出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
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キーワード: おんな
備考: 著作集(3) P.30 おんなの世界 「神は天地をつくり、樹草を生み
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 神は天地をつくり、樹草を生み、つぎに一人の女をつくつたという。つくられた女は、雲のような花に彩られた周囲の蒼巒を眺め、花のような雲のちらばつた蒼空をあおいで、おぼえず感嘆の声を放ち、天地の壮観を讃美した。
 天も地もなんとして美しいことよ、神さま、私のためによくもまあこんな清らかな住所をっくってくださいました、といつて涙ぐましくなるほど神さまに感謝を捧げていたが、たちまち躍りあがつて叫んだ。それは、その傍なる沼の清らかな水に映じた自分の艶麗な姿を見たからだ。いや山の曲線美も清らかだが、自分の肌や面の美しさにくらべては問題でない。なるほど花も見事は見事だが、自分の手先の美しさとは比較にならぬ。いかに川水のせせらぎがさわやかでも、所詮、自分の声の美しさ、さわやかさにはおよばない。いくら樹木の姿が立派といつても、どうして、自分のスタイルにくらべて足下には寄りつけない。おお神さま、あなたは瑞(水)の精をとつて私の血をわかし、玉の粋をひき抜いて私の骨を、お土の髄をうはいとつて私の肉を、草木の精をしぼつて私の髪をつくつてくださつたのでしよう。
 天地自然の精髄が凝りかたまつて私となつています。おお、蒼い空が嫉妬の眼をかがやかしました。三つ四つ五つ十う、百億千万億の星が私を睨めつけます。神さま!私の美しさを嫉まないで、讃めたたえてくれるものをおつくりくださいませ、と祈るのであつた。
 神さまは女の願いをいれていろいろな小鳥をつくってやられた。小鳥は嬉々として女のまわりをさえずりまわつた。そこで女は、神さままことにありがとうございます。手を嘴にした小さい天使が、口々私の美しさを謳つてくれます、と感謝の念に充ち、嬉しさと楽しさに躍りくるつていたが、ただちに飽きがきて、またもや女は、神さま、私を讃めるものばかりでなく私のすることをまねてくれるもの、言うことをまねてくれるものをつくっていただきたいと願った。神はさらに女の願いを許して、鸚鵡と猿とをつくつてやられた。女は大変に喜び、おおいに感謝したのもほんの少時で、またもやかさねて神に願った。神さま、私の口まね、手まねするものばかりではいけませぬ。なにとぞ私の肉体に、心地よさを与えてくれるものをつくつてください。神は女の希望をいれて、美しい蛇をつくつて女の皮膚にまきつかせられた。女はあまりの心地よさに恍惚としていたが、やがてまた、神さま、私の美しさに惚れこんでひつさらえていく悪魔が、いまに迫ってくるような心地がして、恐ろしくなってきました。なにとぞ私を守護してくれるものをおつくりくださいませと、またもや願つた。神はそこで獅子をつくつて女を護らせられた。女はにわかに心が丈夫になっておおいに感謝したが、しばらくすると、ええじれったい、と自分の周囲をまわっている獅子を蹴とばした。獅子は悄然と首をたれて逃げさつた。それを見た小鳥や猿や鸚鵡がこそこそと逃げだしてしまい、女はもとの一人ぼつちになった。
 女は神さまにむかって、神さまよ、私の機嫌のよい時には、それぞれの役目をつくしてくれますが、ちよつと小言をいうと、すぐに逃げ去るようなものはいりません。私が怒ればなだめてくれ、泣けば慰めてくれ、疲るればいたわつてくれ、どんな無理難題をいつてもよろこんで聞いてくれ、私のいうことすることをまねてくれ、一生私の玩具となって私を養つてくれ、守護してくれて、たとえ私がなぶり殺しにしようとも、満足して死んでくれるものをつくつていただきたい、と願つたので、神さまは女の頤使に甘んずる、そして玩具になる男というものをつくつてやられた。
 日本は神国、天の岩戸のはじめより女ならでは夜の明けぬ国、姫氏国というのであろう。
 起こせば抱け、抱けば負えと、どこまでも気随ばかりいう女というものをつくつて、裸体一貫の益良夫を朝夕困らせ、泣いて男子を脅嚇し、手にも足にもおえないものをつくつた神さまも、女にはよほど甘いとみえる。そして女のいうことなら、一から十まで、二つ返辞で聞いてやつて増長させた神さまも、よほど助平にておわしますとみえる。天下国家のために寝食を忘れている男子の願いは、容易にお聞きとどけくださらないことを思えば、男子というやつ、神さまに憎まれているとみえる。日本男子だの、日本魂だのといばったところで、女性にたいして絶対に頭があがらず、鼻息ばかりうかがっている男子こそ、じつに可憐な代物である。
(女の世界 「明光」 昭和4年4月)