出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語69-4-221924/01山河草木申 有終王仁三郎参照文献検索
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第二二章 有終〔一七六七〕

 国照別一行はヒルの都の町外れの半ば倒れた古家を借つて住み込み、博奕をやめ、自分は青物を担うて町中を売り歩き、乾児は畠を作つて野菜の栽培をやつてゐた。そして清香姫は裁縫炊事などに全力を尽してゐた。春子姫は浅、市、馬、駒治などの乾児を率ゐて、毎日野良へ出で耕作に従事してゐたが、誰もその素性を知るものはなかつた。
 しかるに一年ばかり経つて、ふとした事から清香姫、春子姫がこの町外れの茅屋に賤の女となつて、四五人の男と共に耕作に従事してゐる事が、その筋の耳に入り、秋山別、モリスは職にをるわけにも行かず、一切の地位も名望も抛ちて、老躯を引提げ、耕耘に従事した。そして清香姫に自分の至誠を現はして再び城中に帰つてもらふことにした。
 清香姫は国照別と共に城中へ帰り、父楓別命および母の清子姫に対して、自分たち兄妹の意中を露ほども包まず吐露した。両親も吾が子の至誠に感じ、自分は退隠して、高倉山の宮に専仕し、清香姫、国照別の意見に従つて、国内に仁恵を行ひ、かつ衆生の意を迎へて、徳政を施し、貧富そのところを得せしめ、上下の障壁を除り、老若男女一般に選挙権を与へた。ここにおいて、すでに擾乱勃発し、国家崩壊せむとする危機一髪のヒルの天地は、忽ち黎明の新空気に充ち、地上に天国を実現することとなつた。そして国政を改めて、インカ国の制度を改善し、万代不易の礎を固め、国照別は選まれて大王となり、ヒルの国家は永遠無窮に、旭の豊栄昇りに栄ゆることとなつた。実に名にし負ふ高砂洲の聖場、高倉山は永久に平和の花香り、鸞鳳空に飛び、迦陵頻伽は春夏秋冬の別ちなく、御代の隆盛を謳ひ、神人和楽して、国内一点の不平も不満もなく、至治太平の瑞祥を味はふこととなつた。ああ惟神霊幸倍坐世。
 話代はつて、珍の国にては上下の乖離ますます甚だしく、衆生は猛虎のごとく狂ひ立つて、松若彦、伊佐彦の館を包囲し、各地に殺人強盗出没し、人心戦々恟々として不安の雲に包まれた。侠客の愛州はじめ岩治別の岩公は、数多の乾児と共に衆生の中に入つて、天地の道理を説き、やや人心緩和したりといへども、容易に治まらず、国家は累卵の危ふきに立ちいたつた。また春乃姫、常磐姫は昼夜の別ちなく宣伝に努め、松依別は親爺の貯蓄金を取り出し、貧民窟に持運びなどして、大いに人心の緩和に努めた。されど一旦燃え上つた人心は容易に治まらず、いつ大変事が勃発するか分らなくなつて来た。賢平の力も取締の力も施すに由なきに至つた。加ふるに地震しきりに至り、所々に大火災あり、収拾すべからざる状態となつた。
 国依別、末子姫は夜陰にまぎれ城内を抜け出し、数十里を隔てた玉照山の月の宮に立籠もつて、国家の危急を救ふべく、老体ながら祈つてゐた。かかるところへ、ヒルの国の大王国照別は数多の勇み男を引きつれ、珍の国救援のために夜を日についで駈けつけた。岩治別は愛州の命により、ヒルの国の国照別に応援を請ふべく、アリナ山の頂上まで登つたところ、ベツタリ国照別の一行に出会し、詳細に珍の国刻下の現状を述べ、国照別も意外の事に驚きながら、一行数百人都を指して、駿馬に跨がり進み入る。
 四五日の後、国照別は三年振りに再び自分の故国に帰り、珍の都の姿を見た時は、実に今昔の感に打たれざるを得なかつた。大廈高楼は暴動のために爆破され、富豪の邸宅は焼き払はれ、至る所に仮小屋が建てられ、衆生の悲惨な生活状態が、国照別の仁慈に富める心を痛めた。
 国照別は「ヒルの国の大王、珍の国の世子国照別」といふ大旗を風に翻しながら、珍の都の大道を堂々と進み入つた。この旗印を見て衆生は再生の思ひをなし、手にした兇器を投げ捨てて地上に平伏したり。かかる所へ春乃姫、常磐姫は宣伝に窶れたる黒い顔をさらしながら現はれ来たり、国照別の応援を涙と共に感謝する。また国愛別の愛州は数多の乾児と共に、高砂城の表門に待ち迎へ、国照別を導いて城内深く入つた。松若彦、伊佐彦は今までの地位と爵位を抛ち、衆生の前に丸裸となつて罪を謝した。
 これより国照別、春乃姫、愛州の国愛別、岩公の岩治別は評定所に入つて、政治の改革を断行する事となり、国依別、末子姫を玉照山より迎へ還し、ヒルの国同様の神政を行ひ、愛州の国愛別を妹の春乃姫に娶合はし、民衆に推戴されて国愛別は大王となり、貧富の懸隔を打破し、国民上下の待遇を改善し、世は平安無事に永遠無窮に治まつた。ああ惟神霊幸倍坐世。
   ○

 珍の野に村雲起り月も日も
  玉照山にかくれけるかな

 国愛別神の誠の現はれて
  醜の荒びも静まりにけり

 霜の朝雪の夕べを凌ぎつつ
  春乃の姫の御代に会ふかな

 高砂の珍の御国の御柱と
  現はれたてる松の常磐木

 常磐姫松の操のなかりせば
  珍の御国は栄えざらまし

 岩治別司の君の真心に
  岩より堅き国は立ちぬる

 国照別雲押し分けて下りまし
  月日輝く御代となしぬる

 大老の松若彦も魂を
  やき直しつつ鄙に下りぬ

 伊佐彦の古い頭も衆生の
  烈しき声に眼さめけり

 国愛別珍の真人は高砂の
  城の主となりにけるかな

 春乃姫国愛別にあひ添ひて
  珍の御国の花となりぬる

 松依別父の宝をあし原の
  醜草村に撒きすてにけり

 樽乃姫サデスムスをば患ひて
  牢屋の中に斃れけるかな

 国依別末子の姫は玉照の
  神の御山に永久に仕へし

 惟神神の力の現はれて
  五六七の御代は豊かに立ちぬ

 この話高砂洲の事のみか
  その他の国にもありさうなこと

 天地のゆり動くなる今の世は
  心許すな何れの国も

 伊予の温泉に病養ふその暇に
  成りにけるかなこの物語

 この書の世に出づる日を松村の
  握りしペンの勇ましきかな

 世に弘く伝へむとして物語りぬ
  高砂洲の雲の往来を。

(大正一三・一・二五 旧一二・一二・二〇 伊予 於山口氏邸 松村真澄録)
(昭和一〇・六・二三 王仁校正)



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