出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
大本史料集成 全3巻1982.06(第1巻)、1982.09(第2巻)、1985.08(第3巻予審での取り調べ(1)池田昭・編参照文献検索
キーワード: 二次事件裁判 高橋警部
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本文    文字数=10722

答 あのそれでは申上げますが、初まりのことからちよつと申しまするが、警察に居つた時のことから申上げて宜しうございますか。
問 何を述べても宜いが、余り……。
答 簡単に、私は……。
問 公訴事実に対する陳述だな。
答 公訴事実に対する陳述と云ふことは──。
問 予審終結決定に書いてあることと関聯して居ることならば陳述しても宜い。
答 私は京都府の高橋警部の調べのときには、色々のことを──神憑のことを色々申上げましたけれども、それは下手な催眠術ぢやと云ふやうに、斯う云ふ神書を冒涜することを仰しやいますから、此の人には神様のことを申してもあかぬと思ひました。
 神様のことを「宜い加減な胡魔化しなこと」だとか、又おどれと云ふことを始終御使ひになりました。おどれと云ふことは田舎では汚れた奴隷と云ふことであつて、非常に罵つたことでありまして、よくおどれと云はれましたが、私はそれでも隠忍して居りました。うしたら自分が鼻唄を歌ふやうにして文章を作つて、「斯うぢやろ、斯うぢやろ」と言やはりますから、さうぢやありまへぬと云ふと、「胡魔化すな」と云つて「ポかん」となぐつて御書きになります。
 「是は井上と誰も云ふとることで、お前だけがさうぢやないと云つてもさうはいかぬ、御前だけ言はなくても承知はせぬ、年寄がこの寒いのに可哀さうだ、お前が儂の言ふことを承知したならば、皆帰してやる、寒くなつたからお前も帰してやる、検事の方でも、私の言ふ通り言ふて置けば直ぐに済むし、予審の方も、もう二、三回したらそれで済んでしまふぢやないか」と斯う云はれた。
 それで私は兎も角是は此の高橋さんにあつてはあかぬと思うて居りました。
 そして、「検事局から頼まれて自分は調べて居るのだから、此の通り言はなければいいか、ねぞ、お前は之に反対したならば、お前一生の間崇つてやるぞ。」私は子供もあれば女房もありますから、さう云ふことを祟られては適ひませぬから、もう斯うなれば仕様がないから公判迄或は予審迄向ふの仰しやる通り放つとけと言ふので、放つといたのであります。
 それで検事さんの方で御訊ねになつたのは、何の調書──警察の調書を見て御訊ねになりましたから、私は少しも反対せず其の通りに認めました。仰しやる通りに認めました。
問 腰掛けて居つても構はぬですよ。
答 ちよつと声が出ませぬので……。
問 ……。
答 立たぬとちよつと声が出ませぬ。下の歯がそつくり取れて居りますので……。
 それから予審へ行きまして、予審へ行つて予審で話して聞いて貰はうと思つた。予審判事さんなら能く判るやろと思うた。総て調べる御方の御ろを五口か六口訊きましたなら、此の人は宗教の素養があるとか、或は霊学の素養があるとか、文学の素養があるかないか云ふことは判りますから、高橋さんに何を云ふても、神界のことを、霊界のことを言うても判らぬから、是はやかましく言うても仕様がない、却つて又掛巻くも、畏きことを仰しやるから、又我々もそれに対して言はなければならぬことになるから黙つて居つた。
 それから愈ヽ予審へ行きました所、予審もまだ判らない。私はまだ判らぬので呆れてしまひました。
 それは何故かと言ふと、斯う云ふことを仰しやいます。
 昭和十二年十月四日だと思つて居りますが、私は古事記、日本書紀にあると云ふたら、「古事記に書いてあることと、日本書紀に書いてあることとは字句が合ふて居らぬ、矛盾して居るから、我々は信じない」と言はれた。それならば古事記に付ても御調にならなければ宜しいのに、矢張り御調べになる。
 それから十月の十日と覚えて居りますが、弓削道鏡のことでした。「和気清麿が宇佐八幡の神勅を請ひに行つたのは嘘だ。神様がそんなことを言ふ筈がない、清麻呂が勝手に言ふてあ、云ふ工合にしたのだ」と、さう云うやうに仰しやいました。私は五十年間殆んど神々に仕へて居りますが、神様が仰しやることは確かに、私は経験して居ります。それで清麻呂は一生懸命に身を浄めて、国家の一大事として御願したから、神様の御声を聴いたと、私は確信して居るけれども、あの予審判事さんは、「それは清麻呂が勝手に拵へたので、そんなことはない」と仰しやいます。
