出口王仁三郎 文献検索

リンク用URL http://uro.sblog.jp/kensaku/genshow.php?CD=10113&T1=&T2=&T3=&T4=&T5=&T6=&T7=&T8=

原著名出版年月表題作者その他
東京日日新聞 昭和10年12月9日【附録】p1(1) 参照文献検索
キーワード: 二次事件
 
本文    文字数=9325

大本教第二次大弾圧の跡
綾部本部と天恩郷に果然・封鎖の厳命下る
今後信徒の出入を禁止
近く旅費を与へて帰郷さす
【京都発】八日払暁突如として第二次大弾圧を加へられた大本教大検挙に際し綾部署に検挙された信徒は百四十余名のうちなほ引続き留置取調べの必要ある六十七名(男四十四名、女卅三名)を除ゐた他の者は八日夕刻永岡京都府保安課長、五十嵐綾部署長が訊問取調べを行つた上一先づ帰宅せしめた、警保局保安課警務官補古賀強氏は亀岡署の検挙状態を視察した後八日午後一時綾部に来り同夜の検挙状況を視察して京都に向つた、なほ京都府特高課では同日午後七時亀岡町天恩郷並に綾部長本部に修行者、奉仕者の出入を一切禁止し事実上両町の大本教は封鎖されるに至つた、これがため現在両町に居住する奉仕者、修行者数百名には府警察部の特別の計らひで旅費を支給し数日中に帰郷せしむることとなつてゐる、右につき薄田警察部長は語る「両町の大本教を封鎖して一切の出入を禁止することは手入れ当初からの方針でこれによつて今後の弊害を除きたい考へである」
断乎!抹殺の方針
一部には治維法適用説
今回の弾圧を受けた大本教の裏面には日本国民としては考へられぬ大不敬事件が潜んでをり、内務省一部におゐて刑法第百十四条の厳罪により処罰すべきものとの見解をもつてゐるが、また一部におゐては今後の押収した証拠品の結果如何によつては治安維持法が適用されるべきとの見解を有してゐる、したがつて刑法の不敬罪によれば五年以下の懲役となるが万一治安維持法の適用となれば無期懲役か死刑となるわけである、いづれにしても内務省としては大本教の存在を絶対に認めず日本から根本的に払拭する見込みで今後の証拠固めを行つてゐる
解散処分免れず
内務省、邪教と断定
大本教の徹底的撲滅に最高方針を決定し、八日同教に対し一大弾圧を加へた内務省警保局は、同日深更まで、教主出口王仁三郎氏以下最高幹部卅名の取調べを行ひ、かつ押収した多数の証拠物件により大本教が今日まで、表面皇道精神を説き皇室中心主義を唱導しながら、裏面には数十万と称せられる信徒を欺瞞し、奇怪にも皇室の尊厳を極度に冒涜せんとする不敬罪の潜在する事実が明確となつたため、今後、邪教と断定するとに決定した、よつて内務、司法両省協議の上近く同教の解散、禁止処分等の処置に出るものの如く、また、教主出口王仁三郎氏に対しては、断じて容赦すべからざるものとして強硬方針で臨み、刑法第七十四条皇室に対する罪
天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ不敬ノ行為アリタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス神宮又ハ皇陵ニ対シ不敬ノ行為アリタル者亦同ジ
の国法を適用することに決定した模様である
不敬教義の検察が目的
唐沢警保局長の談
今度の検挙は大本教の教義中に不敬にわたるものありといふ断定に基づゐてやつたもので出口王仁三郎が最近大分政治的に乗り出してゐるとか政界方面で押してゐるものがあるとかいふことをキツカケにやつたものではない、そんな政策的の意味は毫も含んでゐない、大正十年の検挙によつても有罪と遮断されたのであるが大赦の恩命に浴してゐる、然るにその後の出口一派のやり口をみるに少しも第一次検挙当時と変らぬ不敬の言動を敢てしてゐるので昨年あたりからひそかに内偵を進めて今回の検挙となつたのである、教義のうちに不敬の個所ありといふので未だ教義全体が然るかその一部か何とも言明出来兼ねる、従つて大本教そのものを禁止するか否かも言明の限りでない、昭和神聖会をやつたのは中心人物が相通じてゐるからやつたまでで神聖会そのものに手を下したのではない、あくまでも教義自体宗教そのものの剔抉《てきけつ》が中心点だ、他の類似の大衆的宗教団体にまで及ぶか否かはいまのところ考へていない
