出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語01-5-481921/10霊主体従子 鬼熊の終焉王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
竜宮城
あらすじ
 鬼熊は竜宮城を襲い、竜世姫・高杉別たちと乱闘になり、竹熊に鉄槌で撃たれる。真澄姫、竜世姫も茨のむちで鬼熊を打った。病床の大八州彦命は竹熊を親切に見舞った。
 稚姫君命が沓島より帰還して、「誰が鬼熊を打ったか」聞くと、一同は竹熊を犯人とした。そこで稚姫君命が竹熊にむかって、「神界の規定により根の国底の国に落ちよ」と命じたが、竹熊は大八州彦命に救われた。
 鬼熊はこの傷が元で死に、ウラル山の黒竜となった。鬼姫は武熊別と結び弔い合戦を計画した。
名称
牛熊 牛姫 鬼熊 鬼姫 大八州彦命 菊姫 小島別 高杉別 竹熊 竜世姫 虎彦 魔軍 真澄姫 稚姫君命
塩屋判官 大神 加古川本蔵 黒竜 武熊別 怨霊
ウラル山 エデンの城 沓島 神界 底の国 忠臣蔵 根の国 竜宮城
 
本文    文字数=4387

第四八章 鬼熊の終焉〔四八〕

 ここに鬼熊はエデンの城塞を奪取し、牛熊、牛姫をして数多の魔軍を統べてこれを守らしめ、鬼熊、鬼姫のふたりは竜宮城の裏門より潜かに忍び入つた。鬼熊は巨大なる鉄棒を提げ、鬼姫は都牟苅の太刀を懐に秘め、奥殿深く進みいり、大音声に叫んで曰く、
『鬼熊、鬼姫これに在り、大八洲彦命は何処に在るぞ、見参せむ』
とますます奥深く獅子奮迅の勢をもつて、ふたりは襲ひいつた。
 このとき大八洲彦命は病に臥して、戸を堅く閉鎖し差籠もつてをられた。鬼熊、鬼姫は満身の力をこめて、その室の扉を叩き破らむとした。その声に驚いて馳集まりしは竜世姫、高杉別であつた。たちまち彼我のあひだに大格闘がはじまつた。高杉別は今や鬼熊のために亡ぼされむとする時、小島別駈来つて、忠臣蔵の加古川本蔵が塩谷判官を抱止めたやうに背後より無手と組みついた。他の神司は鬼熊の手や足に組みついた。鬼熊は進退谷まつて、鬼姫の救けを叫んだ。鬼姫は鬼熊を救はむとして走りゆかむとするを、ここに菊姫現はれて後より八尋縄を首に打ちかけ仰向けに倒した。あまたの女性は群がりたかつて鬼姫を縛しあげた。時しも竹熊は中殿より現はれ来りて、進退谷まり身動きのままならぬ鬼熊の面上目がけて、鉄鎚を打下した。血は流れて泉のごとく、惨状目もあてられぬ有様である。かかるところへ現はれ出でたる真澄姫、竜世姫は、日ごろの鬱憤を晴らし悪心を懲すは今この時なりと、女性の浅果敢にも弱りきつたる鬼熊を荊の鞭にてやみくもに乱打打擲する。一同の猛り狂ひ叫ぶ声は四辺に洪水のごとく響きわたる。
 病床にありし大八洲彦命は、スワこそ一大事勃発せりと病の床をはね起き、現場に馳着け、小島別、高杉別を宥め、かつ鬼熊の負傷を懇切に見舞ふた。まことに智仁勇兼備の神将である。
 稚姫君命は沓島の神業を了へ、二柱の従臣と共に帰城され、この場の光景を眺めて大いに怒らせたまひ、眉をひそめて、
『鬼熊を討ちし無法のものはたれぞ』
と色をなして詰問された。このとき鬼熊は狼狽のあまり、その下手人の誰なるかを知らなかつた。されど彼は邪推を廻らし、
『わが面体を打ちしは確に竜世姫、高杉別、虎彦ならむ』
と血泥の物凄き顔を振りたてて奏上した。小島別は鬼熊の言葉を遮り、
『否しからず、小臣はその現場を目撃せる証神なり。鉄棒をもつて討ちしことは竹熊の所為なり』
と、言葉に力をこめて言明した。
 稚姫君命は竹熊に向ひ、
『汝の行動はなはだ暴逆無道なり、妾はいまだ心底より汝が改心の実証を認むる能はず。今はもはや是非なし、神界の規定にしたがひ速に根の国底の国に降るべし』
と厳命された。竹熊は首を左右に振り、
『否々、下手人はわれに非ず、高杉別以下の所為なり』
と強弁した。小島別以下は現場の実状を目撃せるをもつて、あくまで竹熊の所為なりと主張した。
 大八洲彦命は、
『大神の神業に出嶋されし不在中にかくのごとく不祥事を惹起せしめたるは、全く吾不注意の罪なり。何とぞ吾を根の国、底の国へ追放りて竹熊の罪を赦したまへ』
と涙とともに言上された。
 稚姫君命は大八洲彦命の慈愛に厚き真心に感じ、諸神にむかつて今後を戒め、この場は事無く事済みとなつた。鬼熊はこの負傷が原因となり、運命尽きて遂に落命するにいたつた。妻の鬼姫は竹熊の非道を怒り、仇を報ぜむとし、武熊別とともに弔ひ合戦を計画した。しかして鬼熊は怨霊凝つて、終にウラル山の黒竜となつた。

(大正一〇・一〇・二六 旧九・二六 外山豊二録)



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