出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語02-2-131921/11霊主体従丑 蜂の室屋王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
竜宮城
あらすじ
 言霊別命が天に祈ると、常世姫に天罰が下り、事切れた。稚桜姫命が国治立命に覗うと「常世姫が悪い」との神託があり、稚桜姫命が天に向って謝罪すると常世姫は蘇生した。常世姫は救われたが、常世の国に逃げ帰る。
名称
国治立命 小島別 言霊姫 言霊別命 田依彦 常世姫 中裂彦 黄金竜姫 稚桜姫命
悪蜂 悪霊 大神 醜女 天地の神 霊魂 怨霊
常世の国 祝詞 蜂の室屋 領布 竜宮城
 
本文    文字数=5207

第一三章 蜂の室屋〔六三〕

 言霊別命は常世姫一派の奸計におちいり、蜂の室屋に投げ込まれ、熊蜂、雀蜂、足長蜂、土蜂の悪霊どもは、昼夜の区別なく襲ひきたりて、尻尖の剣をもつて刺し迫る。
 言霊姫は、黄金竜姫の霊魂に感じ、蜂の領巾を作りて夜ひそかに室屋の内に差入れた。言霊別命はその領巾を持ちて八方より攻めきたる悪蜂を払ひ退けた。されど数万の悪蜂は隙をねらうて、室屋の外に群がり集まり、少しの油断あれば直ちに入りて、これを刺さむとするがゆゑに、少しも眠ることはできなかつた。ここに田依彦、中裂彦は小島別を誑かし、三柱は、共に室屋の外にきたつて命が不倫の行跡を詰り、かつ改心を迫つた。しかして改心の意を表するために、蜂の領巾を吾らに渡せと脅迫した。
 命はその無実を細々と弁じた。されど三柱はこれを信ぜず、つひには辞を荒らげ顔色を紅くして、罵詈雑言を頻発し侮辱した。命は無念やるかたなくただ首を垂れて、悲憤の涙を押さへつつあつた。このとき常世姫室屋の前に現はれ、命にむかつて言葉きたなく雑言を並べ、かつ速かに改心の情を表はし、職を去り常世の国に落ちゆくべしと宣言した。言霊別命は天にむかひ、……正邪理非曲直を明らかにしたまへ、もしわれに邪あれば、わが生命を断ち、常世姫に邪あれば今この場において常世姫を罰し、もつてわが疑ひを晴らしたまへ……と祈願をこめた。この時いづくともなく神の御声命の耳に入つた。神の御声のまにまに蜂の領巾を常世姫にむかつて打振つた。常世姫の身体はにはかに動揺をはじめ、悪寒悪熱を感じ、その場に転倒し苦悶をはじめた。
 ここに小島別、田依彦、中裂彦は驚いて常世姫を籠に乗せ、担いで稚桜姫命の御前にいたり、事の顛末を報告した。常世姫は病勢刻々に募り、口より泡を吹きつひには黒血を吐いて苦悶しだした。稚桜姫命はこれを見て言霊別命の復讐的悪行となし、大いに怒つて大神に賞罰を明らかにされむことを祈願された。
 このとき言霊姫は愉快気に微笑を漏らし、神司の狼狽するを傍観してゐた。稚桜姫命以下の神司は、大宮の前に額きて祝詞を奉上し、病気平癒の祈願を凝らし、五日五夜に及んだ。されど連夜の祈願も寸効無く、常世姫の生命は瀕死の状態に立ちいたつた。
 ここに稚桜姫命は気色を変へ、みづから蜂の室屋の前に立ち、言霊別命にむかつて、
『常世姫の苦しみは汝が怨霊の祟りならむ。すみやかに前非を悔いて、かれが病を癒やし天地の神に謝せよ』
と言葉厳かにきめつけられた。されど言霊別命はその言を用ゐず、空吹く風と聞き流してゐた。折しも常世姫の居室に当つて、大なる叫び声がおこつた。諸神司は周章狼狽きながら、その居室に集まつた。そのとき既に常世姫は身体冷え渡りてこと切れてゐた。ここに稚桜姫命は神慮を疑ひ、ただちに国治立命に正否を奉伺された。
 国治立命は言葉おごそかに宣りたまふやう、
『邪は正に勝たず、神は善を助け邪を罰す。邪は常世姫にあり。言霊別命は正しき神人なり。汝すみやかに小島別をして言霊別命の前にいたり、謝罪せしめよ』
との神勅であつた。小島別は正邪の判別に迷ひ、心は五里霧中に彷徨しつつ大神の命を拒むに由なく、つひに我を折りて言霊別命、言霊姫に前の誤解と無礼を陳謝した。命は答へて、
『正邪の判別したる上は、われ何をか恨まむ』
とて直ちに天に向つて謝罪したまふと同時に、常世姫はたちまち蘇生した。
 ここに稚桜姫命以下の諸神司は、常世姫に向つて謝罪せむことを勧めた。されど頑強なる常世姫はこれを拒み、ふたたび苦悶をはじめ、口から泡を吹き血を吐くこと前の通りである。
 さすがの常世姫もつひに我を折り、生々に室屋の前にきたりて叩頭陳謝した。命の怒りは忽ち解けて常世姫の病は全快した。ここに言霊別命は諸神司の進言により、室屋の中より救ひ出され、ふたたび元の聖職に就かれた。
 常世姫はこの事件のために竜宮城を退はれ、つひに常世国に遁げ帰つた。されど常世姫の悪意は容易に改まらず、執拗にも種々の画策をめぐらし、はるかに常世国より醜女を放ちて、ふたたび言霊別命夫妻を陥れむと、画策これ日も足らぬ有様であつた。

(大正一〇・一〇・三〇 旧九・三〇 外山豊二録)



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