出口王仁三郎 文献検索

リンク用URL http://uro.sblog.jp/kensaku/kihshow.php?KAN=02&HEN=2&SYOU=10&T1=&T2=&T3=&T4=&T5=&T6=&T7=&T8=&CD=

原著名出版年月表題作者その他
物語02-2-101921/11霊主体従丑 タコマ山の祭典その二王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
竜宮城
あらすじ
 田野姫、竜宮城でタコマ山の祭典に合わせて祭典をもよおさせる。その席で神司の吸い物に毒を入れた。様子を覗っていた神島彦は芳子姫に吸い物を飲ませると、芳子姫は黒血を吐いて倒れが、他の神司は真相に気が付かない。
 そこへ言霊別命が帰還して、田野姫の企みを見抜き、田野姫を捕まえようとしたが逃げられてしまった。その後、大神に祈願すると、言霊別命、時野姫、芳子姫の病気は快癒した。
名称
梅若彦 天使大八州彦命 神国別命 神島彦 言霊別命 田野姫 時野姫 正照彦 宮比彦 芳子姫 稚桜姫命
大神 国照姫 探女 高虎姫
タコマ山 直会 祝詞 竜宮城
 
本文    文字数=3850

第一〇章 タコマ山の祭典 その二〔六〇〕

 竜宮城には言霊別命の侍臣に田野姫といふのがあつた。田野姫は表面忠実にたち働き、つねに言霊別命の身の廻り一切の世話をしてゐた。田野姫は実は高虎姫の偽名国照姫の探女として入り込んでゐたのである。
 田野姫は竜宮城の内事に関し、非常な信任と勢力があつた。ここに田野姫の発案によつてタコマ山祭典の祝祭を行ふことになつた。天使大八洲彦命は、言霊別命の帰城の後に祝祭を執行せよと命ぜられた。そのとき田野姫は命の前に進みいでて、顔色を和げ甘言追従いたらざるなく、
『諺にも善は急げといふことあり、タコマ山の祭典の時間を考へ、同時刻に祭事を行ふには双方一致の真理に適ふべし』
と言辞も滑らかに奏上した。
 大八洲彦命はまづ大神に奏上して、その上にて決せむと座をたち奥にいり、稚桜姫命に伺はれた。命は嬉々として直ちにこれを許したまうた。一方田野姫は竜宮城の諸神将にむかつて、一時も早く祝宴を開くべきことのかなるを、言葉たくみに進言した。上下一致の賛成に、城内はにはかに色めきたちて祝祭の準備に着手し、膳部の献立はすべて田野姫が監督することに一決し、神前の祭典は荘厳に開かれ、祭典をはつて諸神司の談話会に移り、ついで直会の宴を開く順序となつた。
 梅若彦、正照彦は上座に立ちて言霊別命の功績を賞めたたへ、つぎに田野姫の斡旋努力を激賞した。つぎに梅若彦も双方一時の祭典については、田野姫の斡旋努力おほいに功ありと感謝した。城内は神国別命をはじめ一同の神司手を拍つて賛同した。そのまに田野姫は鴆の羽を取だし、膳部の羹に一々これを浸してゐたのである。様子をうかがひし神島彦は芳子姫に命じ、その羹を呑み試さしめた。たちまち芳子姫は黒血を吐いて七転八倒苦悶しはじめた。諸神司は驚き水よ薬よと騒いだ。芳子姫は羹を指さして、自分の口を苦しきうちに押さへて見せた。神司は芳子姫の心を知らず、羹を要求するものと早合点し、膳部の羹を取りて口を捻開け、無理に飲ました。芳子姫の苦しみはますます激烈になつてきた。そこへ言霊別命は生命からがら遁げ帰つてこられた。しかして自分の口を押さへて、その羹を用心せよとの意を示された。諸神司は羹を要求したまふものと信じて、恭しく机にこれをのせて献上した。
 言霊別命はその羹を手にとるやいなや、庭園の草木に注ぎかけられた。見るみる草木は白煙を発し枯死してしまつた。ここに諸神司ははじめて気がつき、田野姫の悪逆無道の所為たることを悟り、これを捕へむとした。田野姫は早くも風をくらつて姿をどこかに隠してしまつたのである。
 そこへ時野姫はやうやく病気恢復し、宮比彦以下の諸神司とともに、鼇に尻を吸はれたる如き恍惚けた顔つきして帰つてきた。一同はアフンとして、開いた口が塞まらぬばかりであつた。注意すべきは実に飲食物である。
 神国別命は驚いてただちに神前に祝詞を奏上して、大神に祈願しをはるとともに、言霊別命、時野姫および芳子姫の病気は、たちまち拭ふがごとく全快した。

(大正一〇・一〇・二九 旧九・二九 外山豊二録)



オニドでるび付原文を読む    オニド霊界物語Web