出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語01-5-421921/10霊主体従子 八尋殿の酒宴(二)王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
八尋殿
あらすじ
 宴会はニ次会となったが、玉を出さない高杉別たち5人は、牛馬の小便を飲まされ、ムカデなどを食べさせられ、辱められる。しかし、この5人は堪忍を続けた。そして、八咫烏が5人を竜宮城へ連れ帰った。玉を出した芳彦たち5人は怪鳥が落とした石に頭を砕かれ悶死して、玉は竹熊の手に入った。
名称
大虎彦 神彦 亀若 倉高 怪鳥 木常姫* 坂熊* 猿彦 繁若* 杉生彦 高杉別 竹熊 玉若* 鶴若 時彦 寅熊* 中裂彦* 桃作* 森鷹彦 八咫烏 芳彦
悪魔
竜宮 竜宮城 黄金水
 
本文    文字数=5662

第四二章 八尋殿の酒宴の二〔四二〕

 ここに竹熊、大虎彦は威丈高になり、高杉別、森鷹彦、鶴若、亀若、時彦を眼下に見下し、
『汝らは竜宮城の神司とはいへ、その実は有名無実にして、糞土神同様なり。玉なき者は、この席に列なる資格なし。ああ汚らはしや』
と塩をふり、臀部をまくり、あらゆる侮辱を加へた。五柱の従臣は、勘忍に勘忍を重ね、これも畢竟悪魔の世迷ひ言に過ぎずとして、つひには少しも耳をかさなかつた。
 玉を差し出したる竜宮城の五柱の神司も、竹熊一派の者も、共に声を揃へて、高杉別以下の神司をさんざん罵倒した。酒宴はますます酣となつた。
 この時、竹熊は左より大虎彦は右より、彼我の手を結びあはせ、円を描いて高杉別以下四柱の神司を中に取まき、悪声を放ちつつ踊り狂ひはじめた。
 五柱の神司は、遁れ出づるに由なく、何時また吾が玉を奪はるるやも知れずと、非常に苦心した。されど竹熊の執拗なる計略も、この五柱の神司の玉のみは、どうしても奪ることはできなかつた。そこで更に第二次会に臨まむことを告げた。酔ひつぶれた彼我の者たちは、一も二もなく、手を拍つて賛成した。
 要するに、玉を差し出したる五柱の神司は、知らず知らずのまに、全く竹熊の捕慮となつたのである。高杉別以下四柱の神司は、いかにしてこの場を遁出さむかと苦心すれども、彼らはなかなか油断はしない。やむなく引きずられて、第二次会の宴席に臨むことになつた。
 第二次の宴会は開かれた。ここは以前の席とは変つて、よほど大きな広間であつた。広間は上下の二座に別たれて、上座には八重畳が敷きつめられ、種々の珍宝が飾り立てられてある。席の中央には、得もいはれぬ美しき花瓶に、芳香馥郁たる珍らしき花樹が立てられてある。これに反して、下座には目もあてられぬやうな、汚い破れ畳が敷きつめてあつた。
 各自席に着くや、竹熊は立つて一同に向ひ、
『この席は、玉を差し出したる心美しき者のみ集まる、神聖なる宴席である。玉を差し出さざる心汚き者は、下の席に下れよ』
と、おごそかに言ひ渡した。
 そこで、一同は立つて、高杉別以下四柱の神司を下座に押しやつた。五柱の神司は、この言語道断なる虐待に慷慨悲憤の念に堪へなかつたが、深くこれを胸の中に秘めて、せきくる涙をぢつと押へてゐた。
 上座の席には、海河山野の種々の珍らしき馳走が列べられ、一同は舌鼓を打つてあるひは食ひ、あるひは飲み、太平楽のあらむかぎりを尽してゐた。下座におかれた五柱の神司の前には、破れた汚き衣を纏へる年老いたる醜女数名が現はれて、膳部を持ち運んできた。その酒はと見れば牛馬の小便である。飯はと見れば虱ばかりがウヨウヨと動いてゐる。その他の馳走は蜈蚣、蛙、蜥蜴、蚯蚓などである。五柱の神司は、あまりのことに呆れかへつて、しばしは、ただ茫然と見詰めてゐるより外はなかつた。
 その時、汚き老婆は、
『竹熊さまの御芳志である。この酒を飲まず、この飯を食ひたまはずば、竹熊さまに対して、礼を失するならむ、親交を温むるため是非々々、御遠慮なく、この珍味を腹一杯に召し上れ』
と、無理矢理に奨めておかない。上座よりは、酒に酔ひつぶれた者が集まりきたりて、手を取り、足を取り、無理無体に頭を押へ、口を捻ぢ開け、小便の酒を飲ませ虱の飯を口に押込み、その他いやらしい物を強て食はせてしまつた。
 そこへ芳彦座を立ち酔顔朦朧として、高杉別以下の神司にむかひ、
『貴下らは竹熊さまの誠意を疑ひ、玉を秘して出さざるため、かかる侮辱と迫害を受くるものならむ。よし玉を出したりとて、決して奪はるるものにあらず、速やかにその玉を差し出し机上に飾りたて竜宮城の威勢を示し、もつて竹熊さまの心を柔げられよ』
と忠告した。
 この時、高杉別は首を左右に振り声を励まし、
『吾はたとへ如何なる侮辱を受くるとも、いかなる迫害に遭ひ、生命を絶たるるとも万古末代、この玉は断じて離さじ』
と、キツパリ強く言ひはなつた。残りの四柱神司も同じく、「高杉別の意見に同意なり」と答へた。をりしも、金色の咫尺の烏数百千とも限りなく中空より、光を放つて現はれ、高杉別以下四神司を掴んで、竜宮城へ飛び帰つた。
 つづいて数多の怪鳥は天空に舞ひ乱れ、砂磔の雨しきりに降りきたり、屋根の棟を打ち貫き、宴席に列べる芳彦、神彦、倉高、杉生彦、猿彦の頭上を砕き、その場に悶死せしめた。
 アゝ貴重なる竜宮の黄金水の玉は、惜しい哉、七個まで竹熊の手に渡つてしまつたのである。

(大正一〇・一〇・二四 旧九・二四 桜井重雄録)



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