京大名誉教授今村博士談
【大阪発】大正十年の大検挙後出口王仁三郎氏が大審院に回付された際精神鑑定に当つた当時京大医学部教授今村新吉博士は阪急沿線岡本の自宅で語る
当時大審院で出口王仁三郎の鑑定を命ぜられて私がやりましたが鑑定の内容を私に喋らすことは勘弁して下さい、あの時出口は大赦にあつて免訴になつたのだがその言渡しの際横田大審院長が使つた言葉を私は今でも不都合だと思つてゐる、それは……精神状態が正常であつたにしろ、なかつたにしろ兎に角二度とこんなことを繰返してはいけない……といふのである、この言葉を怪しからぬと私がいへば鑑定の内容は想像がつくでせう
宇知麿以下の身柄引取り
刑事東上する
【京都発】東京で検挙された出口宇知麿他七名を受取りのため京都府刑事課片岡警部補ほか九名の刑事は八日夜九時十五分京都駅発東上、九日夜警視庁から身柄を受取つて帰洛するはず
大本教の組織系統
図表
満州で活躍の出口三千麿
【新京本社特電】(八日発)大本教大検挙の報は満州各地の同宗徒に異常な衝動を与へ何れもその成行を注目してゐるが、去月下旬旅順に開かれた同教の外郭団体である昭和神聖会に出席した出口三千麿は、その後新京、奉天の大本教支部を訪ひ、すでに朝鮮に赴き内地への帰還の途中である
不穏文章を押収
問題は”霊界物語”七十冊
けふから内容調査
【京都発】七日来一睡もせず綾部大本教本部の大検挙に活躍した判検事は八日午後五時一先づ同本部を引揚げ、同夜は綾部町に滞在することになつたが今朝から行はれた家宅捜索によつて意外にも教祖殿、金竜殿、教主殿からは何れも多数の不穏書籍を入れた本箱、神光舎では多数の帳簿を発見、何れも一まとめにして悉く厳重なる封印を行つて引揚げたが中にも教祖殿から発見された書籍のうちには問題の「霊界物語」七十余冊があり、また各地方別院、支部、分所等から来てゐる種々の恐るべき不穏秘密情報書類も発見したので九日からその内容を調査することになつてゐる、かくて八日は夜に入つても早朝から永岡保安課長指揮の下に活動した二百卅名の警官は前夜来の疲れいとはず不気味なまでの緊張裡に交代して徹宵待機してゐる
家宅捜査
【京都発】八日綾部より京都に護送した大本総本部の巨頭で同町に居住する綾部町上野昭和神聖会本部長桜井同吉(63)同町上野大本総本部総務岩田久太郎(62)同町本宮元昭和神聖会三丹本部長退役海軍少佐山口利隆(59)同町本部大本工芸課長瓜生謙吉(59)上野大本史実課長丹州時報記者吉野花明(55)六名の家宅捜索は同日午後一時京都府警察本部より出張した六班の警官隊により一斉に行はれたが、中にも桜井同吉宅では書籍約三百冊その他を押収したのをはじめ、各自宅より書籍書類入りの石油箱二個、柳行李二個、風呂敷包四個等を押収し同六時綾部署に引あげた
独房の内で睡眠と瞑想
署長、温情の差入れ
【京都発】松江で検挙され京都に護送中立売署に留置された出口王仁三郎氏は八日は取調べ訊問は一切行はれなかつたが長途の汽車旅行の疲労からか午後三時過ぎ独房内で日没までぐつすり睡眠し極めて温く何事か考へ通した、独房内の氏は松江から着て来たマント一枚だけが唯一の防寒具なので如何にも寒さうなその姿を見かねた篠田同署長が特別の計らひで夜具の差入れを許しこの由を亀岡の同教本部に伝へたので同夜七時すぎ三名の昭和青年会員がトラツクで出口氏邸から絹夜具、毛布などを運び込み同夜の王仁三郎氏は温かい瞑想にふけることが出来警察の厚意を感謝してゐるが氏が中立売署にあるを知つた四十歳ぐらゐの商人風の一信者が
御聖主様に是非これを差入れて貰ひたい
と毛布、弁当などを持ち込み悄然として立去つた