出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語01-2-171921/10霊主体従子 神界旅行(四)王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
綾の高天原
あらすじ
 大橋の近くで、50代の男と40代の女が背中合わせでひっついてもがいていたのを助けた。その後男は盤古大神の眷属となった。
 以前の車引きの男に大王の家まで案内された。その家は暗黒状態であった。足の鬼、黒の古狐が牛耳っていた。王仁三郎が祝詞を奏上すると暗黒が晴れた。
 八衡に帰ると足の鬼に襲撃されたが、神の守護のおかげで傷つかなかった。足の鬼は竜女を犯したため、悲惨な状態で帰幽した。

***祝詞について***
 祝詞はすべて神明の心を和らげ、天地人の調和をきたす結構な神言である。しかしその言霊が円満晴朗にして初めて一切の汚濁と邪悪を払拭することができるのである。

○竜女について
 本来竜女なるものは、海に極寒極熱の一千年を苦行し、山中にまた一千年、川にまた一千年を修行して、はじめて人間界に生まれ出ずるものである。その竜体より人間に転生した最初の一生涯は尼になるか神に仕えるか、いずれにしても男女の交わりを立ち、聖浄な生活を送らなければならないのである。
名称
足の鬼 狐 車引きの男 黒の古狐 大王 狸 天狗 八頭八尾 竜女
悪魔 天照大御神 産土神 大神 国常立尊 天地金の神 盤古大神 竜神 竜体
天津祝詞 幽庁 稲荷 大祓詞 現界 言霊 神界 神業 地の高天原 地獄 人間界 祝詞 八衡 竜宮界 霊界 蓮華台
 
