快楽を捨てて苦しき神業に参加し、言霊別命の蔭身に添ひて、神教を天の下四方の国々に宣伝し偉功をあらはした。
 邪神伊吹彦は八十熊と共に一時は伊吹山に逃れ去り、やつと息継ぐ暇もなく、どこともなく飛びくる白羽の征矢に当り、山上より転落して終焉を告げ、伊吹山の邪鬼となつた。

(大正一〇・一〇・三〇 旧九・三〇 桜井重雄録)



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