出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語02-3-141921/11霊主体従丑 水星の精王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
竜宮城
あらすじ
 田依彦、中裂彦が稚桜姫命の庭園を造るために、ヨルダン河の上流から石を取った。その中の水星の精の霊石が、稚桜姫命に病気を起したが、その霊を祭ったら病気は癒えた。
 常世姫の陰謀で、稚桜姫命は再度言霊別命に「霊石を使って呪っている」と疑いを持ち、言霊別命に霊石を砕くように命じたので、言霊別命は従ったが、稚桜姫命は歩行不自由の身となった。
名称
神国別命 熊鷹 小島別 言霊別命 田依彦 常世姫 中裂彦 花森彦 真鉄彦 真道知彦 稚桜姫命
悪蛇 天津神 邪鬼 水星の神 月読命
神言 死海 水の宮 ヨルダン河 竜宮城 黄金水
 
本文    文字数=5069

第一四章 水星の精〔六四〕

 ここに田依彦、中裂彦は麗しき庭園を造り、稚桜姫命を慰め奉らむとし、ヨルダン河の上流にあまたの神々を引きつれ、千引の岩をとり、広き石庭を造らむとした。稚桜姫命はにはかに身体に大痙攣を発し、劇烈なる腹痛に悩まされたまうた。諸神司は驚き集まりて、あるひは天に祈り、あるひは薬を献じ、百方手を尽せども、何の効をも奏せなかつた。このとき小島別は言霊別命の前に出で、命の重病に罹り給ひし原因につきて神界に奉伺し裁断を請ひ、神示を得むことを依頼した。言霊別命は大いに驚き、ただちに神言を奏上し神示を請ひ奉つた。天津神の神示によれば、
『ヨルダン河の上流に、水星の精より出でたる長方形にして茶褐色を帯べる烏帽子型の霊石あり、これを掘りだし持ち帰り、汚れたる地上に奉置し、その上にあまたの岩石を積みたり。水星の霊苦しみにたへず、これを諸神司に知らさむがために稚桜姫命に病を発せしめ、もつて警告せるなり。すみやかに種々の巌岩を取り除きて、その霊石を黄金水にて洗ひ清め、宮を作りてこれを鎮祭せば、命の病はたちまち恢復せむ。しかしてこれを掘り出したるは中裂彦にして、これを汚したるもまた同神司なり。田依彦以下の神司も共に、水星の祟りを受くべきはずなれども、その責任は主神たる稚桜姫命に負はせたまへるなり。されば諸神司は慎みて水星の神に陳謝し恭しくこれを祭れ』
との神示であつた。
 小島別はこれを聞きて大いに恐れ慎みてその命のごとく取計らつた。不思議なるかな稚桜姫命の病苦は、霊石を洗ひ清めて恭しく神殿に祭るとともに拭ふがごとく癒えたのである。
 ヨルダン河の上流に、この水星の精なる烏帽子型の霊石ありしため、河広く水深く、清鮮の泉ゆるやかに流れて、あたかも水晶の如くなりしを、この霊石を掘り出してより、山上よりは土砂を流し河を埋め、濁水の流れと変化してしまつた。そして中裂彦はここに心狂ひてヨルダン河に身を投じ、その霊は悪蛇と変じ、流れて死海に入り、変じて邪鬼となつた。水星の精を祭りたる水の宮は、言霊別命特に斎主として日夜奉仕さるることとなつた。
 一時霊石を祭りて恢復し給ひし稚桜姫命は、その後健康勝れたまはず、時々病床に臥したまふことがあつた。茲に常世姫は信書を認め、熊鷹の足に結びこれを放ち、真道知彦に何事かを報告した。真道知彦は稚桜姫命の長男であつた。この信書を見てたちまち顔色を変じ、怒髪天を衝き竜宮城に参入し、神国別命、花森彦、真鉄彦、小島別その他の神司を集めて、何事か凝議したのである。そしてその結果は、稚桜姫命に進言された。稚桜姫命はこれを聞きて大いに怒り、言霊別命にむかひ、
『汝は水星の霊石を祭りもつて吾を苦しめ、あるひは呪咀し、つひに取つて代らむとの野心ありと聞く、実に汝の心情疑ふにあまりあり。もし汝にして誠意あり、吾が疑ひを晴らさむとせば、すみやかに水星の宮を毀ち、その神体なる霊石を大地に抛ち、これを砕きて誠意を示せ』
と厳しく迫られたのである。あまたの従神は集まり来りて、異口同音に宮を毀ちて、神体を打ち砕けと迫るのであつた。
 言霊別命は衆寡敵せず、涙を呑んで天に訴へ、霊石に謝し、恭しく頭上に奉戴し、ついで麗しき芝生の上に擲げつけた。敬神に厚き言霊別命は、このとき熱鉄を呑む心地をせられたであらう。たちまち霊石より旋風吹きおこり、その風玉は高殿に立てる稚桜姫命にあたり、高楼より地上に吹き飛ばされ、腰骨を挫き身体の自由を失ひ、非常に苦悶したまうた。諸神司は群がりきたりて命を介抱し、奥殿に担ぎ入れ、心力をつくして看護に余念なかつた。稚桜姫命は久しうしてやや恢復され、神務に差支なきにいたられた。されど遂に不具となり、歩行に苦痛を感じたまふに立ちいたつた。
 言霊別命は庭園の八重梅の枝を切り、御杖を作りてこれを奉つた。これが老衰者の杖を用ふる濫觴である。ここに言霊別命は神威を恐れ千引の巌を切り、うるはしき石造の宮を造り、月読命の従神として、霊石を永遠に鎮祭し置かれた。

(大正一〇・一〇・三〇 旧九・三〇 加藤明子録)



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