出口王仁三郎 文献検索

リンク用URL http://uro.sblog.jp/kensaku/kihshow.php?KAN=01&HEN=1&SYOU=9&T1=&T2=&T3=&T4=&T5=&T6=&T7=&T8=&CD=

原著名出版年月表題作者その他
物語01-1-91921/10霊主体従子 雑草の原野王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
水獄の第一段
あらすじ
 王仁三郎は女神に変化して、坤の女神と小松林から筆を与えられ、沢山の書を書いた。しかし、いろいろな悪鬼が王仁三郎の著作を捨てたり焼いたりした。「西」がそれらの書物の一部を守った。
名称
後の鬼 井の鬼 王仁三郎* 木の鬼 与の鬼 小松林 竹の鬼 田の鬼 童子 中の鬼 西 坤の女神 平の鬼 藤の鬼 舟木 松の鬼 村の鬼
悪鬼
比礼
 
本文    文字数=4222

第九章 雑草の原野〔九〕

 雑草の原野の状況は、実に殺風景であつた。自分は、いつしかまた一人となつてゐた。頭の上からザラザラと怪しい音がする。何心なく仰向くとたんに両眼に焼砂のやうなものが飛び込み、眼を開くこともできず、第一に眼の球が焼けるやうな痛さを感ずるとともに四面暗黒になつたと思ふと、何物とも知らず自分の左右の手を抜けんばかりに曳くものがある。また両脚を左右に引き裂かうとする。なんとも形容のできぬ苦しさである。頭上からは冷たい冷たい氷の刃で梨割りにされる。百雷の一時に轟くやうな音がして、地上は波のやうに上下左右に激動する。怪しい、いやらしい、悲しい声が聞える。自分は一生懸命になつて、例の「アマテラスオホミカミ」を、切れぎれに漸つと口唱するとたんに、天地開明の心地して目の痛もなほり、不思議や自分は女神の姿に化してゐた。
 舟木ははるかの遠方から、比礼を振りつつ此方へむかつて帰つてくる。その姿を見たときの嬉しさ、二人は再会の歓喜に充ち、暫時休息してゐると、後より「松」といふ悪鬼が現はれ、光すさまじき氷の刃で切つてかかる。舟木はただちに比礼を振る、自分は神名を唱へる。悪鬼は二三の同類とともに足早く南方さして逃げてゆく。
 どこからともなく「北へ北へ」と呼ばはる声に、機械のごとく自分の身体が自然に進んで行く。そこへ「坤」といふ字のついた、王冠をいただいた女神が、小松林といふ白髪の老人とともに現はれて、一本の太い長い筆を自分に渡して姿を隠された。見るまに不思議やその筆の筒から硯が出る、墨が出る、半紙が山ほど出てくる。そして姿は少しも見えぬが、頭の上から「筆を持て」といふ声がする。二三人の童子が現はれて硯に水を注ぎ墨を摺つたまま、これも姿をかくした。
 自分は立派な女神の姿に変化したままで、一生懸命に半紙にむかつて機械的に筆をはしらす。ずゐぶん長い時間であつたが、冊数はたしかに五百六十七であつたやうに思ふ。そこへにはかに何物かの足音が聞えたと思ふまもなく、前の「中」といふ鬼が現はれ、槍の先に数十冊づつ突き刺し、をりからの暴風目がけ中空に散乱させてしまうた。さうすると、またもや数十冊分の同じ容積の半紙が、自分の前にどこからともなく湧いてくる。またこれも筆をはしらさねばならぬやうな気がするので、寒風の吹きすさぶ野原の枯草の上に坐つて、凹凸のはなはだしい石の机に紙を伸べ、左手に押さへては、セツセと何事かを書いてゐた。そこへ今度は眼球の四ツある怪物を先導に、平だの、中だの、木だの、後だの、田だの、竹だの、村だの、与だの、藤だの、井だの印の入つた法被を着た鬼がやつてきて、残らず引さらへ、二三丁先の草の中へ積み重ねて、これに火をかけて焼く。
 そこへ、「西」といふ色の蒼白い男が出てきて、一抱へ抜きだして自分の前へ持つてくる。鬼どもは一生懸命に「西」を追ひかけてくる。自分が比礼をふると驚いて皆逃げてゆく。火は大変な勢で自分の書いたものを灰にしてゐる。黒い煙が竜の姿に化つて天上へ昇つてゆく。天上では電光のやうに光つて、数限りなき星と化してしまうた。その星明りに「西」は書類を抱へて、南の空高く姿を雲に隠した。女神の自分の姿は、いつとはなしにまた元の囚人の衣に復つてをつた。俄然寒風吹き荒み、歯はガチガチと震うてきた。そして何だかおそろしいものに、襲はれたやうな寂しい心持がしだした。


外部リンク
Online 拝読 (real player)

Online 座談会


オニドでるび付原文を読む    オニド霊界物語Web