本文    文字数=10751

第一七章 神界旅行の四〔一七〕

 神界の場面が、たちまち一変したと思へば、自分はまたもとの大橋の袂に立つてゐた。どこからともなくにはかに大祓詞の声が聞えてくる。不思議なことだと思ひながら、二三丁辿つて行くと、五十恰好の爺さんと四十かつかうの婦とが背中合せに引着いて、どうしても離れられないでもがいてゐる。男は声をかぎりに天地金の神の御名を唱へてゐるが、婦は一生懸命に合掌して稲荷を拝んでゐる。男の合掌してゐる天には、鼻の高い天狗が雲の中に現はれて爺をさし招いてゐる。婦のをがむ方をみれば、狐狸が一生懸命山の中より手招きしてゐる。男が行かうとすると、婦の背中にぴつたりと自分の背中が吸ひついて、行くことができない。婦もまた行かうとして身悶えすれども、例の背中が密着して進むことができない。一方へ二歩行つては後戻り、他方へ二歩行つては、またあともどりといふ調子で、たがひに信仰を異にして迷つてゐる。自分はそこへ行つて、「惟神霊幸倍坐世」と神様にお願ひして、祝詞を奏上した。そのとき私は、自分ながらも実に涼しい清らかな声が出たやうな気がした。
 たちまち密着してゐた両人の身体は分離することを得た。彼らは大いに自分を徳として感謝の辞を述べ、どこまでも自分に従つて、
『神界の御用を勤めさしていただきます』
と約束した。やがて男の方は肉体をもつて、一度地の高天原に上つて神業に参加しやうとした。しかし彼は元来が強欲な性情である上、憑依せる天狗の霊が退散せぬため、つひには盤古大神の眷族となり、地の高天原の占領を企て、ために、霊は神譴を蒙りて地獄に堕ち、肉体は二年後に滅びてしまつた。さうしてその婦は、今なほ肉体を保つて遠く神に従ふてゐる。
 この瞬間、自分の目の前の光景は忽ち一転した。不思議にも自分はある小さな十字街頭に立つてゐた。そこへ前に見た八頭八尾の霊の憑いた男が俥を曳いてやつて来て、
『高天原にお伴させていただきますから、どうかこの俥にお召し下さい』
といふ。しかし「自分は神界修業の身なれば、俥になど乗るわけにはゆかぬ」と強て断つた上、徒歩でテクテク西へ西へと歩んで行つた。非常に嶮峻な山坂を三つ四つ越えると、やがてまた広い清い河のほとりに到着した。河には澄きつた清澄な水が流れてをり、川縁には老松が翠々と並んでゐる実に景勝の地であつた。自分はこここそ神界である、こんな処に長らくゐたいものだといふ気がした。また一人とぼとぼと進んで行けば、とある小さい町に出た。左方を眺むれば小さな丘があり、山は紫にして河は帯のやうに流れ、蓮華台上と形容してよからうか、高天原の中心と称してよからうか、自分はしばしその風光に見惚れて、そこを立去るに躊躇した。
 山を降つて少しく北に進んで行くと、小さな家が見つかつた。自分は電気に吸着けらるるごとく、忽ちその門口に着いてゐた。そこには不思議にも、かの幽庁にゐられた大王が、若い若い婦の姿と化して自分を出迎へ、やがて小さい居間へ案内された。自分はこの大王との再会を喜んで、いろいろの珍らしい話しを聞いてゐると、にはかに虎が唸るやうな、また狼が呻くやうな声が聞えてきた。よく耳を澄まして聞けば、天津祝詞や大祓の祝詞の声であつた。それらの声とともに四辺は次第に暗黒の度を増しきたり、密雲濛々と鎖して、日光もやがては全く見えなくなり、暴風にはかに吹き起つて、家も倒れよ、地上のすべての物は吹き散れよとばかり凄じき光景となつた。その濛々たる黒雲の中より「足」といふ古い顔の鬼が現はれてきた。それには「黒」といふ古狐がついてゐて、下界を睥睨してゐる。その時にはかに河水鳴りとどろき河中より大いなる竜体が現はれ、またどこからともなく、何とも形容のしがたい悪魔があらはれてきた。大王の居間も附近も、この時すつかり暗黒となつて、咫尺すら弁じがたき暗となり、かの優しい大王の姿もまた暗中に没してしまつた。ただ目に見ゆるは、烈風中に消えなむとして瞬いてゐる一つのかすかな燈光ばかりである。自分は今こそ神を祈るべき時であると不図心付き、「天照大御神」と「産土神」をひたすらに念じ、悠々として祝詞をすずやかな声で奏上した。一天にはかに晴れわたり、一点の雲翳すらなきにいたる。
 祝詞はすべて神明の心を和げ、天地人の調和をきたす結構な神言である。しかしその言霊が円満清朗にして始めて一切の汚濁と邪悪を払拭することができるのである。悪魔の口より唱へらるる時はかへつて世の中はますます混乱悪化するものである。蓋し悪魔の使用する言霊は世界を清める力なく、欲心、嫉妬、憎悪、羨望、憤怒などの悪念によつて濁つてゐる結果、天地神明の御心を損ふにいたるからである。それ故、日本は言霊の幸はふ国といへども、身も魂も本当に清浄となつた人が、その言霊を使つて始めて、世のなかを清めることができ得るのである。これに反して身魂の汚れた人が言霊を使へば、その言霊には一切の邪悪分子を含んでゐるから、世の中はかへつて暗黒になるものである。
 さて自分は八衢に帰つてみると、前刻の鬼、狐および大きな竜の悪霊は、自分を跡から追つてきた。「足」の鬼は、今度は多くの眷族を引連れ来たり、自分を八方より襲撃し、おのおの口中より噴霧のやうに幾十万本とも数へられぬほどの針を噴きかけた。しかし自分の身体は神明の加護を受けてゐた。あたかも鉄板のやうに針を弾ね返して少しの痛痒をも感じない。その有難さに感謝のため祝詞を奏げた。その声に、すべての悪魔は煙のごとく消滅して見えなくなつた。
 ここで一寸附言しておく。「足」の鬼といふのは烏帽子直垂を着用して、あたかも神に仕へるやうな服装をしてゐた。しかし本来非常に猛悪な顔貌なのだが、一見立派な容子に身をやつしてゐる。また河より昇れる竜は、たちまち美人に化けてしまつた。この竜女は、竜宮界の大使命を受けてゐるものであつて、大神御経綸の世界改造運動に参加すべき身魂であつたが、美しい肉体の女に変じて「足」の鬼と肉体上の関係を結び神界の使命を台なしにしてしまつた。竜女に変化つたその肉体は、現在生き残つて河をへだてて神に仕へてゐる。彼女が竜女であるといふ証拠には、その太腿に竜の鱗が三枚もできてゐる。神界の摂理は三界に一貫し、必ずその報いが出てくるものであるから、神界の大使命を帯びたる竜女を犯すことは、神界としても現界としても、末代神の譴めを受けねばならぬ。「足」の鬼はその神罰により、その肉体の一子は聾となり、一女は顔一面に菊石を生じ、醜い竜の葡匐するやうな痕跡をとどめてゐた。さて一女まづ死し、ついでその一子も滅んだ。かれは罪のために国常立尊に谷底に蹴落され胸骨を痛めた結果、霊肉ともに滅んでしまつた。かくて「足」の肉体もついに大神の懲戒を蒙り、日に日に痩衰へ家計困難に陥り、肺結核を病んで悶死してしまつた。
 以上の一男一女は「足」の前妻の子女であるが、竜女と「足」の鬼との間にも、一男が生れた。「足」の鬼は二人の子女を失つたので、彼は自分の後継者として、その男の子を立てやうとする。竜女の方でも、自分の肉体の後継者としやうとして焦つてゐる。一方竜女には厳格な父母があつた。彼らもその子を自分の家の相続者としやうとして離さぬ。「足」の鬼の方は無理にこれを引とらうとして、一人の肉体を、二つに引きち切つて殺してしまつた。霊界でかうして引裂かれて死んだ子供は現界では、父につけば母にすまぬ、母につけば父にすまぬと、煩悶の結果、肺結核を病んで死んだのである。かうして「足」の鬼の方は霊肉ともに一族断絶したが、竜女は今も後継者なしに寡婦の孤独な生活を送つてゐる。
 本来竜女なるものは、海に極寒極熱の一千年を苦行し、山中にまた一千年、河にまた一千年を修業して、はじめて人間界に生れ出づるものである。その竜体より人間に転生した最初の一生涯は、尼になるか、神に仕へるか、いづれにしても男女の交りを絶ち、聖浄な生活を送らねばならないのである。もしこの禁断を犯せば、三千年の苦行も水の沫となつて再び竜体に堕落する。従つて竜女といふものは男子との交りを喜ばず、かつ美人であり、眼鋭く、身体のどこかに鱗の数片の痕跡を止めてゐるものも偶にはある。かかる竜女に対して種々の人間界の情実、義理、人情等によつて、強て竜女を犯し、また犯さしめるならば、それらの人は竜神よりの恨をうけ、その復讐に会はずにはゐられない。通例竜女を犯す場合は、その夫婦の縁は決して安全に永続するものではなく、夫は大抵は夭死し、女は幾度縁をかゆるとも、同じやうな悲劇を繰返し、犯したものは子孫末代まで、竜神の祟りを受けて苦しまねばならぬ。

(大正一〇・一〇・一九 旧九・一九 谷口正治録)


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