 斯う云ふことを仰しやる人には、是はとても神さんのことは調べて貰ふ訳にいかないと思ひました。
 それから十月十五日に「吾れよし」と云ふ話がありましたが、「外国は総て『吾れよし』だと、英国あたりも自分の国さへ宜かつたら宜いのだ、日本の戦争も是は実際言うたら『吾れよし』ぢやぞと」言やはる。
 「日本が支那との事件を起した、是も実際を言うたら『吾れよし』だ」と、斯う云ふことを仰しやるような御方ですから、是は何を言うてもあかんと思ひましたから、私は此の間準備公判のときに申上げたやうなことは、一つも警察でも言うて居りませぬ。検事局でも言うて居りませぬ。予審でも言うて居りませぬ。
 何故言はぬかと云ふと、それを云ふと斯う云うことを言はれる。それは直ぐに保護色やとか、表看板ぢやとか、斯う言つてけちを付けられる。総て良いことがあれば表看板、保護色や、暗示やと、即ち何々斯う云ふことを言はれますから、公判のときに之を言ふのに除けて置いたのです。是も妙な方へやられて胡魔化されたら困ると思ひまして、私は是迄予審でも何も言ふて居りませぬ。
 愈々是から本当のことを申上げます。何故と云ふと、予審判事と書記が居つて勝手に書かれる。
 私は一日間体主霊従と云ふことだけを訊ねられた日があります。それから又和光同塵と云ふことは何と云ふことだと、斯う云ふことを訊ねられた。是れぢや神様のことも判らぬと思つた。何故判らぬかと云ふと、私が軍人の田中文吉の証人に呼ばれて予審廷へ行きましたときに、此の字は何と読むと云ふことを訊ねられた。それは「へぶらい」語であります。へぶらい語は「きりすと」教の聖書を読んで居れば判る。是は聖書を読んで居らぬ人だなと思ひました。
問 言はむとする要旨も大体判つたが、さう云ふ積りで本当のことを言はなかつたと云ふ主張の問題だが、各個の問題に対する弁解は其の都度々々答弁したらどうですか。
答 各個とは……。
問 後で個々の事実に付て訊ねるから、其の際に──大体の言はんとする趣旨は呑み込めたから。
答 其の外にも沢山ございますけれども。
問 趣旨の違つてる点ならば言うても宜しいが、今のことは「予審判事がさう云ふ訳だから本当のことを言はなかつた」と云ふことに帰着するのでせう。
答 えゝ、それから高橋警部が、「俺に反対したら御前も子供や何かが可愛やろ、可愛くないか」と云ふことを色々言はれたから、それを可愛さに私は検事局では其の通り言うて、はよういなして貰はうと思つて、検事局では本当に私は抵抗して居りませぬ。
問 それで趣旨は判つたが公訴事実──予審終結決定に書いてある事項はどうですか、それに対する弁解は。
答 私は全然否認致します、全部私は否認致します。
問 全部否認でありますか。
答 若しなんでしたら御訊き下さい。
問 訊かなければならぬが、全部否認……ちよつと準備手続に於ける供述と又違ふのですか。
答 違ふことはございませぬ。
問 準備では全部とはなつて居なかつたな。準備公判に於ては。
答 今仰しやるのはどうぢやと仰しやいますから、全部否認致しますと申したのであります。此の前の準備の時に御訊ねになつたことに対して申上げたのでありますが、其のことに付て私ちよつと……。
問 さうすると大体に於て準備手続に於ける答弁と同じやうなことになる訳か。
答 ちよつと間違うて申したことがありますから訂正さして貰ひたい。
問 それは無論訂正して貰はなければならぬが──。
答 「上」と云ふことは外国ばかりぢやありませぬ、日本の上層社会はまるで人倫を破つて、さうして第一、第二、第三位の妾宅を置かなけれは紳士でないやうな顔をし、或は又有閑「マダム」と云ふ貴婦人が役者の部屋へ入りましたりして居るが、是は人倫がめげて居ることであります。
 「下」が破れて居るのは、是は知りませぬが、淫売窟が東京にもあるさうです。玉の井とか何とか云ふ所があるさうです。是は人倫が廃頽して居るのです。さう云ふことも言うて居るのです。
 斯う云ふ意味で「上」と「下」とが斯うなつて居ると云ふことを申上げたのであります。支那あたりもそうなつて居ります。
問 さう云ふ意味であると云ふのだな。
答 さうです、それも訂正したいと思ひます。
問 弁解は大体は準備手続で言うた通りか。
答 大体に於てさうです。
 簡単に云ひましたから又詳しく申しますが。