出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
出口王仁三郎全集 第8巻 全8巻(復刻)1999.03養子出口王仁三郎参照文献検索
キーワード: 25歳 和歌実作
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本文    文字数=1955

養子 二十五六歳の頃

{1897年 明治30年 27歳 春 斉藤しげの}

失戀の身にも世間はひろきもの春のひかりはさしそめにけり
白梅の月にかをれる夜なりしよ思はぬ人と木蔭にたたずむ
ぽつかりと月に浮き出し白い顔わが目に花のごとくうつれる心臓の皷動はげしくをさまらず面ほてりつつしばし默しぬ
ただ二人默したたずむ足もとにどろ足の犬きたりとびつく
飛びつきし犬に彼女はおどろきてあつと叫びて抱きつきたり
鼻先にぷんとにほひて体臭の忘らえがたき身とはなりぬる
如何にしてまたあはむかと彼女いふ吾は牛乳買へとすすめし
二三日たちて彼女の母親は牛乳くばれと註文なしかへる
思ふ図にはまりしよなとよろこびて朝夕二回牛乳くばりゆく
彼の女病床にありて牛乳を飲みそつと吾が顔ぬすみ見て居り
牛乳をつぐ缶持つわが手ふるひつつ出もせぬ咳にまぎらせにけり
足すでに門を出づれどわがひとみ彼女の床にしみつきて居り

   ○
吾が胸の高鳴りおさへ父母に顔ほてらしてうちあけにけり
吾が父は頭を縦にふりながら早くもらヘといひつつほほ笑む
仲人をたのみて彼女の両親に結婚談を持ちこませたり
只一人の娘なりせばやられない養子にならばと彼女の親いふ
わが父は長男なれば養子にはまたやれないと頑張りてをり
わが恋は危機一髪の間にあり五臓六腑の血はわきかへる
牛乳をくばりたる朝玉章をそつと彼女のたもとに投げ込む
若者の心をくまぬわが父その無情さをうらみてもみし
何故にわが眞心の通はぬかと出雲の神まで恨みてみしかな