出口王仁三郎 文献検索

リンク用URL http://uro.sblog.jp/kensaku/genshow.php?CD=12641&T1=&T2=&T3=&T4=&T5=&T6=&T7=&T8=

原著名出版年月表題作者その他
大本史料集成 全3巻1982.06(第1巻)、1982.09(第2巻)、1985.08(第3巻進行 二日目冒頭部池田昭・編参照文献検索
キーワード: 二次事件裁判 公認運動
ルビ付き本文:
ダウンロードページ
 
本文    文字数=6021

昭和十三年八月十一日(木曜日)
京都地方裁判所
午前八時四十八分開廷
裁判長 被告全部立つて──それでは昨日に引続いて取調べをします。
 腰を掛けて……。
清瀬弁護人 開廷前にちよつと一分間ばかり……。
(裁判長に本を提出)
 甚だ失礼なものですが、私が先年少閑を惜んで書きましたもので、其の五十九頁以下を御覧下さると、維新以後の宗教法と云ふものが書いてある。
 明治の一番初めの祭政一致をやつたこと。
 十九年に教導職を廃したこと等の宗教の沿革を拙文で草したものでありますが、其の内の六十六頁を御覧下さいまし。其処に明治十九年の太政官布告第十九号と云ふものを摘録して居りますが、其の十九号に依りまして、今宗教の公認をするのでありますが、宗教のことは今の官制では大体文部省所管となつて居りまするが、此のことだけは内務省の管轄で、第三条に於て宗教、それから四条に神道と分けまして、以上神道の管長の定むる所と云ふのに、教義と教主たるの分限、及、其の称号に関すること、教主の等級は、矢張り此の旧法を用ひて公認をやつて居るのであります。
 昨日も「開廷前に御調べを願ひたい」と云つて希望しました、大本の公認運動……今日御調べ下さることと存じますが、之に依りまして、政府の認めてくれる教義、それから教主の分限等級と云つたやうなものを含んだ願書を出したに相違ないのであります。
 弁護人の見る所に依ると、大本教は以前大正十年に不敬事件を起したものでありますから、幾分世の中に──世間的に悪い所があつたのでありませうが、それを省いて宜い所ばかりにして、旧に倍して純化して昭和三年三月三日に出発しやうと、斯う云ふことを計画して居るのだと云ふ弁護人の主張でありますから、其の時に、旧法制を御覧願つて……昨日出口君がまるで坊主の頭だと云つたやうに、早口で云つたのを、私は耳にしたのでありますが、早口でありましたから、御耳に止らなかつたかと思ひまするが、「大本教のことは言はなければならぬし、言ふことも出来ず」と云つたやうな事柄の、何だか秘密指令があるやうに、予審では誤解されたのでありますが、是は仏法のことで、妙法蓮華経と云ふ……妙の字は若き女の如くなり等一々歌があります。
 「法は則の道、僧は頂の如くなり、言ふに言はれず、説くに説かれず」と云ふ歌がありますが、此のことを出口氏が、頭に置いて云はれたかどうか知りませぬが、余程世間に喧伝して居ることでありますが、私はさう云ふ意味に解して居るのであります。
裁判長 拝見して置きます。
出口 ちよつと、裁判長御願ひがございます。
 昨日、私、階段で滑りまして腰を打ちまして、それは痛うございましたが、其の時にピンと頭に来た。それからずつと、暫くあつちへ行つて是は山科に居るのか、此処に居るのか判らぬ状態になつて居りましたが、愈々此所であると云ふことがはつきり判つて、こつちへ来ましたけれども、昨日また日の暮に之を訊ねられた時には、何だかもうそれが判りまへなんだ、それで後ろの方に弁護士が来て居られましたから、若しもさう云ふ、間違うて居ることや矛盾したやうなことがあつたら、後に弁護士から訂正するやうに、私はもう一遍訊き直して戴きたいのでございます。
裁判長 それは能く訊いて居りますから──。
出口 それからちよつと申上げますが、能く聞きますが、「被告と云ふものは、総て公判廷に行つて前に言つたことを言はぬと言つて、違ふと云つて引つくり返へす者が八分まである」と云ふことを、弁護士に此の間聞きました。
 弁護士からそんなことを言はれるのは、私は実に残念でありました。
 何故かと云ふと、私は神の道に仕へて居る者である。清き明るき正しき直き誠の心を以て、神に仕へて居る者である。
 是が若し、曲つた心であつたならば、神に仕へることは出来ない。神に直ぐに罰せられてしまふ。けれども、私は、警察以来、是はどうしても此の人は、此の警部さんは是以上に判らぬのだから、どうしても言ふた所で、暖簾と腕押をするやうなものだから、早う向ふの言ふ通りにして皆の者を救けてやつて貰ひたいと思ひますから、箱根の関所を越すには関所守の意志に合うやうにしなければならぬと思つて、其の関所を越えたのでありますから、其の積りで、私は心ならずも向ふの仰つしやる通りに黙つて居つた。
 で、検事局の方は「此の通り言へ」と言はれたから言うた。「早う通してやる」と言はれたから、私は馬鹿正直に私は言つた。
 私は欺された。
 それから……。
裁判長 それはね、昨日も能く言うた。
出口 言ひましたか。
裁判長 もう何遍も/\繰返しく言つて居る。
 お前の弁解を訊くのが趣旨で訊いて居るのだから……。
出口 あ、さうですか。
問 それで、昨日は。
答 それから、今日は之を(予審終結決定)持つて参りました。